季節調整値でみると2ヵ月連続で経常黒字拡大~2024年11月の国際収支
本日(14日)、2024年11月分の国際収支統計が公表されました。日経電子版は経常黒字の前年同月比が大幅増であることなどを報じています。プラスマイナスの値をとる可能性があるデータは、前年同期比ではなく前年同期差で見るべきなんですけどね(笑)。本稿ではいつものように、季節調整値と原系列の前年同月差に注目しながら月次の推移を確認していきます。
季節調整値でみると貿易収支はほぼプラマイゼロ
11月の経常黒字は季節調整値でみると3.0兆円。2ヵ月連続で増加し、8月(3.2兆円)にだいぶ近づいてきました。2024年10月(2.4兆円)からの黒字拡大にはすべての項目が寄与しましたが、第一次所得収支の黒字拡大(10月:3.1兆円→11月:3.6兆円)の寄与が大きいです。また、貿易収支赤字もほぼゼロにまで縮小してきました(10月:▲0.18兆円→11月:▲0.03兆円)。サービス収支は▲0.1兆円で前月と変わらず。
一方、原数値の前年同月差は1.2兆円。3ヵ月ぶりにプラスになりました(10月は▲0.4兆円)。これに最も貢献したのはサービス収支(10月:▲0.6兆円→11月:0.2兆円)。貿易収支(10月:0.3兆円→11月:0.8兆円)、第一次所得収支(10月:0.1兆円→11月:0.4兆円)が続きます。
弱い輸入が貿易収支の前年同月差を押し上げ
貿易収支の前年同月差が2ヵ月連続でプラスとなったのは輸入の前年同月差が2ヵ月連続でマイナスとなり、マイナス幅が拡大した(10月:▲691億円→11月:▲5364億円)ことが主因。輸出の前年同期差は若干減少しています(10月:2626億円→11月:2449億円)。
実質輸出を確認すると、11月は2ヵ月連続で減少しました。実質輸入も同様です。交易条件は横ばいだったので、この実質輸出入の動向が名目輸出入の動きに反映しています。
貿易統計で通関輸入金額の前年同月比を確認すると3.8%減と10月の0.5%増から減少に転じました。寄与度の変化をみると、鉱物性燃料(10月:▲2.6%→11月:▲4.4%)が目立ちます。
その他サービス収支の前年同月差がプラスに
サービス収支の前年同月差は1579億円のプラスであり、8月以来のプラスに転じました。最もプラスに貢献したのは日経の記事でも指摘されている旅行収支です(10月:1029億円→11月:1157億円)。ただし、プラス幅は10月とほぼ同じです。
むしろ注目したいのは、その他サービス収支(知的財産権等使用料収支を除く)が2023年8月以来のプラスになったことです(10月:▲1890億円→11月:683億円)。その立役者は「その他業務サービス」の前年同月差がプラスになった(10月:▲1291億円→11月:2022億円)ことです。
さらに内訳をみると「研究開発サービス」収支(10月:▲37.7億円→11月:2073億円)と、デジタル赤字の一角を担う「専門・経営コンサルティングサービス」収支(10月:▲629.9億円→11月167.1億円)の前年同月差が11月はそろってプラスになりました。2023年8月もプラスは1ヵ月だけでしたが、今後の行方に注目したいですね。
第一次所得収支の前年同月差は、若干拡大
第一次所得収支の前年同月差は10月から若干拡大し、プラス0.4兆円。直接投資収益の前年同期差が拡大した(10月:75億円→11月:3740億円)ことが貢献しています。