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《灯台訪問を楽しむための六ヶ条》前編

こんにちは。『続・灯台護(とうだいもり)プロジェクト』では、『全国の灯台巡礼レポ』というマガジンで「灯台訪問の魅力(疑似体験)」を一基ずつガッツリお伝えしています。 『全国の灯台巡礼レポ』

でも、そもそも灯台訪問している人の多くは、灯台のある地域へ観光旅行した際の「ついで寄り」として灯台を選んで訪れているケースが多いと思っています。

そんな訳で、もう少し軽い気持ちで実践できる灯台訪問の「楽しみ方」を、これまで200基以上の灯台訪問経験のある記者がご紹介します。いずれも「のぼれる灯台16」で(勿論それ以外の灯台でも)実践できる内容ですので、灯台を訪れる機会にほんの少し思い出して頂ければ嬉しいです。

《灯台訪問を楽しむための六ヶ条》
◆第一条:灯台の「名前」を覚えよう
◆第二条:灯台の「歴史」を知ろう
◆第三条:灯台の「高さ」を意識しよう
◆第四条:灯台は「三景」で感じよう
◆第五条:灯台訪問は「エンタメ」のつもりで
◆第六条:灯台を「見上げて」笑顔になろう

この記事では前半部分の第一条から第三条をお伝えします。前半は灯台の「予備知識」的なお話が中心ですので、是非、下記の「のぼれる灯台16」基本データを見比べながら読み進めて頂ければ。

  燈光会 公式サイト「のぼれる灯台16」

◆◆「のぼれる灯台16」基本データ◆◆
尻屋埼灯台(青森県)  
 初点灯:明治9年  灯火標高:47m 塔高:33m
入道埼灯台(秋田県)
 初点灯:明治31年 灯火標高:57m 塔高:28m
塩屋埼灯台(福島県)
 初点灯:明治32年 灯火標高:73m 塔高:27m
犬吠埼灯台(千葉県)
 初点灯:明治7年   灯火標高:52m 塔高:31m
野島埼灯台(千葉県)
 初点灯:明治2年   灯火標高:36m 塔高:29m
観音埼灯台(神奈川県)
 初点灯:明治2年   灯火標高:56m 塔高:19m
初島灯台(静岡県)
 初点灯:昭和34年 灯火標高:63m 塔高:16m
御前埼灯台(静岡県)
 初点灯:明治7年   灯火標高:54m 塔高:22m
安乗埼灯台(三重県)
 初点灯:明治6年   灯火標高:35m 塔高:15m
大王埼灯台(三重県)
 初点灯:昭和2年   灯火標高:46m 塔高:23m
潮岬灯台(和歌山県)
 初点灯:明治6年   灯火標高:49m 塔高:23m
出雲日御碕灯台(島根県)
 初点灯:明治36年 灯火標高:63m 塔高:44m
角島灯台(山口県)
 初点灯:明治9年   灯火標高:45m 塔高:30m
都井岬灯台(宮崎県)
 初点灯:昭和4年   灯火標高:256m  塔高:15m
残波岬灯台(沖縄県)
 初点灯:昭和49年 灯火標高:44m 塔高:31m
平安名埼灯台(沖縄県)
 初点灯:昭和42年 灯火標高:43m 塔高:25m

では早速本編の方をどうぞ。

◆第一条:灯台の「名前」を覚えよう

せっかく訪れた灯台なのですから「あー、何だっけ、あの白い大きな灯台行ったよねー」と漠然とした思い出話になってしまうのは少し寂しいですよね。そうならないように、灯台訪問した時に「灯台の名前」はまず押さえておきたいです。

実は灯台の名前にはルールがあり、殆どの灯台はそのルールに沿っていますので今回はそのルールをお伝えします。

まず大前提として理解して頂きたいのは、灯台はれっきとした公共の「標識」ですので資産管理は厳格に行われており、「正式名称」が必ずあるのです(でも観光案内でも案外間違った表記や読み方でガイドされていたりします…)。

