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月次データの観察で気にしたい「季節性」

 本日(4/10)、2003年2月の国際収支統計が公表されました。日経新聞の電子版では、1月は大幅な赤字であった経常収支が2月は黒字に転じたことなどが伝えられています。
 こうした月次データを見る際に気にしたいのが「季節性」です。夏はビールが売れやすい(最近は冬も売れる?)、2月はバレンタインデーでチョコが売れやすいという風に、景気要因ではなく、その季節ならではの売上げ等の変動要因のことです。月次データは、この季節性を除いた季節調整値を用いて観察するのが一般的です。新聞等では、GDPや鉱工業生産などでは季節調整済みデータをメインで報道することが多いのですが、今日の日経にもあるように国際収支では元データ(原数値と呼ばれます)をメインに報道されることが多いですね。

季節調整値では2022年10月に経常収支が直近のボトムになっていた

 そこで、財務省がホームページで公開している国際収支の季節調整値を用いてグラフを作成してみました。2023年1月の経常収支が大幅な赤字になったことが先月話題になっていましたが、季節調整値ではぎりぎり赤字になっていません(0.2兆円の黒字)。これは1月は貿易収支や経常収支が少なくなりやすい、赤字になりやすいという季節性を調整したためと考えられます。
 一方、新聞記事のグラフにあるように原数値では0.05兆円の赤字とほぼゼロであった2022年10月の経常収支は、季節調整値では0.3兆円の赤字となり、少し赤字幅が深まっています。
 また、季節調整値でみると経常収支は2021年5月に直近のピーク(2.4兆円)をつけた後、減少傾向に転じ、2022年11月以降はじわじわと黒字幅が増えているようにも見えます。これは、季節調整値でみると2022年10月に直近で最大の2.1兆円の赤字となった貿易収支が、その後赤字幅を縮小させているためです。今後の動向に注目したいですね。

前年同月差に注目する方法もあります

 季節調整値は、統計的な手法を用いて、原数値から「季節性」を取り除いてます。財務省のホームページによると、国際収支は「米国センサス局法X-12-ARIMA」を季節調整に用いているとのこと。この手法はGDP統計や鉱工業生産でも用いられています。
 一方、「統計的手法で加工されたデータを観察するのはなんだか気持ち悪い」という人もいるかもしれません。そうした方におススメしたいのは、データの前年同月差を観察することです。下のグラフは、国際収支の原数値について前年同月からの差を引くことで作成しています。前年同月差のプラス幅の直近のピークは2021年4月(1.8兆円)と季節調整値のピークに近くなっています。
 前年同期差は2021年10月にマイナスになって以来、2022年3月と11月にプラスに転じた以外はマイナスが続いています。ただし、マイナス幅は2022年5月から10月にかけてのころに比べれば徐々に縮小してきています。このあたりも季節調整値と同じですね。
 なお、GDPや鉱工業生産では前年(前年同月)からの伸び率に注目していますが、国際収支はプラスの値もマイナスの値もとりえますので、前年差(前年同月差)を用いています。

#日経COMEMO #NIKKEI

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