WBC日本代表 湯浅京己のこと語ります
WBC開幕しましたねー!東京ドームでの盛り上がりっぷりをテレビ中継で見て、「やっぱりスポーツいいなあ」と思った人も多いのでは。
けれども普段は野球を見ない人からしたら、30人もいるメンバーの中で誰に注目したらいいの?誰を応援したらいいの?と悩むはず。その気持ちわかります。僕も去年のサッカーワールドカップがそんな感じでした。
でも大会はまだ始まったばかり。「野球はよくわからないけど……」なんて言わないで。今からチェックしても全然遅くないですし、選手たちのことを知ればもっと楽しくなります!今からでも大丈夫!
僕からはWBC初戦の中国戦でも好投した阪神タイガース・湯浅京己投手を紹介します。
■初見で読めますか?名前に込められた思い
湯浅投手の名前は京己と書いて「あつき」と読みます。湯浅投手の名前を初見で読める人はほとんどいないかもしれません。
あつきという名前にはご両親の思いが込められています。「己の力で京(みやこ)を築いてほしい」という願いから京己という名前が付けられたそうです。「己」か「巳」のどちらを使うか分からなくなった人は、ぜひこのフレーズを思い出してください。「己の力で京を築く」!
余談ですが、湯浅投手のご両親は精肉店を営んでいます。のどかな街の中にある穏やかな雰囲気のお店です。お惣菜も充実しているのですが、なかでも甘辛く味付けされたチャーシューが絶品でした。
■クールな顔立ちと内に秘める闘志
湯浅投手といえばすらっとした体格と、小さくて端正な顔つきが特徴的です。爽やかな身のこなしは男性の僕でもかっこいいなって思っちゃいます。投球時に右腕を高く振り上げるルーティンを持っていて、ぜひこれはみなさんにも注目して見てほしい!難しい事は考えず、彼が精神集中してボールを放つ姿を見れば、彼の良さが自然と分かるはずです。考えるな、感じろ。
そんな湯浅投手ですから、性格も爽やかでクールなのかと思われがち。ですが彼の最大の特徴は「ハートの強さ」です。タイガースにプロ入りする前も、最も評価されていたのが度胸や気持ちの強さといった部分でした。相手が自分より格上でも攻める気持ちを忘れない、ピンチになっても向かっていく気持ちを貫く。こういった姿勢がコーチ陣やファンの心を掴んで離さないのだと思います。
湯浅投手のハートの強さ、そして「湯」浅「あつ」きという自らの名前から、湯浅投手はいつしか「アツアツ」というフレーズを使うようになりました。良い投球ができた日は「アツアツなピッチングでした」、ピンチを切り抜けた日は「アツアツでしびれました!」というように。「アツアツ」はいつしか彼を代表するフレーズとなり、ファンの間でも親しまれるようになりました。
■筆者が選ぶ湯浅京己のアツアツシーン3選
ここからは湯浅投手のすごさをもっと知ってもらうために、彼が「アツアツ」だったシーンをいくつかご紹介します。
●湯浅京己のアツアツシーンその①:味方のミスに燃えてピンチ切り抜けた!
(2022年4月6日 対DeNAベイスターズ戦)
延長11回の表、湯浅投手は甲子園のマウンドに上がります。先頭打者にストレートを弾き返されると、ライトを守っていた佐藤輝明選手が打球を後ろに逸らしてしまいます。バッターは悠々と三塁へ。1点取られたら勝ち越される場面でノーアウト3塁のピンチを迎えました。
だけど湯浅投手が強いのはここからです。続くバッターには得意のフォークで空振り三振。打者が思わず膝をついてしまうくらいの落差でした。次のバッターも力ないゴロに打ち取って2アウト。その次の打者は高い打撃技術を持つ佐野恵太選手でしたが、ここもファーストゴロに仕留めてみせました。
3つ目のアウトを取った瞬間、湯浅は感情を爆発させて吼えていました。味方が犯してしまったミスを助けてあげたい気持ちもあったはず。この日のピッチングを境に、湯浅投手のことを取り上げるメディアが増えた気がします。
またこの試合の数ヶ月後、今度は湯浅投手が打たれてしまった場面があったのですが、このときは同じくライトを守っていた佐藤輝選手からのバックホームで走者は本塁でアウト。好守備で失点を防いだということもありました。チームの絆~~~!!