ここからが灯台の名前に関するルールの話ですが、なんてことはありません。灯台の名前は概ね次の2つのルールに準じています。

 ①灯台の名前は大体「地名」を冠する
 ②「崎(ざき)」は「埼(さき)」となる

①はそのままの意味で灯台の名前はほぼ地名を冠します。「岬」「島」「港」などが多いです。そのため、灯台巡りをしていくと自然と日本全国の地名にも詳しくなっていきます。

②について少し解説すると、灯台のある地域名には「野島崎(のじまざき)」という風に「地名+崎」と付く名前が多いのですが、灯台の名前になると「野島埼(のじまさき)灯台 」となります(※読み方も"〜さき"と濁りません)。

■野島埼灯台(千葉県)

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これには一応キチンとした理由があり、土へんの「埼」は"陸地(平地)が水部へ突出したところ"を表現しています。
一方で山へんの「崎」は本来の意味として"山の様子のけわしいこと"を言い、山脚の突出した所を示しており、平野の中に突出した山地の鼻等を言う意味なので、海図では漢字の意味からも地形が判る土へんの「埼」を採用しているそうです。

‥という訳で、この2点のルールを踏まえて冒頭の「のぼれる灯台16」を見てみると、灯台の名前はほぼ所在地の地名に呼応していることが分かるかと思います。また16基中10基の名前に「~埼」が付いていますね(島根県の出雲日御碕灯台は全国的に珍しい「~碕」と書く灯台なのです)。

是非とも灯台訪問した時には、灯台の名前を記憶に刻み込んでください。

◆第二条:灯台の「歴史」を知ろう

せっかく灯台訪問するならば、訪問する灯台がどのようなものなのか知っておくと仲間内で話のネタになります。

そもそも漠然とした灯台のイメージはあっても、いつからそこにある建造物なのか。そもそも灯台史なんて一度も学んだことはない、という人も多いはず。

では灯台の歴史はいつからか。その歴史を紐解き始めるとメチャクチャ時間がかかるので、灯台訪問する人は次の事柄だけ覚えておけば良いと思います。日本人なら「知っておいて損はない」内容です。

 日本の洋式灯台の歴史は「明治の開国」とともに始まった

それでは詳しく説明しますね。

2020年現在、日本全国には防波堤にある小さな灯台も含めると約3000基以上の灯台があります。その中で、岬や離島などにある比較的大きめの灯台は「沿岸灯台」と呼ばれ全国に約900基あります。

そんな灯台たちは正確には「洋式灯台」と呼ばれており、日本にあるほぼ全ての沿岸灯台が「洋式灯台」なのです。

■観音埼灯台(神奈川県)※日本最初の洋式灯台

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洋式灯台という文明は、そもそも「明治維新」の開国と同時に日本が西欧諸国より真っ先に輸入した(させられた)最先端技術です。

日本が開国して諸外国との貿易を始める時に最も必要なインフラ工事は、貿易の玄関口となる「外国船を迎え入れるための港湾整備」でした。そんな港湾整備の中でも真っ先に必要だった技術が「灯台」の建造技術なのです。

何故なら島国の日本の近海は"ダークシー"と呼ばれるほど暗く、暗礁や小島なども多い危険な海だったので、そもそも「日本にたどり着くため」の導入部分から整備する必要があったからです。
あの黒船来航で有名なペリーが日本へ初めて来た時にも、既に灯台建設の希望予定地を下調べしていたとも言われています。


そんなこんなで日本の灯台史の本格的な幕開けは明治開国の時であり、そのため『明治期に建設された灯台』というのは「始まりの灯台たち」ですので、大変歴史的に貴重な存在です。灯台建設から約150年間もの時を積み重ねてなお現役の灯台たちもいます。

