野川たま

ひっそりと本にかかわる色々をやっています。「やみなべ文庫」にて、著者名・タイトルを隠した文庫本を販売中(現在休止中)。https://tobirabooks.theshop.jp

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最近の記事

高架下の小さな古本屋さんをはじめました

    • 部屋の本棚(その2)

      • 「平成の名小説」全レビュー(3)佐伯一麦「行人塚」

        「新潮」別冊「平成の名小説」に掲載された平成の30年間を彩る短篇小説・エッセイを、順に紹介・レビューしています。今回は佐伯一麦「行人塚」。例によって気になる箇所を引用してから内容と読みどころを紹介したいと思います。 お父さんはな、と私は娘に話しかけた。運動会のときにここで皆の前でおしっこを洩らしちまったことがあるんだ。娘が私の方を見た。その顔に向かって私は続けた。閉会式の時だった、皆が並んで先生の話を聞いているときにどうしても我慢できなくて、自分の足元だけに水溜まりが出来て

        • 「平成の名小説」全レビュー(2)山田詠美「晩年の子供」

          「新潮」別冊「平成の名小説」に収録された全作品を順に紹介・レビューしています。2作目は、山田詠美「晩年の子供」。「新潮」平成2年1月号に掲載された作品ですね。今回も、印象的な一節を引用したうえで、物語の紹介と読みどころを書いていきます。 秋は、いつのまにか、匂いすら放っていた。橙色の柔らかな陽ざしは、私の瞳ばかりでなく、鼻までも刺激して、私をたまらなくさせた。落ち葉を踏みしめながら、私は心の中で叫んだ。わかったから、あなたが私の側にいるのは、よくわかっているのだから。私は、

          「平成の名小説」全レビュー(1) 石原慎太郎「落雷」

          令和元年7月に発売された、「新潮」別冊の「平成の名小説」。平成のあいだに文芸誌「新潮」に掲載された短篇小説とエッセイのなかから合計55作品を選りすぐったアンソロジーです。この30年に活躍してきた大ベテランから若手まで、幅広い作家の作品が一気に見わたせるお得な一冊。そこからはたして、平成という時代の文化や社会が見通せるのか、はたまたこれらの文学作品は時代を越えたなにかを描き出しているのか……。 というわけで、不定期になりますが、この本に載った全作品を、掲載順にちまちま紹介・レビ

          「平成の名小説」全レビュー(1) 石原慎太郎「落雷」

          おばけの短歌(野川たま)

          白線を選んで歩く少年はおばけの白に憧れている 生きていた頃の記憶も遠のいてふたしかな濃さで揺らめくおばけ 小説におばけが登場するたびに青い付箋を貼りつけてゆく 差し出した手は握り返されずおばけをすり抜けてきみはゆく 日中のおばけは雲に擬態すと論文に書き却下されたい 服を脱ぎ電気を消して目を閉じてわたし今ほぼおばけと等価 おばけでも見たような顔しちゃってと言うきみの肩におばけを見てる 雑踏の貌はたがいに興味なくおばけの気分でS字にあるく 幸福な夢に出てくるときく

          おばけの短歌(野川たま)

          部屋の本棚(その1)

          部屋の本棚(その1)

          書評マンガ「今夜も読書会!」

          第1話「この世でいちばん美しい水死人」G. ガルシア=マルケス おすすめの本を読書会形式で紹介するマンガ連載をはじめます。古典から新刊まで、海外文学、日本文学、ノンフィクション問わず、おもしろい本だけを取り上げます。描きはじめたばかりでお見苦しいところもありますが、だんだん慣れていくと思いますので、どうぞよろしくお願いします(いちおう、設定はフィクションです)。

          書評マンガ「今夜も読書会!」