就業形態計の現金給与総額の伸び、共通事業所ベースでは２ヵ月連続で５％前後に～2024年7月の毎月勤労統計
本日（7日）、「毎月勤労統計」（厚生労働省）の2024年7月分の速報値が公表されました。日経電子版は、就業形態計の実質賃金が0.4％増と２ヵ月連続でプラスになっていることに注目する一方で、実質賃金の上昇率が縮小したことも指摘しています。
一方、私のnoteで注目してきた共通事業所ベース（「前年同月分」及び「当月分」ともに集計対象となった事業所のみを集計）では、就業形態計の名目賃金の伸びは4.8％。6月の5.1％（速報時は5.4％）に続き、５％前後の高い伸びを維持しています。実質賃金に換算すると7月は1.6％増です。
今月のnoteでは、ヘッドライン（調査対象全体）と共通事業所ベースの違いに注目して、データを観察してみたいと思います。
共通事業所ベースでは特別給与の伸びが拡大
調査対象全体の就業形態計の現金給与総額（名目賃金）は６月の4.5％から7月は3.6％へ0.9ポイント縮小しました。この主因は特別給与の伸びの縮小（6月：7.8％→7月6.2％）です。所定内給与と所定外給与を合計した「きまって支給する給与」（定期給与）は６月の2.1％増から７月は2.5％増と伸びを拡大させているためです。
一方、前述した通り、共通事業所ベースの就業形態計の名目賃金は6月の5.1％から７月は4.8％へと0.3ポイントの縮小にとどまっています。特別給与の伸びがむしろ拡大（6月：8.6％→7月10.0％）したためです。定期給与も、6月の2.5％から７月は2.7％へと伸びが拡大していました。
前年と本年の調査対象の違いが特別給与に影響しやすいことが、改めて確認できますね。
一般労働者で見ると2ヵ月連続で５％乗せ
一方で、新聞・雑誌が注目する就業形態計の給与は、パートタイム労働者の労働時間の変動の影響を受けてしまいます。そこで、一般労働者について調査対象全体と共通事業所ベースを比較してみましょう。
名目賃金は、調査対象全体ですと6月の5.0％増から７月は3.6％増へと伸びが大きく縮小しています。しかし、共通事業所ベースでは、6月の5.2％増から７月の5.0％増へと２ヵ月連続で５％台を維持しています。この差は、やはり特別給与の動きと思われます。調査対象全体ですと、6月の8.1％増から７月は6.2％増へと伸びが縮小しています（共通事業所ベースは確報にならないとわかりませんが…）。
さらに注目されるのは所定内給与の動きです。調査対象全体では６月の2.7％増から2.6％へとわずかに伸びが縮小しましたが、共通事業所ベースでは、6月の2.7％増から７月は3.0％増へと伸びを拡大させています。今後の物価動向ではありますが、共通事業所ベースの実質所定内給与の伸び率がプラスになることを期待したいですね。
パート時給の伸びは鈍化したが…
最後にいつものようにパート時給と労働時間を確認しましょう。
パートタイム労働者の時間当たり所定内給与の伸びは6月の4.7％から7月は3.6％へと伸びが鈍化しました。ただ、一般労働者の所定内給与で、調査産業計と共通事業所ベースにズレがあることを踏まえると、パート時給についても共通事業所ベースのデータが欲しいところですね。
労働時間は再び前年同月比増加となりました。以下の表で示した総実労働時間だけでなく、所定内労働時間も増加（就業形態計0.8％増、一般1.2％増）しました。ただ、土日と祝日（海の日）を加えた日数は前年も今年も９日で変わりませんでした。総実労働時間の変化もさほど大きくないので、今月は労働時間の違いの影響はあまりなかったと考えて良さそうです。
