見出し画像

「会席の灯明~灯台フルコース~」

灯台の多様性の魅力をお伝えする「灯明シリーズ」。今回は灯台の多様性を満喫するための一つの事例(考え方)をご紹介します。

 「灯明シリーズ」はこちらでまとめて読めます
 有料マガジン(500円):灯台訪問を楽しむための六ヶ条

灯台には「多様性」があります。
多くの方が頭に思い描く灯台は、岬の先端にポツンと佇んでいる…そんなイメージではないでしょうか。それは間違いではありませんが、実際の日本の灯台はもっと多種多様な存在です。

「明治期灯台」や「のぼれる灯台」「レンズ式灯台」など、灯台の魅力的な要素は多数ありますが、それらは比較的よくメディア等で紹介されているので是非Web検索してみてください。

ここでは全く一般的ではありませんが、記者が独断と偏見で勝手に分類したマニアックな灯台の類型をお伝えします。今回は灯台の分類紹介というより「考え方(枠組み)」です。

◆灯台の多様性としての魅力とは

灯台はざっくり分けると、岬の先端などにあり外洋航海する船を導く「沿岸灯台(主に白色)」と、港湾の波止場にあり船の出入りを導く「防波堤灯台(赤色・白色)」に分類できます。沿岸灯台がいわゆる"よくあるイメージの中の灯台"ですね。

画像4

防波堤灯台というのは沿岸灯台に比べて小さく形も似ているものが多いのです。赤色と白色の2種類があります。

画像3

さらに灯台は「季節」「時間帯」「天候」によって異なる風情を感じたり、同じ灯台でも「遠景」「中景」「近景」の三景からの眺望では臨場感や自然風景とのバランスなど趣向が変わったりします。※灯台の三景の魅力はコチラの記事でも触れています

そのような灯台の魅力を満喫するにはどうしたら良いのでしょう。

「沢山の灯台に会いにいく!」というのが結論。
…と締めてしまうとあまりに素っ気ないので、今回はその一つの考え方をご紹介します。

その名も「灯台フルコース」という考え方(枠組み)です。

画像5

◆「アラカルト」と「コース」の違いは?

一般的にお店で出る料理のメニューには「アラカルト」と「コース(セット)」がありますよね。「アラカルト」とはメニュー表から自分で好きな料理を注文する形式、「コース(セット)」とは予め決められた料理セットを注文する形式のことです。

「これが食べたい(好き)!」と注文時に心に決めている人はアラカルトで個別に注文した方が良いですが、そうでない方はお店の用意したコースやセットメニューを注文することも多いでしょう。それは「ある程度絞れられた選択肢から選んだ方が楽」「自分の全責任でハズレを引きたくない」という心理面での負担軽減が主な目的でしょう。

灯台訪問もこれと同じように考えられます。

灯台訪問での「アラカルト」とは、「自分は灯台のここが好き!」ということが明確で、その対象となる灯台を中心に巡ること。

例えばレンズフェチであれば「フレネルレンズ設置灯台を巡る」とか、大きめの灯台が好きならば「沿岸灯台を中心に巡る」とか。他にも「昼間の灯台を巡る」「のぼれる灯台を巡る」「秋冬だけ灯台を巡る」という人もいます。ここは十人十色、多種多様です。そのような幅広い選択肢があることも灯台の魅力の一つ。

※全国ののぼれる灯台たち

画像3

鉄道オタクの方々の中にも「SL鉄」「ローカル線好き」「乗り鉄」「撮り鉄」「車両鉄」という風に同じ鉄道でもそれぞれ好みになる部分は異なります。イメージ的にはそれに近いでしょうか。

一方で、灯台巡りを始めたばかりの方々は、自分の灯台の好みがハッキリとは分からないと思います。そもそもどんな灯台があるかも分からないのですから当たり前ですよね。そんな時に役立つのが「コース」の考え方を知ることです。


◆「コース」とはフレームワーク(枠組み)