是非とも灯台訪問した時には、『明治期灯台』かどうかは要チェックです。


◆第三条:灯台の「高さ」を意識しよう

せっかく灯台を実際に訪問するならば、灯台ならではの「立体感」を楽しんで欲しいので、是非とも注目して欲しいのは灯台の「高さ」です。

灯台の「高さ」には代表的なものとして「①灯火標高(灯高)」と「②塔高(とうこう)」の2つがあります。

灯火標高(とうかひょうこう):船から見た灯台の高さ

灯台の光源としての高さのこと。具体的には「平均海面から灯火(レンズ中央部)」までの高さのことです。
そのためシンプルに標高が高い所にある灯台ほど「灯火標高」が高くなる傾向にあります。略して「灯高」と表記されていたりします。

灯台訪問時の楽しみ方としては、「灯火標高」が高いと自然の絶景が臨める可能性が高いです。灯台によっては山間部に埋れてしまい、地上から海面が見えない場合もありますが、山あいの景色は清々しいはずです。

ただ、この「灯火標高」は高いほど登山に近い(しかも登山より荒れた道のりも多い)体験になる、ということですから、事前に訪れる灯台の「周辺設備」や「行き方」をよく調べておいた方が無難です。

②塔高(とうこう):地上から見た灯台の高さ

単に「高さ」と表記されている場合もあります。これは「地上から構造物(灯台)の頂部までの高さ」のことで、シンプルに「塔高」が高ければ高いほど迫力のある"ザ・灯台"という感じになります。
写真映えもするし、灯台訪問するならやっぱり「塔高」の高い灯台に行きたいものですよね。

■出雲日御碕灯台(島根県)※日本一の「塔高」44mを誇る

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しかし、実際には「塔高」の高い"ザ・灯台"は日本においては少数派です。「のぼれる灯台16」の中でも30m級(マンション10階くらい)の灯台は半分程度に留まります。

その理由は、「塔高」はデザイン性ではなく機能性で決定されるからです。
灯台は航路標識ですので、灯台を建設する時に重要なのは「灯台の光をどこまで沖合の船に届かせるか」です。

遠大な太平洋を航行する船舶に対しては、十何海里(何十km)も離れた海に光を届ける必要があり、緻密な計算の上で灯台の高さが決められます。標高の高い位置で立地が見つかれば万々歳ですが、そうではない場合は海ぎわの岬に背の高い灯台を建設することになります。

つまり「灯高」が高い灯台というのは、遠くに光を届ける必要のある灯台(沿岸灯台)で周辺に灯台を高く建てなければいけない標高しかなかったということですね。


ですから灯火標高の高い灯台でも背の低い灯台であることはよくあります。「のぼれる灯台16」の都井岬灯台(宮城県)は、灯火標高256mと非常に高いため、塔高は15mしかありません。
灯台訪問した時には「なんかショボい」とガッカリするかもしれませんが、灯台の高さにはこのような理由があるのです。

是非とも灯台訪問した時には、「灯台の高さ」の意味に注目してください。


今回は《灯台訪問を楽しむための六ヶ条》のうち、前半部分をお伝えしてきました。前半は「予備知識」的な内容が多かったですが、後半部分は灯台訪問での「実践(アクション)」をお伝えしていきます。お楽しみに!

◆第一条:灯台の「名前」を覚えよう
◆第二条:灯台の「歴史」を知ろう
◆第三条:灯台の「高さ」を意識しよう
◆第四条:灯台は「三景」で感じよう
◆第五条:灯台訪問は「エンタメ」のつもりで
◆第六条:灯台を「見上げて」笑顔になろう

 《灯台訪問を楽しむための六ヶ条》後編

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ちょっとした心構えの違いで灯台訪問が楽しい旅の思い出の一つに変わりますので、灯台を訪れる機会に思い出して頂ければ嬉しいです。

これまで200基以上の灯台訪問経験のある記者が、実践できる灯台訪問の「楽しみ方」をご紹介します

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