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トコラ版曾根崎心中 #5 金を貸したいきさつ

近松門左衛門作 =曽根崎心中=
を現代語訳・・・というか、近未来SF化して上演を試みています。

場面ごとの上演テキストを順次公開しようと思います。
現代語訳に相当するものと、
原作に登場しない人物のものとあります。
引用した原作の場面を、下に原文引用として記載しています。

「トコラ版そねざき心中」については、
作品紹介記事をご覧ください。

トコラ版曾根崎心中 #1 作品紹介


金を貸したいきさつ(徳)

うん、そうなんだ。早く返したかったんだけどね。
社長との約束が明日だし、大金を持って歩くのもしんどくってサ・・・。
こっちに戻ってきた日・・・かなあ。クヘージにバッタリ出くわしたんだよ。ホラ、月進オイルの息子の。
あれ、知ってたっけ。
そのクヘージが、先月の末までにど~~~~~しても、三千万必要だって泣いてるんだよ。手形が落ちないって。三日には絶対返すって、わあわあ泣くんだ。
クヘージとは幼なじみで、付き合いがめっちゃ長いけど、
そんな姿見たことなくってサ。
もちろん、文書は作ったよ。判も実印を押して。
最近、印影のデータが見つかって新しく作ったんだって。喜んでいたよ。
・・・・、いや・・・、まだ・・・。
三日に会う約束してたんだけど、来なくってさ。
会社に電話してもいつもいなくて。忙しい奴だからサ
俺も取引先まわったりして、今日になっちゃった。
だいじょうぶだよ!
俺の話、本当に親身になって聞いてくれたんだ。いい奴なんだよ。

=曽根崎心中 徳兵衛長話 生玉社内の場=
(徳兵衛)
ヲゝ、さう思ふて気が急くが、そなたも知ったかの油屋の九平次が
跡の月の晦日《つごもり》たった一日入ることあり。三日の朝は返さふと一命賭けて頼むにより、七日まではいらぬ銀。兄弟同事の友達のためと思ひて、時貸しに貸したるが、三日四日に便宜せず。昨日は留守で逢ひもせず。今朝尋ねふと思ひしが、明日切りに商ひの勘定しまはんと得意廻りて打ち過ぎたり。晩には行って埒明けふ。あいつも男磨くやつ。をれが難儀も知ってゐる。如才はあるまい。気遣ひしやるな。ヤアおはつ。

近松浄瑠璃傑作集 上巻 (大日本文庫)
近松門左衛門 著, 高野辰之 校訂
春陽堂





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