「吸えた」歌詞考察
今、息してるの?
今、吸い方を忘れた
息っていうのは 吐いたら自然と入ってくるよ
分かった じゃあ吐いてみる 「はぁ〜 スゥー」吸えた
安本彩花・小林歌穂による楽曲「吸えた」は、伝えたいことを「呼吸」という誰もがやっている行動に例えることで大衆に、分かりやすく伝わる曲になっている。大正童謡の「かなりや」と似ている曲だと考えられる。
息というものは、生きていれば無意識のうちに当然行うものであって、やり方を忘れるわけがない。しかし、この曲の登場人物は息の吸い方を忘れてしまった。これは、自分のやりたいことを見失って人生を迷ってしまっている人を表しているのではないだろうか。
人生の意義、それは人それぞれだが、学校では教わらない。皆自分で探さなくてはならない。だけど、分からなくなってしまうことだってあるのだ。それをこの曲では「呼吸」に喩えて伝えている。
この曲の特徴として、歌詞が会話のようになっている。息の吸い方を忘れた登場人物は、もう一人の登場人物に吸い方を教わっている。生きる意味を見失ってしまったら、自分で抱え込むのではなく、他人をもっと頼ることで新たな道を見つけ出せることを示唆しているのだ。
また、吸い方を忘れた人は、アドバイスに反発することなくすぐに実践に移している。他人の言うことを間違っていると思わずに、一度でも試してみることが重要だと伝えているのだと考えられる。
この曲の大事なポイントは、息の吸い方を忘れた人物に対してもう一人が「吸い方」を直接教えたのではなく、「吐いたら自然とできる」ことを伝えている点である。目標に辿り着くまでの道は一つとは限らない。さまざまな道を模索して、自分にとってよりよい方法を探すことが、最も大切なのだと作者は伝えたかったのだろう。
そして、この曲では「今」を二回文頭に置いている。それは、「現在」というものを強調したかったのだと考えられる。大切なのは過去でも未来でもなく現在であることを示しているのだ。
以上のように、楽曲「吸えた」はそのポップなメロディーからは考えられないような深い歌詞でその人生観を描いているのである。