涙を凍らせてひかるつららで
※詩 三篇
そうだね
その子は 私より脆いから
あなたが守ってあげなきゃね
そうだね
その子は 私より気楽だから
あなたは楽しいんだろうね
そうだね
そこは ここより寒くも
暑くも眩しくも暗くもないから
眠ったり明日を迎えたりするよね
泣いたり出来ていいな
怒ったりジェラシーも
ふざけたりしていいな
鮮やかさだけ添え合って
誰も傷つけないようになんて
がんばれていいな
あの声が聞こえなくて
いいな いいな
そうだね
あなたは 私より脆いから
あなたを宥めてあげなきゃね
そうだね
あなたは 私より遅いから
転んでる人を見ているね
そうだね
ここは 音も光も温度もないから
踏み外しそうでこわいよね
涙を凍らせてひかるつららで
掘り出したいな恐竜
さみしいだろうな
怒ったり頬膨らませてみたいな
どんな手をつかっても
いつかは誰かの役に立つかも
誰かを傷つけるのなら
いい傷にしたいな
治りながら
だれもが
光ったら
いいな
泣いているこどもの
声が聞こえた
電話口で 2時
すり替わったね
あのこどもは
まだそこにいる
目をそらしても
いる
わたしの少女は
パンを買って
冒険に誘うわ
ナイフを持って。
わたしも持つから。
だけれど誰も
いなくなってしまう
あの森は怖いと言う
わたしあっちから来たって
言ったらもう遊んでくれないな
ムンクの叫びは頬にあててるんじゃない
両耳を塞いでいる
あの声が聞こえなくていいな
消えてしまうものが
誰にも観測されないものよりも
大事に思えていいな
触ったり繋いだりできていいな
約束を交わせていいな
あなたの予想の中のわたしは
そんなもの、と一瞥しているんでしょう
わたしには心がある
わたしはどんな顔をしている
わたしには顔はある?
どんな顔をしている
吃音のこどもはデパートで吐いた
きみは魔女じゃなくて魔女たちが読む星の光だ
と誰かが言った
魔女狩りさえされない地中のわたしは光った!
この重たく湿った大地をもすべてつらぬくほどに光ればよいのだとわかった。
エナジーを使った、とことん注いだ、吐いたり折れたりはどうでもいい。
地球の裏側に月みたいにさ 永久に日の当たらないエリアがあるとして
内側から光ってつらぬけばいい。宇宙でいちばんさみしい生き物はどこ?夢の中で会ったな
いやあのデパートのこども?うまく喋れないんだね
花は枯れるからいくら愛してもいいよ。きみが枯れないのなら。君は枯れないけれど枯らそうと思えば枯れるよ。ほんとうはだれも枯れないけれど 枯らそうと思えば枯れるよ。
あなたが枯れるときわたしもいちどちゃんと死ぬのだ、と言う。言ってはいけない言葉であるから決して言わない。あの花も、あの花も、あの花も、あの花も、わたしへいきに見えていた?光っているから。
ううん、シャッタースピードをあげて よくみてごらん
ほんの数コマのあいだ
光の断末魔がうつっている
わたしは毎秒死んでいる。
だれかの尊厳が死に絶えるとき
わたしはいっしょに死んでいる
繰り返し繰り返され繰り返しても初めのように
まったくおなじ量の血をながして
これがまた光っているから
ただわたくしが瞬いたように思うかな
それは、よかったな
君にわたしの痛みがみえなくて
あ、瞬いたな、と言って
すこしうれしくなって
帰路につく
それで、わたしが死んだ数だけ
誰かがすこし、夜空を見上げて
あ、瞬いたな、と言って
愛する人と手を繋ぐ
すべての人をあいしているよ。
すべてのあいしている人たちに
血しぶきをかけることなく
光の粒として
声を殺して死ねてよかった
なにもしらなくていい人は
なにもしらなくていいよ。
2022年10月,京都
本当の意味であなたがたと共にいたいから、私ここであなたがたと笑っていてはいけないんです。あなたがたが日々の繰り返しの中で足を取られて行くことが出来ない、ほんとうは行きたかったはずの場所まで、今暖かいこの手を離して、一人で行って、そこから何が見えるのか、そこにどんな花が咲いているのか咲いていないのか、ゆびがどんなふうに湿るのか、まつげに結露する光の粒の色合いも、覚えてきて、あなたがたに見せるために生きているから。ほんとうのお別れが来ないようにわたしはするから。何百年後も残っていく、肉体が滅びても作品は残っていくわけで、永遠があることを私は知っているけれど、きみは信じていないだろうから、ほんとうに永遠になることで最期にきみを黙らせようと思っています。愛の存在を、君は信じていないだろうから、私が愛として語り続けることで、目に見える愛として、読むことの出来る愛として、繰り返し確かめることの出来る愛としてどうしたって証拠を残していくから、愛なんてこの世にないなんて、もう言えない君にわたしが作りかえようと思います、私はそれをするために生まれてきたから、全ての人に使命があるとは思わないけれど、わたしは生まれるずっと前から、愛として、生まれるも死ぬもない世界で、ただ光ることを、光ることを、光という役を、割り振られたのだから。
バスの座席に座っている人が、席を譲ろうとしながら、「なぜ、泣いているのですか?」と、わたしに尋ねました。わたしは、「詩人だからですよ、世界というものの在り方を明朝体に焼く途中、どうしたって目から涙がでてゆくんです。なに、大した事ではないですよ。皆この水が流れる管をとおすために、泣きながら生まれてくるんですから。」と、言いました。
四条通りのアーケードの街灯が一斉に瞬きしながら点灯するときをみました。
ピュリタンは私一人なのですか?わたしが触れたいと思っているあのさみしい永久の竜はわたしなのですか?
そこでしか見れないものがあるとか言う、そんなのはせいぜい数年で充分なんだ。ある構造下における生体反応のパターンを得ればいいのだから、私たちは頭がいいんだから「その状況下でしか見れないもの」の本質自体はもうわかっているんだよ。その上で、だれもが、そこから出ない選択をしていく。
そのレベルにとどまらないと届かない層がいるかもしれない、だけどわざと降ってあげることは施しなんだ。だれかに施しをしてやろうという心は、施しをもらおうという心とまったくおなじだ。それが悪いわけじゃない。ただ最善ではないというだけ、私は世界でいちばん寂しい生き物のところへゆく。ものすごい雪がふっている。
ありがとうございます!助かります!