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2023年6月の記事一覧

桃源枕 ⑤  桃子の話

桃源枕 ⑤ 桃子の話

「松阪牛がお腹いっぱい食べたいの」

試しに目覚めた安西くんに言ってみた。
彼は、恍惚とした表情で
「まだ、松阪牛食べ放題ができるほど、僕、夢のコントロールができていません」
とそう言ってから、私の頬に手を伸ばした。

安西くんの夢の中で、私は幾度か彼に抱かれてしまっている。
当然といえば当然の馴れ馴れしさであるが、いいか安西、現実ではまだ、私たちは恋仲になっていないし、何より「好きだ」と告白され

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桃源枕 ④  PEACHの話

桃源枕 ④ PEACHの話

「松阪牛が食べたい、って言うのは復讐か何かなの?」

モニタリングを終えた桃子が、眉根を寄せながら言う。

例えばワタシが松阪牛一族の末裔であるならば、復讐と言っても間違いはないのかもしれないが、ワタシと牛に関係性は全くないし、松阪牛のおかげで命を繋いだ覚えもないので、これを復讐と呼ぶには全く相応しくないのだが、大きな流れとして捉えれば、これは復讐になるのかもしれない。

モニターの向こうに、3台

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桃源枕 ③ Cの話

桃源枕 ③ Cの話

「松阪牛食べたい!」

桃介がそう言った時、僕は顔をしかめるしかできなかった。
「どこで覚えてきたの?松阪牛なんて」
今や、松阪牛どころか、牛の存在が幻だ。親世代はみんな牛肉を食べたことがあるらしいが、牛のゲップが温暖化を促進させるとされてから、あれよあれよとその数を減らされ、ついには幻の動物となってしまった。
僕は、牛の話を聞くだけでいつもちょっと切ない。子牛が売られるドナドナの歌が切ないのも、

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