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経常利益減の主因は純営業外収益の減少~2024年7~9月期の法人企業統計

 本日(2日)、2024年7~9月の法人企業統計が公表されました。日経夕刊は経常利益が7四半期ぶりに減少していることに注目し、「海外企業との競争激化や一時的な円高の動き」をその要因として挙げています。一方、売上高や営業利益は伸びは鈍化したものの、全産業、製造業、非製造業ともに増加を続けています。経常利益と営業利益の差である「純営業外収益」(営業外収益-営業外費用)が前年同期に比べて減少したことが、経常利益の減少につながっています。

国内企業の単体(単独)決算を集計している法人企業統計

 企業が発表する決算は、いまや連結決算が一般的です。連結決算では、親会社と子会社を一つの会社と見なして売上高などを集計します。この子会社には海外の子会社も含まれます。
 一方、法人企業統計は国内企業の単体(単独)決算を集計しています。子会社の業績は、国内企業であれば単体決算として集計されますが、海外企業の場合は直接は反映されません。海外子会社からの配当金等の増減などで間接的に反映されると思われます。

売上高、営業利益は前年同期に比べて増加

 上記を踏まえて、本日発表された実績値を見てみましょう。全産業の売上高は前年同期比2.6%増、製造業は2.8%増(全産業伸び率への寄与度はプラス0.9%)、非製造業は2.5%増(同プラス1.7%)です。伸び率は製造業の方が大きいですが、非製造業の方が売上高の金額が大きい(全産業の約7割)ので、寄与が大きくなります。
営業利益は全産業で2.5%増、製造業は3.6%増(全産業伸び率への寄与度はプラス1.2%)、非製造業は2.0%増(同プラス1.3%)です。冒頭に述べた通り、売上高、営業利益ともに前年同期に比べて増えています。
 一方、経常利益は全産業で3.3%減。製造業は15.1%減(全産業伸び率への寄与度はマイナス6.1%)、非製造業は4.6%増(同プラス2.8%)です。製造業は大幅減になった一方で、非製造業は営業利益よりも高い伸びになっています。

「その他営業外費用」の増加が純営業外収益減少の主因

 全産業で見ると、営業利益の前年同期差4408億円のプラスに対して、経常利益は同7850億円のマイナスです。この差、1兆2258億円は純営業外収益のマイナスによるものです。
 純営業外収益は、営業外収益(=受取利息等+その他の営業外収益)から営業外費用(=支払利息等+その他の営業外費用)を引いたものです。財務省の資料によると、営業外収益は1兆1407億円増えています(受取利息等が4913億円増、その他の営業外収益が6494億円増)。それに対し、営業外費用が2兆3667億円増えており、純営業外収益がマイナスになっているわけです。
 その内訳を見ると、支払利息等が2296億円増、その他の営業外費用が2兆1371億円増えています。純営業外収益がマイナスになった主因は、その他営業外費用の増加と考えられます。財務省の記入要領によると、その他営業外費用に該当するものは下記の通りです。一時的な円高が為替差損に結びついたのでしょうか?よくわからないですね(汗)。

繰延資産(創立日・開業費・株式交付費・社債発行費・開発費)の償却額、売買目的有価証券売却損・評価損、売上割引、手形売却損及び為替差損等の総額を記入してください。例えば関係会社株式の評価損など、貴社において特別損失に該当するものは、ここには記入しないでください。

売上高人件費比率の上昇が利益率の押し下げ要因にはなっているが…

 最後に売上高経常利益率の前年同期差を確認しましょう。全産業、製造業では純営業外収益のマイナスが利益率低下に大きく寄与していますが、非製造業は純営業外収益がプラスになっています。
 人件費要因(売上高人件費比率の前年同期差)は全産業では4四半期連続、製造業では3四半期連続、非製造業では4四半期連続、売上高経常利益率を押し下げる方向に働いてはいますが、わずかなものにとどまっています。変動費要因(売上高変動費比率の前年同期差)のプラス、すなわち変動費比率の低下で吸収できています。
 今回、製造業の経常利益を大きく押し下げた、その他営業外収益のマイナスが今後も続くのか注目したいと思います。

#日経COMEMO #NIKKEI

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