●湯浅京己のアツアツシーンその②:やられた相手に同じボールでやり返した!
(2022年7月3日 対中日ドラゴンズ戦)
どんな相手でも怯むことなく真っ向からぶつかろうとする、それが湯浅投手の最高にかっこいいところです。たとえそれが、痛烈なホームランを打たれた相手だったとしても。
この試合の前の日、湯浅投手は勝ち越しのホームランを打たれて負け投手になってしまいました。プロ入りして初めて1軍で打たれたホームラン。自信のあった高めのストレートをスタンドまで運ばれたホームラン。試合終わり後のミーティングで、湯浅投手はずっと悔し涙を流していたそうです。
リベンジの機会は翌日にやってきました。3点リードで迎えた8回の守り。湯浅投手がマウンドに上がります。先頭打者は昨日湯浅投手からホームランを打ったアリエル・マルティネス選手。前の日にやられた相手といきなり対戦の機会が巡ってきました。
前日打たれた選手との対戦。普通のピッチャーなら「同じようにはやられないぞ」と考えて、攻め方を変えてくることが多いです。けれども湯浅投手は、前と同じボールをもっと強く投げ込むことを選びました。ストレートを投げ続け、結果は空振り三振。湯浅投手は雄叫びをあげました。湯浅投手が昨年打たれたホームランはこの1本だけです。
●湯浅京己のアツアツシーンその③:負けたら終わりの場面で飛び上がった!
(2022年10月10日 対DeNAベイスターズ戦)
その年のプロ野球チームの日本一を決める日本シリーズ。その挑戦権をかけて戦うクライマックスシリーズ(通称CS)に駒を進めた昨年のタイガース。まずはシーズン2位のベイスターズと対戦しました。1勝1敗で迎えた第3戦。勝ったほうが次のステージに進出できます。
試合はタイガースが中盤に逆転して最終回を迎えました。マウンドには湯浅投手、点差はわずかに1点です。たが湯浅投手は同じく侍ジャパンに選ばれた先頭の牧秀悟選手にヒットを打たれます。この日の試合は横浜スタジアムで行われていて、ベイスターズファンは大盛りあがり。完全なアウェーです。その後もランナーがたまり、1アウト満塁の大ピンチを迎えました。湯浅投手が抑えたらタイガースの勝ち、打たれたらベイスターズの勝ち。この頃は今と違って声を出して応援ができないルールだったので、客席から黙って湯浅投手を見ていました。ものすごくもどかしい気持ちだったのを覚えています。
湯浅投手が投げ込んだストレートは相手打者のバットに当たり、セカンドの正面に飛びました。4-2-3のダブルプレーで試合終了。タイガースベンチからは選手やコーチたちが飛び出して大盛りあがり!湯浅投手もマウンドで大きく跳ね上がりました。昨シーズン大きく飛躍した湯浅投手の集大成が、大一番で発揮された試合でした。
窮地を救いヒーローになった湯浅投手がインタビューで発したのは、もちろんこの言葉です。
「アツアツでした!!!」
■WBCで予想される湯浅の出番
WBC初戦の中国戦で、湯浅投手は中継ぎとして起用されました。今後もこの起用法は変わらないと思われます。最終回に投げるクローザーと違うのは、ピンチの場面で起用される可能性がある点です。味方のピッチャーがピンチを作ってしまった場面で、栗山英樹監督は湯浅投手を起用するかもしれません。勝敗を左右する重要な場面。プレッシャーも並大抵のものではありません。けれど、湯浅投手には数々のピンチを切り抜けた強いハートと経験があります。きっとチームを救ってくれるはず!
■度重なる怪我を乗り越えて
湯浅投手はプロ入り前もプロ入り後も怪我に悩まされました。タイガースに入ってからも腰の怪我が再発して、全く試合で投げられない日々が続いたほどです。それでも湯浅投手はプロの世界で活躍することを諦めませんでした。数々の苦難を乗り越えた彼だからこそ、そのピッチングに多くの人が魅了されるのだと思っています。
今回紹介したアツアツシーンは全て阪神タイガースの湯浅投手に関するものでした。湯浅投手のアツアツシーンその④、その⑤が、この後のWBCでたくさん見られて、このnoteを読んでくれたそこのあなたがアツアツな気持ちになってくれたら、僕は嬉しいです。