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日記(早朝の映画、読みたい本リスト)

眠い。夜中の2時に目覚めてから眠れなくなり、4時過ぎまで布団の中でゴロゴロ。

無意味な独り言が頭の中をぐるぐると駆け巡るので、眠るのを諦めて1階のリビングにおりて、映画を観ることに。

早朝4時からの『南極料理人』。今から10年以上も前、知り合いが絶賛していたことを思い出す。香り立つような食事のシーンが最高で、なかでもおにぎりの佇まいが素晴らしい。ツヤツヤと光る米粒、ゴロリと大ぶりなのに品があって、愛らしいフォルム。勝手に味と香りが私の中で立ち上がる。クンクンといつまでも匂っていたくなるような芳しい海苔の香り、口に入れたときの絶妙な塩味、これ、絶対うまいおにぎりだわ。

おにぎりをむさぼり食う俳優たちの演技も美味しさを増し増しに演出する。私は早朝から食べてもないおにぎりに身も心も満たされた。

……と、私の貧相な食の描写はさておき、先日図書館で借りた開高健の『魚の水はおいしい 食と酒エッセイ傑作選』におさめられた食の描写(筆致というべきか)には圧倒された。

体験していない食体験が自分の中に立ち上がり、五感に訴えてくるから不思議なのだ。以下はヴェトナム滞在中のエッセーなのだが、私の目の前でその光景が繰り広げられているかのようでいて、香り、手触り、舌触り、味のすべてを私も体験しているような気がしてしまう。

たとえば田舎を歩いていると、街道筋でときどきパイナップルを山と積んで売っている。これがたいそう安く、みごとに熟していて、部屋のすみにころがしておくと香水瓶の栓をぬいたように甘く芳烈な香りがゆらめく。街道の子供は包丁や山刀で器用に外皮を剥きとり、四つに割り、たくみに刻みめを入れたうえでわたしてくれるが、そのときさいごに塩とトウガラシ粉をまざたものをツルリと一刷き塗ってくれるのである。(中略)じっさいそうすると汪溢(おういつ)する野生の味、土の味に微妙な変化が出てくる。
『魚の水はおいしい 食と酒エッセイ傑作選』

そして私が特に好きな一節が以下のエッセー「マジェスティックのマティーニ」内の文章。私はベトナムには行ったことはないけれど、街の温度やにおいが身体にまとわりついてくるよう。

ドライ・マティーニのグラスを持って、窓ぎわにすわると、グラスの肌にたちまち無数の霜の微粒ができて、小さいけれど澄明な北方の湖が霧にかくれる。空は暑熱と湿気でとろりとうるみながら、炎上する緞帳(どんちょう)のように輝き、無数のコウモリとツバメが夕焼けのなかをとびまわる。黄いろい河をつぎつぎとウォーター・ヒヤシンスのかたまりが流れていき、河岸では子供たちが魚釣りをし、スルメやエビ・エンベイの屋台があちらこちらで夜の支度にとりかかり、対岸は蘇鉄やマングローヴの低い長壁が水ぎわにずっとつづいているが、その背後には原野がひろがっていて、夕霞にかすんでいる。
『魚の水はおいしい 食と酒エッセイ傑作選』

開高健の作品は実はこれまで読んだことがなく、たまたま図書館で立ち読みして「こ、これは…」と心をつかまれ読み始めた。こういう文章をたんまり読んで豊かに飲んで食べて生きていきたいと思う。


これから先、読みたい本をリストアップしてみた。

フェミ系の本は古典を一通り読んでしまいたいので、『新しい女性の創造』(ベディ・フリーダン著)『第二の性(シモーヌ・ド・ボーヴォワール著)『男同士の絆―イギリス文学とホモソーシャルな欲望』(イヴ・K・セジウィック著)あたりは春までに読んでおきたいなと思いつつ……。サクッと読める、軽い本ばかりではないので悪しからず。

・『昭和の洋食 平成のカフェ飯―家庭料理の80年』 阿古 真理(著)
・『魯肉飯のさえずり』 温 又柔 (著)
・『女から生まれる―アドリエンヌ・リッチ女性論』アドリエンヌ・リッチ(著)
・『ことばは男が支配する―言語と性差』 D. スペンダー (著)
・『ペイント』 イ ヒヨン (著)
・『いつかたこぶねになる日: 漢詩の手帖』 小津 夜景 (著)
・『健康的で清潔で、道徳的な秩序ある社会の不自由さについて』 熊代 亨 (著)
・『この世にたやすい仕事はない』 津村 記久子 (著)
・『この世の喜びよ』 井戸川 射子 (著)
・『迷うということについて』 レベッカ・ソルニット(著)

そういえば少し前に読んでとても面白かった本がある。

みんなの「わがまま」入門』(富永京子 著)

【内容紹介】
“権利を主張する”は自己中? 言っても何も変わらない? デモや政治への違和感から、校則や仕事へのモヤモヤまで、意見を言い、行動することへの「抵抗感」を、社会学の研究をもとにひもといていく、中高生に向けた5つの講義。

子どもの頃から大人になっても「わがままはよくない」って教えられてきたし、少し前なら素直に不満や意見を口にする人はずるくて自己中、空気が読めない奴と排除されることも多かった。でも確かにその場の空気を読まず、非常に軽やかに自己主張する人を見ると、なんとなくモヤモヤしてしまうことってありません? それってなんでだろうって。本書は「私たちがわがままを言えない理由」から探り、「わがまま」を介してうまく人と付き合う知恵みたいなものが記されている。とても読み応えがあるので、興味のある方はぜひ!

では、今日はこれまで。


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