政府経済見通しの勝率は?
実質GDP成長率見通しは0.4ポイント上方修正
本日、政府が2023年度の経済見通しを閣議了解しました。2023年度の実質GDP成長率見通しは1.5%、名目GDP成長率見通しは2.3%で、実質GDP成長率の見通しは、今年7月時点(内閣府年央試算と呼ばれる)から0.4ポイント、名目GDP成長率は0.2ポイント上方修正しています。日経電子版によると「事業規模71.6兆円の総合経済対策の効果も織り込んだ」といいます。果たして、政府経済見通しはどの程度、あてになるのでしょうか?
実質GDP成長率の当初見通しは25勝36敗
政府経済見通しは翌年度の見通しとともに、今年度の実績見込みも公表されます。今回公表された2022年度の実績見込みは、実質GDP成長率が1.7%で当初見通しの3.2%から半減近い姿となりました。日本経済研究センターが集計している民間調査機関の見通し平均(ESPフォーキャスト調査)の最新集計(12月15日公表)が1.65%なのでかなり近い値になっています。一方、2023年度の民間見通し平均は1.07%であり、政府見通しの方が0.5ポイント弱高くなっています。
こうした見通しとどの時点の実績値を比較するかは、様々な考え方があります。GDP成長率は1次速報、2次速報、年次推計と公表時点によって変化するためです。例えば、2021年度の実質GDP成長率は、2022年5月18日に公表された1次速報時点では2.1%、6月8日2次速報時点では2.2%でしたが、今月公表された第1次年次推計では2.5%と上方修正されています。
下記の図は、第1次年次推計(昔は確報と呼ばれていた)と、政府経済見通しの当初見通しと実績見込みについて1961年度から2021年度まで比較したものです。見通しが実績を上回ったのは25回と全61回の4割と半分に満たない結果となっています。
しかも、過去10年間(2012~2021年度)に限ると1勝9敗であり、過去2年(2021、2022年度)は当初見通しから実績見込みにかけて下方修正されています。
2022年度の実質GDP成長率の政府見通しは3.2%と上方修正されましたが、昨年(2021年)12月23日の日経電子版は「大規模な経済対策の効果に加え、新型コロナウイルスの感染拡大で出遅れていた個人消費を中心に民需主導で経済が回復するシナリオを描く」と報じている。デジャブかしらと思ってしまいます(笑)。
より重要な名目GDP成長率の見通しも同様の結果
冒頭で紹介した日本経済新聞電子版の記事にあるように、政府経済見通しは政府の税収見通しの基礎となっています。税収に影響するのは物価変動の影響を含む名目GDP成長率ですが、こちらも同様の結果です。見通しが実績を上回ったのは24回と全61回の4割と半分に満たない結果となっています。過去10年間は1勝9敗であり、実質GDP成長率と似た状況です。
ただし、税収見通しは勝率6割!
これだけ政府見通しが当てにならないとすると税収見通しの精度も落ちるかしらんと思うでしょうが、それがそうではありません(笑)。1961年度から2021年度までの当初予算時点の一般会計ベースの税収見通しの伸び率は39回、実績値を上回っています。過去10年間に限ると7勝3敗と素晴らしい成績です。見通しが下回ったのは2016、2019、2020年度で、19、20年度は景気後退期です。2021年度は5.5%減と税収減の見通しだったのに、決算では10.2%増と大幅な増加でした。2022年度も2.7%減、65兆円という当初予算だったのが、過去最高だった2021年度実績(67兆円)を上回るという報道も出ています。政府経済見通しは楽観的ですが、税収見通しは厳しめという傾向がうかがえます。
政府予算案はもうすぐ公表されますが、どのような税収見通しになるのか注目したいと思います。
なお、税収見通しと政府経済見通しの関係について、今年7月に下記のリンクの論考を書かせていただいております。あわせてご覧いただければ幸いです。