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《灯台訪問をガチで楽しむための六ヶ条》

こんにちは。《灯台訪問を楽しむための六ヶ条》では、これまで200基以上の灯台訪問経験のある記者が、実践できる灯台訪問の「楽しみ方」をご紹介しました。
 《灯台訪問を楽しむための六ヶ条》前編
 《灯台訪問を楽しむための六ヶ条》後編

《灯台訪問を楽しむための六ヶ条》
◆第一条:灯台の「名前」を覚えよう
◆第二条:灯台の「歴史」を知ろう
◆第三条:灯台の「高さ」を意識しよう
◆第四条:灯台は「三景」で感じよう
◆第五条:灯台訪問は「エンタメ」のつもりで
◆第六条:灯台を「見上げて」笑顔になろう

ただこれは、観光旅行された方が「ついで寄り」として灯台訪問される場合に少しでも灯台との距離が近づくと良いな、という想いで書いたもの。つまり「灯台を詳しく知らない人」に歩み寄ったソフトな内容にしています。

では「灯台ガチ勢」である記者が、実際に灯台訪問する際はどんな感じなのか。特に気を付けていることを同じ六ヶ条でまとめてみました。
一部狂気と危険と隣り合わせだったりするので、くれぐれも真似はしないでください。

なお、はじめに断っておくと「灯台ガチ勢」でも様々な分類があり、灯台女子、不動まゆうさんは著書『灯台はそそる(光文社新書)』で、大まかに分類しても【お遍路さん(全国津々浦々の灯台を巡る旅人)】【ランドスケーパー(灯台のある風景が好きな収集家・クリエイター)】【フィールドワーカー(灯台の建築技術・地域史などを調べる探究家)】【灯台〇〇フェチ(レンズフェチなど)】などをご紹介されています(灯台愛がぎっしり詰まった一冊なので是非一度ご覧ください)。

それぞれ「灯台の楽しみ方」は大きく異なるのですが、今回の記者はおよそ【お遍路さん+フィールドワーカー】寄りの嗜好がありますので、読み進める際はご注意ください。

では早速本編をどうぞ

《灯台訪問をガチで楽しむための六ヶ条》


◆第一条:事前に主役の灯台だけ決めておく

灯台を巡ることを旅の目的とする場合、「1日何基回るか」というのは重要なテーマです。特に初めての訪問地であれば行きたい灯台が沢山あります。記者の場合、全国の岬などにある比較的大きな灯台だけでなく、港にある小さな灯台も巡ることがあります。そのため、時間はいくらあっても足りません。

こんな時、とっても大事な心構えは「灯台訪問は今回限りではない」「今回の旅の主役の灯台だけを決めておく」ということです。

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訪問回数が限られる場所だと、人間どうしても「アッチもコッチも」と予定を詰め込みすぎて分刻みでのスケジュールとなり、焦って十分に楽しめなくなります。そのため「行きたい灯台は沢山あるけど、今回の旅のテーマ(主役)はこの灯台にしよう。それ以外は行けなくてもまた次回がある」と決めることで、メインの灯台に集中することが出来ます。

次に大事なポイントは「主役の灯台の選び方」です。
これはシンプルに「"日の出"か"日の入り"を一緒に迎えたい灯台」です。
何故なら、夜間や昼間の時間帯に灯台を訪問することは容易いですが、"日の出"や"日の入り"の時間を灯台と過ごせるのは1回につき大体1基のみだからです。また、"日の出"や"日の入り"は、灯台が点灯/消灯する特別な時間帯ですので、この時間をどの灯台と一緒に過ごすかがとても大事なのです。

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そんな理由から主役の灯台は「"日の出"か"日の入り"を一緒に迎えたい灯台」としています。
主役が決まれば、あとはそこから逆算しながら途中の灯台たちを時間が許す限り楽しむだけですので、時間配分が非常に楽になります。

◆第二条:雨天や曇天ならばむしろ喜ぶ

通常、観光旅行であれば天候は晴天であることが望まれます。誰だって雨天や曇天で鬱々した気持ちで旅行はしたくありませんからね。
しかし「灯台ガチ勢」の記者は、雨天や曇天ならばむしろ喜びます。

