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つながる短歌

SNSで日記のような俳句を読み続けるMOMOさんがいる。MOMOさんとの交流の中で生まれた短歌が増えてきたので、まとめておきたいと思う。
自分一人では歌えない歌ばかりで、人との交流ってすごい。


海へ跳ぶ大陸知らぬ白鳥を
みながらみえぬものを信じる

うみへとぶ
たいりくしらぬ
はくちょうを
みながらみえぬ
ものをしんじる

「みえぬものを信じる』っていいフレーズだなぁと思い、自分が見えぬものを信じる時、信じたい時、信じなければいけない時ってどんな時なんだろう?と考えるうちに付句してできた一首。
大陸よりも大海の方が良かったかな?と迷う。

明日こそ、明日こそって言いながら、
最後の一羽凍死しする俺。

あしたこそ
あしたこそって
いいながら
さいごのいちわ
とうしするおれ

その後のやり取りの中で作った一首。
初めてのことに飛び込んで行く勇気ある人々を眺めながら、最後まで未知を恐れて現状維持を続けてどうにもならなくなる自分の姿を詠む。


日常が終わる時まで薄氷の
上を歩くは一人か二人

いっそ水面を行くか?

にちじょうが
おわるときまで
はくひょうの
うえをあるくは
ひとりかふたり

薄氷の上を歩く時、一人の方がリスクも少なく安全だろう。
でも、二人で歩きたいのだ。
二人でなら薄氷の上へと歩き出せるのだ。
忘れていたり、見ないふりをしているけれど、日常生活は常に薄氷の上を歩くようなもの。
一人で歩けるほど私は強くない。


吉報を開けて喜ぶ暇もなし
去年のコート富くじは待つ

きっぽうを
あけてよろこぶ
ひまもなし
きょねんのこーと
とみくじはまつ

吉報は届いているのに忙しくしていていたり、今の生活に追われたりして、喜べない、楽しめない、そう言うことってあるよなぁ。
落語の「水屋の富」などが頭をよぎり、同じ内容を自分なりに詠んでみる。
笑うべき時に笑い
喜ぶべき時に喜ぶ
後でゆっくり笑ったり喜んだりは、難しかったり、手遅れだったり、変質してしまったりする。


懐手して振り返り帰り道
風吹くままに春待つ柳

ふところで
してふりかえり
かえりみち
かぜふくままに
はるまつやなぎ

「懐手」って言葉、すごくそそられる。
色々な意味に感じられる。
その全部を崩さずに付句できないかと頑張ってみた。


赤切れの絆創膏でリズム取る
屋根のスネアは陽射しに踊る

つららの溶けるリズム

あかぎれの
ばんそうこうで
りずむとる
やねのすねあは
ひざしにおどる

予想できないリズムに翻弄されているのも悪くない。
傘を叩く雨粒や、トタンに垂れる水音のリズムは不規則で、しかし不快ではない。
降りかかる幸福や不幸も予測できない周期でくる。
あるがままに、あまり先を予想しすぎずに。


足寒しことを忘れる長電話
わかることより
かたりあうよる

あしさむし
ことをわすれる
ながでんわ
わかることより
かたりあうよる

会話するって、言葉で意味を交換してるって思いがちなんだけど、長電話した時って何を話したか覚えていないことが多い。
交換した意味に価値は無くて、交換自体に価値があったんじゃないか?
そんなことを感じた句だったので、それを強調する付句をした。
くどいかもしれない。


猫の恋言葉なしではどう伝う
嬰児の愛は肌からの熱

熱、香り、視覚

ねこのこい
ことばなしでは
どうつたう
えいじのあいは
はだからのねつ

会話は意味だけじゃ無くて、交換そのものにも価値がある。
交換のしかた、伝わり方にも価値があるんじゃないだろうか?
言語によるものだけでは無く音程や響き、温度や柔らかさ、つむじの匂い、その姿、五感で交換をしている。
言葉が話せない赤ん坊との会話を思い出しながら付句した。


MOMOさん側から見たやり取りをPodcastで。

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