「遍路の訪灯~回国巡礼の灯台~」
灯台訪問の魅力をお伝えする「訪灯シリーズ」。今回は遍く灯台を巡る“灯台巡礼“の狂気具合をデータを交えてお伝えします。
「訪灯シリーズ」はこちらでまとめて読めます
有料マガジン(500円):灯台訪問を楽しむための六ヶ条
灯台の楽しみ方は様々ですが、その内の一つに「灯台訪問」があります。灯台には色々な種類があって、また訪れる季節や時間帯によっても灯台の雰囲気は変わります。その多様性を一期一会の心で楽しむのです。
そんな様々なタイプがある灯台ですが、実は灯台ファンの灯台訪問には様々なタイプがあります。鉄オタの乗り鉄でも、SL専門とか新幹線好きとかカテゴリ分けがあるのと一緒ですね。
登れる灯台を訪問する人、岬の先端などにある沿岸灯台を中心に訪問する人、フレネルレンズの灯台を訪問する人などなど。
そんな中でも、全国津々浦々の遍く灯台を自身の目と体で感じることに命を懸けている人たちがいます。今回はそんな「全国を巡礼する灯台狂」を簡単にご紹介しますね。
改めて、そもそもの「灯台」について簡単に説明すると、公式には海上保安庁の定める航路標識の中の「光波標識」の一つと分類されています。
しかし、光波標識には、海上を漂う灯浮標なども含まれるため、ここでは灯浮標を除くいわゆる「灯台」に話を絞ってお伝えします。
灯台は全国に約3000基あると言われており、その内約900基ほどが岬の先端などにある沿岸灯台、残る2100基ほどが港湾などにある防波堤灯台といわれています。
灯台マニアには、比較的背が高く見栄えがして、フレネルレンズという特殊な灯器を設置していることもある沿岸灯台を中心に巡る人たちも多いです。それでも全国に900基。
しかし、防波堤も含めた全国約3000基全ての灯台を巡ろうという狂人たちもいます。灯台マニアで知られる不動まゆうさんが著書『灯台はそそる』で"灯台お遍路さん"と名付けた部類の人たちです。
灯台訪問は、観光地にある登れる灯台(全国に16基)であれば車で間近まで接近できる駐車場も整備されており、公共交通アクセスや飲食店等の周辺設備も充実していたりするケースが殆どです。灯台の到達難易度としては最も易しいでしょう。
しかし、灯台は基本的には航海の難所、海から見えやすい場所に設置されていることが多い。そのため沿岸灯台は主に断崖絶壁の岬の先端、離島や山間の人気のない辺鄙な場所にあります。このような灯台に到達するには様々な準備が必要となります。
・移動手段…自家用車など
・服装、装備…山歩き出来る服装、安全靴など
・体力…崖を降りたり、山を登ったりします
・判断力・決断力…山道での進退、効率な進路、命の危険を感じた時の引き際の判断など
・事前調査…灯台位置や最寄り場所からの距離を調べておく
一方の防波堤灯台は、基本は港湾を構成する防波堤に設置されており、到達は容易なものが多いです(時折、陸上から完全分離されている離岸防波堤上に設置されている場合がありますが)。
しかし、全国の港湾(国土交通省管轄)の数は2020年4月時点で993港、漁港(農林水産省管轄)の数は2,790港あるというデータもあります。
国土交通省データ:港湾数一覧(2020/4/1時点)
水産庁データ:漁港管理者別漁港数一覧(2020/4/1時点)
勿論、全ての港に灯台が設置されている訳ではありませんし、一つの港に複数の灯台が設置されている場合もありますが、これだけの数の港を全て巡ろうというのですから、正気の沙汰とは思えませんよね…
この灯台巡礼で一番大切なことは、何をもって「到達(ゴール)」とみなすか、です。スタンプラリーならスタンプ帳にスタンプを押す、登山なら山頂に到達する、という明確なゴール設定があります。
遠景の灯台写真を収めればよしという人もいれば、灯台下に行って灯台に触れるまでよしとしない、という人もいます。
勿論、灯台の楽しみ方は人それぞれですのでそこまで厳格に縛る必要はないのですが、その設定により灯台巡礼の難易度や訪問プランも変わりますので緩く縛りは設けておくことをオススメします。
離島や離岸防波堤などは、海上保安庁の許可がなければ到達できなかったりしますからね。
ちなみに記者の場合、「灯台の初点灯プレートをカメラで撮影したら到達とする」というゴール設定にしています。なので、まあまあハードル高めと言えますね。
自分なりのルールを決めたなら後はは旅立つだけ。どういうルートで、どの手段で巡るのかを考えながら計画通り行くのも良し。一期一会の出会いに感謝しながら気ままに行くのも好し。
事前に灯台の位置を調べておきたい場合は、灯台レジェンドである“小さい灯り(辻俊介)“さんが自作された灯台マップ(全国の灯台がGoogleマップにマッピングされている凄い機能)を活用しても良いと思います。
なんせ全国に3000基ありますからね。1〜2年では到底終わりませんので、長〜く続ける趣味と思って取り組む気持ちが大事です。
灯台を巡ることは、単に自分が楽しむためだけの「旅行」や自由気ままに行き先を決める「冒険」とは異なります。
遍く各地にある灯台は「巡礼」の対象です。一基一基との出会いを巡り合わせと思い、これはもう一生もんの付き合いだと思って接すれば、穏やかな気持ちになれること請け合いです。
記者 村上
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年々その数を減らしている灯台を護るため、灯台を訪れる魅力などをお伝えするプロジェクト。灯台マニアの方のみならず、灯台のある風景を通じて地域の魅力を再発掘したり、地元の原風景を護りたいと願う方々の想いを大事にしていきたいです。