中二の春【懐】
#ショートショート
※毒にも薬にもならないお話
毎年今日この日は必ず
連絡をくれる親友がいる
中二からの付き合いだ
もうかれこれ35年以上になる
出会いは最悪だったのを
今でも覚えている
出会い
転校生同士というのもあり
最初から知り合いではなかった
数ヶ月学校に通ってから噂を耳にした
とてつもなくサッカーが巧いやつがいる
そいつがなんと同じマンションに住んでいる
下駄箱で偶然居合わせた時に
声をかけてみた
「サッカーうまいんだってね」
簡単な挨拶程度の言葉を選んだつもりだ
その時のあいつの返事は
「うっせぇばか!」
面喰らいはしたが気にしなかった
気性の荒いやつだなとだけ思った
出逢い
うちの中学には残念ながら
サッカー部がなかった
運動神経のいいやつは
野球部と陸上部へ吸い上げられていった
それでもサッカーが好きなやつは
放課後に集まって公園や
大学のグランドを借りて
球を蹴るしかできなかった
中二の春
たまたま参加した放課後の
草サッカーでやつと同じチームになった
あの強烈な一言を喰らって以来
話もしたことがなかった
キックオフ
サークルを挟んで左側にあいつ
右側には私でボールを蹴り出す
人の間を縫うよにパスが通り
あれよと言う間にゴール前
ほぼ二人で運び中学生にしては
大きなゴールポストだ
余裕でシュートを蹴り込んだ
それからは覚えてないくらい
パスは通り続けて
ゴールを量産していた
親友
私はどちらかというと内向的で
運動神経が特別良かったりはしない
やつはどちらかというと友好的で
喧嘩っ早いが男同士の仲間も多い
中二では同じクラスになった
サッカーの件以来
なんとなく遊ぶ回数も増え
クラスに集まったメンバーも
学校でもやんちゃで活発な
男女が集結していたから
控えめな私でも
楽しかったのを覚えている
当時は10クラス以上あって
三つ上の先輩が最悪の世代で
窓ガラスにはガムテープが貼られ
授業中も常にバイクの音が騒がしかった
その反動で我々の学年は
軍隊主義的な支配教育で
男は全員坊主
姿勢ひとつ
無駄口ひとつで
先生の拳が飛んできて
流血で早退は日常ごとだった
そんな中
お互い不良でグレてはいなかった
ただ抑圧への反骨精神は強かった
波長が合うのに理由はいらない
我が家が早々と離婚を済ませ
夜が自由になると
音楽やラジオを聴いたり
ファミコンやったり
夜中の街を探索したり
同じマンションの強みを活かして
お互いの部屋を行き来した
遊びまわった
それをひたすら一緒にしてきた
それが親友というものなんだろう
この曲もあの当時流行っていて
耳にずっと残っている
岡村靖幸だった
会わずとも離れない心
会えばその頃のままに
失わない絆
四十九を振り返る春