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日本の国債費の予算見積もりは、「高め」がお好き?

 一昨日(22日)の日経朝刊に興味深い記事が出てました。来年度(2025年度)の国の一般会計の予算において、国債費が大きく増加しそうだというものです。「日銀が利上げに踏み切ったことで財政運営上の「緩和の宴(うたげ)」は終わり、金利の規律と向き合う」と記事は伝えていますが、この予算見積もりはどれだけあてになるものなのでしょうか?


そもそも、国債費とは

 国債費は、国の一般会計の一項目。2024年度当初予算では、歳出総額112兆5717億円のうち、国債費は27兆90億円で約4分の1を占めます。うち、16兆9417億円が返済に充てられる債務償還費、9兆6910億円が利息の支払いに充てられる利払い費です。
 国債の償還(返済のこと)や利払いは、特別会計の一つである「国債整理基金特別会計」で行われています。過去に発行し、満期(返済期日)を迎えた国債の借り換えなども行っています。一般会計の国債費は、この国債整理基金への送金額を表しています。

2020年度までは当初予算>決算が常態化していたが

 下のグラフは2000年度以降の国債費の当初予算、補正後予算、決算の推移を示したものです。2001年度から2020年度にかけて、決算が当初予算を1兆円前後下回る状態が続いてました。2011年度には決算が当初予算を1.9兆円も下回っており、結果的に、当初予算の国債費が過大に見積もられてきたことになります。
 一方、2021年度には決算>当初予算となり、2022、23年度も決算が当初予算とほぼ一致しています。一見すると、当初予算の見積もり精度が高まったかに思えますが、そうではありません。相変わらず、高めの見積もりが続いています。

2021年度以降は税収増で国債費が増えた

 結論を先に述べると、2021~2023年度で国債費の決算額が当初予算額とほぼ同じになったのは、予算で見込んだ以上に税収が得られたおかげです。
 下の表に示したように、国債費の当初予算額は、各年末ごろの補正予算で、①予算補正追加額が加えられ、②予算補正修正減少額が差し引かれます。
 2021年度を例にとると、当初予算(23.8兆円)に①の2.3兆円が加えられ、②の1.3兆円が差し引かれてます。財務省の決算資料によれば、①は「予算補正追加額は、公債等償還に充てる財源として、「財政法」(昭 22 法 34)第 6 条の規定による令和 2 年度(2020年度)の決算上の剰余金の 2 分の 1 に相当する額の国債整理基金特別会計への繰入れに必要な経費を補正追加したもの」と説明されています。2020年度は、補正後予算で55兆円と見込まれていた租税・印紙収入が、決算では60兆円を超えたことなどを背景に、純剰余金が4.5兆円程度発生しました。法律でこの半分は、国債の返済に回す(国債整理基金特別会計への繰入れ)ことが求められているため、①の増額となったのです。

結果的に過大に見積もられた利払額は1~2兆円

 一方、②については、「公債利子等の支払財源の国債整理基金特別会計へ繰入れに必要な既定予算の不用額等を修正減少したもの」とあります。要は、当初予算で見込んだほど、国債の利払い費がかからないと、補正予算段階でわかったということです。
 さらに、補正予算で使わなかった③不用額を引いた金額が決算額になります。これも「国債整理基金特別会計において金利の低下及び年度内に利払日が到来した公債が少なかったことに伴い公債利子等が減少したこと等により、普通国債等償還財源等国債整理基金特別会計へ繰入を要することが少なかったこと等のため生じたものである」とあり、②と同様に、見込んだほど利払費がかからなかったことを示しています。
 この②と③の合計額、結果的に利払費を過大に見込んだ額は、2018年度以降、1.2兆円→1.2兆円→1.7兆円→1.4兆円→1.2兆円と推移してきています。2023年度はまだ内訳がわかりませんが、2022年度の純剰余金が2.6兆円だったことから、②と③の合計額は1兆円台と推察されます(2023年度の国債費の当初予算は25.3兆円、決算は25.5兆円でした)。

慎重に予算を見積もりたい気持ちもわかりますが…

 日経の記事にあるように、2023年度までの当初予算で8兆円台で見積もられていた利払費は、2024年度当初予算では9.7兆円、そして、2025年度当初予算では10.9兆円と見積もられようとしています(まだ概算要求なので年末の予算段階では変わっているかもしれませんが)。
 国債の利払いは発行した段階で確定しているものが多いはずです。市場金利が上昇しても、その影響は過去に発行された国債が満期を迎え、借り換えされたり、新規に国債を発行した時点で影響が現れると思われます。
 慎重に予算を見積もりたい財務省さんの気持ちもわかりますが(このあたりは税収の厳しめ見積もりにも表れてます(下記コラム参照ください))、過大な見積もりを続けていることを踏まえた国債費の当初予算づくりが必要ではないでしょうか?過去の見積もり誤差の分析もぜひ出してもらいたいものです。
 また、マスコミとしても、「金利上昇で利払増えるぞ」と不安をあおるのではなく、過去の予算と決算の誤差なども踏まえた報道が求められていると思います。

#日経COMEMO #NIKKEI


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