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やっと帰ってきたか!寂しかったぞー!

ぼくはそんなに愛想が良い方ではないと自覚している。特に初対面では。デフォルトの顔がむすっとしているから。

それに比べて同期の自動車隊員Kは愛想がめちゃくちゃ良い。人懐っこい笑顔で、すぐコミュニティに溶け込め、みんなが彼に好感を持つ。It's gifted! Everyone loves him って感じ。ぼくが1週間ほどかかる関係性づくりを彼は15秒でやってのける。羨ましい。

かといって、ぼくが彼のマネをして同じように振舞えるか、付き合い良くできるかというとちょっと無理。ぼくは1人でやりたいこと、やらねばならぬことがたくさんあるし(マンガ読むとか、Netflix観るとか、AmazonPrime観るとか、Youtubeとか)。

だから笑顔を絶やさず、愛想良くは意識的にやってる。特にお互いよく互いのことを知らない異文化の人たちと接するときは。

だから結構疲れる。人見知りするし。

すると、基本的に疲れ果てて帰ることになるんだけど、ぼくがセントビンセントで住んでる家っていうのは斜面に沿って建てられた3階建ての一軒家で、1階は車庫と倉庫、2階は大家マルコムが住んでて、ぼくは3階部分という作り。同じ敷地内にいるし、門は1つなので、だいたい毎日大家と顔を合わせる。

特に帰りは、坂を上ってきて汗びっしょりということもあって早く部屋に帰ってシャワー浴びたいという欲求にかられているのに、世間話に巻き込まれたりする。この時間は、セントビンセントのことを知る上で貴重なんだけど、前述の通り巻きでお願いしたかったりするんだけど、毎度結構長い。いつも、ぼくは彼に不愛想になってやしないかと気になってたりする。

口では、君はeasygoingでポジティブで良いね、今まで最高の借主だよ、私はセントビンセントでの君の父みたいなものだね…とか言ってくれるのだけど、英語だし、基本的にポジティブな言語だし、どこまで本音かはわからんなと思っていた。なんせぼくは不愛想だから、好かれる要素がないのだ。

それで、ロンドンに2週間旅行に行ってくるねというと、部屋のカギを渡してくれないかと言う。今度からハウスキーパーに月1回くらいの頻度で来てもらうことにしたから、ぼくの部屋も掃除してもらうという。

けっこう散らかしたままなんだが…と思ったけど、渡して出ていった。あの部屋の惨状を考えると多少好感度は下がるなと思った。

旅行が終わり、家に帰ってきた夜9時過ぎ、彼にとっては結構遅い時間。

いつものようにショートパンツで上半身は裸、ニコニコしながら「やっと帰ってきたかー、YUKI! 寂しかったぞ!」とハグをしてくれた。

だいたい10カ月くらい経つけれど、彼とハグなんて初めて。びっくりするくらい喜んでいるのはわかった。なんか海外映画とかドラマでよく見る久しぶりに実家に帰った息子を迎えるようなあの感じ。

たかだか2週間ほどの旅行だったのに大げさだなあと思う。

「掃除もしたし(ハウスキーパーさんが)、トイレのレバーが調子悪かったから直したし、ちょっと模様替えもしたんだよ。おいで、見に行こう」

ぼくの部屋に上がっていくと、劇的ビフォーアフター並みに部屋が片付いていた。散乱していたモノは各種の棚に収納されていた。棚や引き出しの中にはキャッシュカード、現金、小切手、カメラなどが入っていたのだけど、もちろん何1つなくなることなくある。

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カーテンとソファーカバーが変わってる。

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鍵付きの棚が1つ増えてる。DIYで作ったらしい。

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キッチン荒れ放題だったキッチンも皿もスプーンもナイフも棚に収納され、生活感を感じさせないマルコムの美学満載できれいになっている。

まるで新居に来たような気分だった。

「どうだい?気に入ってくれるとうれしいんだけど」とぼくの顔色を伺う。

いや、なんの文句もない。掃除が苦手なぼくには嬉しすぎる。オーバーリアクションでもなんでもなくて自然と最高を連発して目をキラキラさせてしまった。

「良かった、良かった。君は良く私の話を聞いてくれるし、私のやろうとしてること(インテリアやガーデニングにこだわること)を理解してくれるし認めてくれる、良き友人だしね。多くの人は話を聞いてくれないからね。それに、私の息子のようでもあるんだよ。だから、気になったことはとりあえず知らせてくれて良いんだ。ここでの滞在が君にとって最良のものになるように私は努めたいんだ」

実は、数か月前から「君は私の息子のようなものだから」とは何度か言ってくれていて、ほんまに思ってるんかいなと思ってたんだけど、こうやって尽くしてくれたりして行動で示してくれると、疑ってごめんと思ってしまう。

素直にうれしい。

ここまで書いてきて、なんだかぼくが感情を失った可哀想な人みたいになっていてつらくなった。

そういえば、昔、地域活性化で売れっ子のコミュニティデザインとかファシリテーターとかやってる人から、「君は人好きするタイプだから何やっても大丈夫」と言われたことがある。ほんまかいな、そんな経験ぜんぜんないぞ、この人落ち目なんかなと思ったりしたけれど、そうでもないのかもしれない。

ちょっとぼくが「こんなお願いしたら迷惑かな」とか過剰に気にしてるだけなのかもしれない。

もうちょっと甘えても良いのかな。

けど、甘え方がわからないんだよなあ。


参考:模様替え前の部屋


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yuki oka
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