何故か。
それは「天気や季節も含めて『灯台の表情』」だからです。

もし観光ならば雨天や曇天ではポジティブに訪問はしないでしょう。SNSで"映え"を狙った風景投稿でも大抵が晴天時で、それ以外の天候の写真は少数派のように思います。
しかし、灯台の場合は雨天や曇天、荒天時ですら不思議と「灯台らしさ」として受け入れられるのです。むしろ荒天時の時の方が灯台の置かれる環境の過酷さが伝わり評判になったりします。

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「灯台ガチ勢」の記者としては、灯台の一番の魅力は「多様性」と考えています。その魅力には季節の移ろいや天気模様、時間帯による表情の変化も含まれています。灯台は自然風景と同一化していますので、「いつ見ても、それは一期一会で貴重な時間」として尊いのです。

そんな訳で、灯台訪問時の天候に囚われることはなく、ただただ灯台を目指すことに集中するのがガチ勢なのです。
※灯台によっては荒天時に到達が困難になったり、防波堤上が波浪や暴風で危険な場所になることもありますので、くれぐれも灯台の立地環境と天候を考慮して訪問するようにしましょう。


◆第三条:灯台を360度堪能する

灯台は動きません。これは揺るぎない事実です。

「灯台ガチ勢」には、「できる限り全てのアングルから灯台を見てみたい」という欲求があり、常にこの想いを念頭に置きながら目的の灯台に近づいたり離れてみたり、山を登ってみたり崖を下ってみたりしています。
灯台は自分から動きませんので、灯台を存分に堪能しようと思ったら、自分が動くしかありません。

主役の灯台であれば「アングル」✖「時間帯」の掛け算ですので、写真撮影が百枚をゆうに超えることもあり、1基の灯台訪問に1~2時間費やす場合もザラにあります。灯台撮影のためならば200段近い階段を何往復することにも躊躇いがありません。もはや運動部です。

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これはどんな灯台でも同じで、たとえば小さな港の灯台であっても「灯台のある防波堤からの風景」「防波堤の対岸からの風景」「船舶が入港してくる時の灯台」など、その灯台のベストショットを探していると1回の訪問で何百mと移動することになり、1日中灯台訪問していると、まあまあの運動量になります。「灯台ダイエット」と言っても過言ではありません。

そのため「灯台ガチ勢」の訪問時の服装は、身動きがとりやすい装いをしています。ヒールの靴なんて絶対履きません。
ちなみに記者はいつ灯台に行くことになっても良いように、日常生活から「ジーンズ」と「作業靴(先っぽに鉄板の入っているやつ)」を常に履いています。普段から履き慣れていないと一刻を争う事態なった時(!?)に出遅れますからね。


◆第四条:灯台とともに24時間稼働する

記者の場合、灯台訪問時は基本、寝ません。
冗談でもなんでもなく、シンプルに「寝る暇がない」という理由です。

"昼間"は灯台を沢山回れる時間ですから、防波堤の灯台など脇役的な灯台を巡っています。あと、主役の灯台のある場所にも先着しておき、下見をしておかないとこの後のメインの時間帯で慌てます。

"日の入り"は勿論、主役の灯台とともに過ごすメインイベントです。
この時間は下見をしておいた場所から、とにかく貪るように灯台を眺め、ゆっくりと回転をはじめ、点灯していく灯台の美しさに見惚れながら至福の時間を過ごします。写真撮影するのであれば忙しいかもしれませんが、とにかく陽が沈んで灯台が点灯するまで、息をつく暇はありません。

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"夜間"は灯台の「仕事時間」ですので、点灯している灯台の光芒を眺めつつ、星空とのコラボ姿を堪能していきます。しかし、灯台の暗い足下は危険も多いので、訪問できる灯台は限られており、日中に十分な下見をした灯台や灯台周辺が平地の安全性の高い灯台だけにします。
※灯台周辺でケガなど危険な目に遭うと、立ち入りが禁止になったりして皆が不幸になりますので、くれぐれも夜間の灯台訪問は気を付けるようにお願いします。

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また夜間のうちに"日の出"を迎える灯台を目指さないといけませんので、実質的な移動時間となり、休息をとれるのはせいぜい目当ての灯台到着後、明け方まで車中泊する時間くらいです。その時間ですら寝坊が怖いので熟睡はなかなか難しいです。

"日の出"はもう一つのメインイベント。夜が明けてマジックアワーを迎え最も美しい時間を灯台とともに過ごす。特に"日の出"の時間帯は消灯がいつになるかハラハラしながら、色んなアングルから灯台を愛でていきます。