料理でいう「コース」というのは一つの"フレームワーク"です。「この順番に食べると身体にも心にも良いですよ」という風にお店の人がお客様に安心してもらうために決めらたもの。

コース料理の良いところは「コースの配膳ならば大ハズレを引くことはないだろう、という安心感があること」と「ある程度の制約がある中で選ぶ自由の方が気が楽」という心理面でのフォローが入るところです。

そのため、灯台に詳しくない人や灯台訪問を始めたばかりで好みが分からない人は「灯台フルコース」という一つの枠組みに沿って、訪問する灯台を選んでみてはいかがでしょう。

ただし「灯台フルコース」は一定の条件を提示するだけであって、あくまでその条件に合う灯台を探すのは自分自身となります。
そのため灯台を満喫するというより「謎解きのヒントをもらう」といった感じでしょうか。

最終的には「自分だけの灯台フルコース」を作ることが目的です。

「灯台フルコース」の定義は下記のとおりです。

<灯台フルコースの定義(枠組み)>
 ・選ぶのは下記条件の「自分で訪問したお気に入り灯台画像」
 ・同じ灯台を繰り返し選んでも良い

  1.防波堤灯台(赤灯)
  2.地元(出身県・地方)の灯台
  3.防波堤灯台(白灯)
  4.昼間の灯台
  5.灯台の灯器部(ズーム)
  6.夜間の灯台
  7.春夏の灯台
  8.朝夕の灯台
  9.秋冬の灯台


料理のフルコースには配膳の順序にもキチンと意味があります。前菜(オードブル)は軽めのものであったり、メインの後にお口直しを用意したり。

灯台フルコースの順序にも意味があります。

序盤は防波堤灯台や地元の灯台など「ローカル色」の強いところから味わいつつ、中盤で昼間・灯器部・夜間という「ザ・灯台」というメインディッシュを存分に味わう。終盤は朝夕の灯台や季節感のある日本ならではの情緒を感じつつ余韻を残しながら締め括る。

そんな灯台の多様性をじっくりと味わえるコースになっています。

※フレームアプリで一覧を作る時は左上から右下にかけて順序通り並べることをオススメします

画像4

終盤「春夏」「朝夕」「秋冬」となっているのは、選択の余地を残すことで、より好みの灯台を探す楽しみを残すためです。日の出に映える灯台もあれば日没時に魅力を増す灯台もありますからね。

自分自身だけの唯一無二の「灯台フルコース」を完成させるつもりで訪問する灯台を考えると、自然と好みの灯台ジャンル以外にも幅広く灯台を味わうことができます。

もちろん、この枠組みはあくまで灯台を味わうための「コース料理」の一つに過ぎません。灯台は人それぞれ「アラカルト」で味わう楽しさもあるし、「コース」だとしても料理にもフレンチなのか日本の会席料理があるように、目的や背景に応じて変化することもあります。

この「灯台フルコース」でも、選ぶ時期やその人柄、置かれている立場によってセレクトする灯台が変わるでしょう。だけれども、灯台はこのどれもに応じて個性ある姿を見ることができるとても懐の深い存在です。

もし、自分の灯台ライフや次回の灯台訪問に迷った時はこの「灯台フルコース」のフレームワークを活用して、これまで巡っていなかった新たなシチュエーションの灯台訪問にチャレンジしてみてはいかがでしょうか。

画像6

村上 記

ここから先は

0字
ちょっとした心構えの違いで灯台訪問が楽しい旅の思い出の一つに変わりますので、灯台を訪れる機会に思い出して頂ければ嬉しいです。

これまで200基以上の灯台訪問経験のある記者が、実践できる灯台訪問の「楽しみ方」をご紹介します

期間限定!PayPayで支払うと抽選でお得

年々その数を減らしている灯台を護るため、灯台を訪れる魅力などをお伝えするプロジェクト。灯台マニアの方のみならず、灯台のある風景を通じて地域の魅力を再発掘したり、地元の原風景を護りたいと願う方々の想いを大事にしていきたいです。