1~3月期のGDP成長率、つかの間の上方修正?
2020年1~3月期の実質GDP成長率(2次速報)が本日公表され、先月公表された1次速報値(前期比0.9%減(年率3.4%減))から、前期比0.6%減(年率2.2%減)へ上方修正されました。日経電子版が報じるように、民間調査機関の事前予測通りの上方修正ですが、つかの間の出来事に終わってしまうかもしれません。
今回の上方修正の主因は、6月1日に公表され「四半期別法人企業統計調査」(財務省)の実績値が反映されたことによります。大きく変わったのは民間企業設備で、1次速報の0.5%減から2次速報は1.9%増となり、これだけで成長率を0.4ポイント押し上げています。
GDPの民間企業設備は、設備投資に使われる財やサービスの統計(供給側統計)と、需要側統計と呼ばれる法人企業統計の両方の情報を組み合わせて推計されています。一次速報段階では法人企業統計の実績値の公表が間に合わないため、二次速報で修正されるのはいつもの通りです。内閣府の資料では以下のように説明しています。
実質GDPについて、2010 年 4-6 月期から 2019 年 10-12 月期までを対象に、各四半期の1次速報から2次速報への当該期の季節調整済前期比の改定幅の絶対値平均をみると、0.18(年率 0.73)%ポイントとなっている。
一方、今回の2次速報は従来とは異なる事情もあります。法人企業統計が完全な実績値になっていないことです。財務省も、わざわざ「速報」と公表しています。これは、コロナ禍などの影響で、下記の通り、いつもより回答率が低いためです(資本金規模別、カッコ内は、2019年10~12月期)。
1000万円以上1億円未満 56.2%(65.8%)
1億円以上10億円未満 62.1%(72.4%)
10 億 円 以 上 76.6%(89.1%)
合計 62.3%(72.7%)
財務省は、本来の回答期限(5月10日)を2ヵ月ほど延長し、2ヵ月後(8月1日?)に確報値を公表するとしています。内閣府も8月に予定されている2020年4~6月期の1次速報値公表時に、この確報値を反映して1~3月期の実績値を修正するとしています。回答が遅れた企業は、コロナ禍の影響を強く受けているとすれば、法人企業統計の「確報」は「速報」よりも悪めの数値が出るのではないでしょうか?となると、今回上方修正された2020年1~3月期の実質GDP成長率も、設備投資を中心に下方修正されるのではないかと思われます。
ちなみに、サービス系を中心に推計のための基礎統計が1次速報時よりも増えた民間最終消費支出は、今回公表された2次速報値は0.8%減。1次速報値の0.7%減から下方修正されています。1次速報時点で業界データなどを活用してなるべく実勢をとらえる工夫をされてましたが、やはり完全に反映するのは難しかったようですね。この件について、詳しくは下記の論考をご覧いただければ幸いです(1次速報時点のデータを基に書いています)。