そんな訳で、灯台訪問期間中の睡眠は最小限。
時折、運転中に寝落ちしてしまうこともありますので、絶対に真似しないでください。


◆第五条:灯台を知るなら地域史を学べ

これはどこの馬の骨とも知れない記者自身のモットーです。
基本、灯台は機能面の要請から設置されるものですので、その地域に灯台があるのにはそれなりの「理由」があるのです。それが毎度非常に興味深い。

たとえば、周辺の海域は暗礁や急潮流が多く航海の難所であるとか。
たとえば、その暗礁や潮流が豊かな漁場を育み港が栄えたとか。
たとえば、自然の良港の地形で古来より立ち寄る船が多かったとか。

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四方を海に囲まれた日本。その灯台史を紐解くことは、日本史を辿ることに他なりません。それこそ、船というのは古来からの移動手段の中心であり、現在の港町は昔の集落です。人が集まるところに歴史あり。市街地が内陸に移動したとはいえ、日本の歴史は海の近く、川の近くから形成されています。

灯台訪問して、灯台の個性を一つひとつ堪能するためには、否が応でもその地域の歴史を深堀していく行為となっていきます。灯台のある地域の地形、気候、名産、歴史上の出来事など、それらが必然の織りなす物語の延長線上に灯台が存在するからです。

それらは日本人として知っておくべきことも多い。
灯台を入口として、「好きだから学べる」機会になることも多々あります。

そんな機会を与えてくれた灯台に感謝です。


◆第六条:灯台訪問は一生続く道

灯台訪問に終わりはありません。
港にあるような小さな灯台を含めると、灯台は全国に約3000基にものぼります。岬の先などにある比較的大きな灯台だけでも約900基あります。

記者の場合では、これまでの条件を守って灯台訪問すると、1回2泊3日の日程で回れる灯台はおよそ20基~30基程度です。意外と少ないですか!?だって1基ずつ灯台の魅力をしっかりと堪能したいですからね。ここは人によって目的が異なりますので、あくまで記者自身の場合、です。

まとまった期間での遠出での灯台訪問は、本業でなければ普段なかなかできませんので、せいぜい年に3~4回出来れば良い方です。

上記の前提であれば、単純計算で1年間で最大120基訪れることができます。そして、そのペースで訪問していったとしても、全国3000基ある灯台全ての訪問するのに25年かかる計算です。一生楽しめます。

このように「灯台訪問」は一生続けられる大人の趣味になり得ます。

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灯台訪問というと、どうしても非日常体験のように感じてしまいます。
でも灯台は、本来的には常に「寄り添う存在」なのです。

ただただ、そばに寄り添ってくれる。
そんな人生を灯台とともに歩んでみませんか。


◆(ご参考)実際の灯台訪問レポート

最後に、今回の記者が《灯台訪問をガチで楽しむための六ヶ条》で訪問した灯台のレポートを下記リンクに貼っておきます。もしよろしければご一読いただき、疑似体験してみてください。今回の六ヶ条に準じて0泊3日で灯台を追いかけ続けた体験記です。

レポ47:江埼灯台(2020/1/2)前編
レポ47:江埼灯台(2020/1/2)後編
レポ48:紀伊日ノ御埼灯台(2020/1/3)
レポ49:樫野埼灯台(2020/1/3)
レポ50:麦埼灯台(2020/1/4)
レポ51:大王埼灯台(2020/1/4)
レポ54:洲本港北防波堤灯台(2020/1/2)
レポ55:生石鼻灯台(2020/1/2)
レポ57:雑賀埼灯台(2020/1/3)


灯台の「多様性」をパっと見で知りたい方は、こちらもどうぞ。
灯台のグラビア写真集の表紙だけを眺めることが出来ます。

2020年発売の"Mamori"シリーズ

少しでもこの記事が皆様の夢中になれるものへの後押しになれば幸いです。


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ちょっとした心構えの違いで灯台訪問が楽しい旅の思い出の一つに変わりますので、灯台を訪れる機会に思い出して頂ければ嬉しいです。

これまで200基以上の灯台訪問経験のある記者が、実践できる灯台訪問の「楽しみ方」をご紹介します

年々その数を減らしている灯台を護るため、灯台を訪れる魅力などをお伝えするプロジェクト。灯台マニアの方のみならず、灯台のある風景を通じて地域の魅力を再発掘したり、地元の原風景を護りたいと願う方々の想いを大事にしていきたいです。