王子様でいたい少女をお姫様にしないで
王子様系女子というカテゴリがあります。
古くはオスカル様から天上ウテナさん、菊地真ちゃんに剣城あきらさん。今は有村麻央さんが人気ですね。
王子様女子が王子様でいる理由も様々あります。
家の決まり事で王子様を演じている人、周囲に求められて王子様でいる人、それから「王子様でありたくて王子様をしている人」。
私が話したいのはこの「王子様でありたくて王子様をしている」女の子についてです。
女の子は常に女の子であるというだけで「かっこつけているのは照れているだけで、本当は可愛いものが大好きなはず」もしくは「王子様として手を取りたいお姫様は自分自身なのでは」と言われ続けます。
本当にそうな場合もあると思います。しかし、本気で王子様に憧れている(なりたい、という意味です)女の子だって存在します。
何なら現実ではその場合が最も多いのではないでしょうか。
私もその一人です。
私は男装カフェでバイトをしており、TikTokやInstagramのコメントも含めありがたいことに褒めて頂くことがあります。
やっぱり「かわいい」よりも「かっこいい」の方が嬉しいですし、「かわいい」と思われているのであればもっとかっこよくなれるよう工夫しないと、と思います。もちろん「かわいい」と言っていただけるのも嬉しいです。少なくとも好意的な感想を抱いて頂けていますから。しかし、お姫様として扱われるのは少し違うなぁ、と思う時があります。
これはお店に限らずプライベートでもよく言われることなのですが、「やっぱりはじめも女の子だからお姫様扱い欲しいよね?」と、要約ですが。
この言葉を聞くお相手は大抵が年上の方か男性の方です。
髪を短く切って、メンズ服でかためて、胸を潰して、身長を盛って、それでも私はお姫様でいたそうに見えるのかな、と思うと少し虚しくなります。
もちろん相手が本気で思っている訳ではないことはわかっています。大方が相手の願望であることを知っています。やっぱり女の子はお姫様であるべき、という観念が世界には残っていて、それを否定する私は相手にとって道理に反しており、なので強がりか憧れの履き違えとして捉えられてしまうのでしょう。もしくは「かっこいい女の子が実はかわいいもの大好きであって欲しい」という所謂ギャップ萌え願望、これは男性に多いんじゃないかなと思います。
実際に普段はかっこいいけれど実は可愛いものが大好きな女の子キャラはたくさんいますし、かっこいい女性キャラに実は可愛いところがある二次創作は山ほど溢れています。
例えばアイドルマスターの菊地真さん。
彼女はかわいいアイドルに憧れていますが、王子様であることを求められそれに応えながらアイドルとしての在り方を模索しているキャラクターです。
メタ的なことを言ってしてしまえば彼女は「実はお姫様に憧れる王子様女子」願望を体現したキャラクターであり、作中世界では「かっこいい女の子の王子様らしさ」願望を体現させられていたアイドルです。
作中に焦点を合わせた時に、私は彼女に王子様を強要することができません。菊地真というアイドルにはやはり可愛くあって欲しいです。
同じアイドルマスターシリーズに彼女とは真逆とも言えるキャラクターがいます。学園アイドルマスターの有村麻央さんです。
彼女は「王子様に憧れながらも可愛さを強要されてきた」アイドルです。
作中では周りの生徒達から「リトルプリンス」と呼ばれながらも「可愛い格好をすればいいのに」とも言われています。(この場合「リトルプリンス」という呼び方も残酷なもので、彼女は舞台の男役に憧れながらもそれには身長が足りないのです。)
メタ的には「女の子が演じる王子様からしか得られない栄養素」、作中では「可愛い女の子はお姫様でいて欲しい」願望を体現するアイドルです。
菊地真さんも有村麻央さんも、現実世界での需要と作中世界での需要が反転すれば望み通りのアイドルとして在れる(そんな単純な話ではありませんが)少し悲しいキャラクターです。
しかしやはり菊地真さんに王子様であって欲しい旨のツイートは多く見かけますし、有村麻央さんが可愛い格好をしている二次創作も山ほど見かけます。
結局かっこいい女子にはかっこよくあって欲しいし、それと同時にかっこいい女子のかわいい姿はたまらないものなのです。それだけが理由では絶対にないと思いますが、端的に言えばそういうことだと思います。
しかし菊地真さんのかっこいい二次創作や有村麻央さんのかわいい二次創作はいくつあっても構わないと思っています。
彼女たち自身がそれを見ることは今のところないですから。
ただ、現実の人間は違います。
キャラクターでない現実の人間は、自分の目に届くように、耳に入るように届けられた言葉を認識せざるを得ません。
わがままであることはわかっています。言葉にすること自体がかっこ悪いこともわかっています。
しかしどうか、現実の誰かが王子様であろうとしている時は王子様でいさせてください。
勿論逆も然りです。
誰かがお姫様であろうとしている時はお姫様でいさせてあげてください。
それが一番嬉しいはずですから。