「宇宙戦士バルディオス」全話レビュー(5)甦える復讐者
あらすじ
アルデバロンの猛攻で廃墟と化したフラレンス。祖国と家族を失った技師アランは敵討ちのため、月影長官にメカで出動し戦わせてくれと頼み拒否されるが、キャタレンジャーで発進してしまう。
Aパート:メガドーザー登場、フラレンス壊滅、技師のアラン発進
Bパート:引き渡されるアラン、裁判結果、メガドーザーとの戦い
コメント
アバンタイトル、今回はナレーションが入り、はじめて「アルデバロン」の説明があった。これはSー1星の「亜空間部隊」の名称だというのである。以降、敵軍については基本的に「アルデバロン」と表記、敵の異星人についてはSー1星と表記することとする。
今回もアバンタイトルからいきなり敵メカが大暴れし、熱戦で戦車を溶かしたり市街地を爆撃するなど被害は甚大である。アフロディアは「次はフラレンスを攻めよ」と命じるが、第3話で説明のあった侵攻作戦、重要ポイントを次々に叩く、を忠実に実行している様子が伺える。まずは重工業地帯を叩いていく方針だという。
ここでいきなり登場するのが、世界連盟から派遣されている、フラレンス人の技師アランである。第4話までたっぷりかけて、主役ロボットに主人公が乗るまでを描いたことで、今回からある意味、必ず「合体して敵を倒す」という定型パターンの流れに乗っていくわけだが、唐突に登場するゲストキャラにやや戸惑う展開である。
しかも彼は、出動命令の出ているマリンに「パルサ・バーンに乗せてくれ」と無茶なお願いをする。なんでも、母国に残る母と妹を助けたいのだという。いくらなんでも、会って間もない人物にそんなことを頼まれて、OKを出す者はいないだろう。マリンはその点、異星人ながら常識的で「月影長官の許可を得てくれ」と応えるにとどめた。
しかしその出動は見合わせとなる。月影長官によれば、フラレンスはすでに廃墟と化してしまったというのだ。泣き崩れるアランに、任務を忘れてはいないか、と問いただす長官。アランは仇を討ちたいと申し出るが、君は技師なのだ、戦闘隊員ではない、と言い放つ。
ここから、ブルーフィクサーには「世界連盟」なる上位組織があること、月影長官をはじめとするるメンバーはみな、祖国を捨てる思いで馳せ参じていることなど、その背景を知ることができる。
それで、このアランという技師の気持ちが治まるわけもなく、予想通り彼は次の敵襲があった際、出動命令が出る前に勝手にキャタレンジャーで発進してしまう。
普通なら、これで敵メカにコテンパンにやられるところを助け出され、3機が合体して敵をやっつけめでたしめでたし、戦うのは俺たちに任せろ、アラン、君は技師として支えてくれ、で一件落着となるだろうし、それが第5話ぐらいにはちょうどいい展開なのだろうと思うのだが、そうはならないのが本作の面白くも厄介なところである。
前半でアランはあっさり救出され、後半は一体どういう展開かと思いきや、なんと彼は無断出撃により命令違反を犯したとして、世界連盟に引き渡され、身柄を拘束されてしまうのだ。暴れまわるメガドーザーを放置して、舞台は法廷?へと移っていく。
母と妹を殺された、その仇を討ちたいというアランの話に同情を禁じ得なかったマリンは、彼が処刑されるかもしれないというその処遇に納得がいかない様子である。そんなマリンに、ジェミーは、クインシュタイン博士が連盟に行っていること、そしてきっとアランは無罪になる、と期待を持ってはなす。しかし、連盟はアランに死刑の判決を下した。
その判決を聞いたマリンはパルサ・バーンで出て行ってしまう。その行き先は、世界連盟本部であった。ここからが今回のハイライトである。マリンは本部から出てきたクインシュタイン博士と対面し、再び、パルサ・バーンで出撃するのかどうか、戦う姿勢を問われるのである。
今回のタイトルは「甦える復讐者」。 母と妹を失った技師アランが「復讐者」に当てはまることはわかるが、彼がこの話の中で甦るわけではない。ただ「いつか平和が戻ったとき、甦る」という希望を最後に残すラストにされていることに、意味があるのだろう。唐突に登場した、なんの背景もわからないアランというキャラクターに感情移入する間もない展開で、やや視聴者を置いてきぼりにしたまま話が進む感じが否めず、果たしてこのテーマが第5話という序盤にふさわしかったのか、疑問を持ってしまったが、本作がやがて迎えるラストを知ったあとでは、「いつか平和が戻ったとき」という希望の光をここで語っておきたいという思いが製作者にあったのかもしれないと感じた。
キャラクター紹介
アラン
世界連盟からブルーフィクサー基地に派遣されている技師。フラレンスの出身で、アルデバロンの攻撃により母と妹を失う。首にかけたロケットペンダントに家族の写真を入れ、家族思いであることが伺える。無断出撃で死刑判決を受けるが、クインシュタイン博士の陳情により冷凍刑とされた。
メカ紹介
透明円盤
アルデバロンの誇るヤラレメカ。クラゲを連想させるスケルトンタイプの戦闘機で、毎回大量に飛来し大量に撃ち落とされるが、亜空間への突入能力を持ち、ブルーフィクサーの兵器以外では歯が立たない。乗員がいるのか無人飛行なのかは今の所不明である。
メガドーザー
超巨大ブルドーザーとでもいうべきメカ。2本のアームを持ち、頭部から熱線を放射してすべてを溶かしてしまう。強大な破壊力を誇り、瞬く間にフラレンスの都市は壊滅してしまった。しかしマリンが操縦するバルディオスの捨て身の攻撃に太刀打ちできず、あっという間に最期を迎える。
今回のスポットライト:マリン VS クインシュタイン博士
おれも今ではブルーフィクサーの一員だ。アランと同じく、
処刑してもらおうじゃないか。
一人の人間を平気で殺しておいて、大勢の人間をおれに救えっていうのか!
アランが死刑と決まったマリンが取った行動は、パルサ・バーンによる無断出撃だった。今まさに、一致団結して侵略者と戦おうというそのとき、家族を殺された悔しさを抑えきれず、無断出撃してしまったアランに対して、なんの温情もなく法の裁きを下す組織の論理。異星人のマリンは、その冷たさに異議を唱えるべく、行動を起こした。ブルーフィクサーの一員となったマリンが、アランがしたように無断出撃したのだ。同様に法の裁き受けるべきではないのか、と。
世界連盟本部で彼を出迎えたクインシュタイン博士は、彼に、パルサ・バーンで出撃するように言う。「一人の人間を平気で殺しておいて、大勢の人間をおれに救えっていうのか!」と憤懣やるかたないマリンは、なおも「行かない、といったら!」と反発するが、そんな彼の心の内にあるものを、クインシュタイン博士は見抜いていた。そして、こう言い放つのである。
一人の人間を命をかけて救おうとしたあなたが、
大勢の人間を放っておけますか。
マリンはそんな彼女を「冷たい人だ」と突き放すが、マリンの中に、ただ父の復讐をしたいという思いより、さらに大きいものがあることを信じていなければ、言えない一言ではないだろうか。クインシュタイン博士は、マリンが取った行動によって、信じる思いは確信へと変わっただろう。それは、異星人でありながら地球のために戦うマリンを、のちのちまで支えるものとなってゆくのである。
評点
★★★
深いテーマだが、本作打ち切りで、結果的にアランが甦らなかったので評価が難しい。