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熊谷敬宥が叩きつけた挑戦状【2/12 対楽天戦○】

阪神タイガースは春季キャンプ中に「1日キャプテン」を採用している。シーズン中のキャプテンとは別に、各選手が持ち回りでキャプテンに就任する制度だ。投手と野手からひとりずつ選出され、練習前のスピーチやアップの声出しなどを担当する。チームメイトに自分のことを知ってもらうための意図があるようだが、僕たちファンにとってもその選手のことを知れる貴重な機会だ。

この日の1日キャプテンは、投手は新人の鈴木勇斗とプロ5年目の熊谷敬宥が務めた。今年はキャプテンがTシャツに自らの決意などを書き込み、皆の前でお披露目することになっている。
新人の鈴木は自らの故郷である鹿児島の偉人・西郷隆盛にちなんだ「雪に耐えて梅花麗し」と書いた。では熊谷はというと。

「打倒 糸原健斗」

同じ内野手で二塁のレギュラーである糸原健斗の名前を挙げ、皆の前でまさかの宣戦布告。糸原は新型コロナウイルスに感染していた影響で、今日チームに合流したばかりだった。まさか糸原もようやくキャンプに戻って来た矢先に挑戦状を突きつけられるとは思わなかっただろう。

熊谷の試合での役割は主に代走と守備固め。試合終盤に主力選手に代わって出場することがほとんどだった。バッテリーからの警戒が特に強くなる代走で昨季は盗塁を7つ決めた。失敗は1つだけ。守備は本職の内野以外にも外野の守備固めとして活躍。持ち前の脚力を活かした守備で外野の守りを引き締めた。試合の終盤、絶対に失敗できない場面で熊谷は幾度もその実力を発揮してきた。
その一方で打力はまだレギュラーの糸原に及ばず、それが理由で控え選手となっている。それでも昨シーズン、熊谷はプロ入り後初めてシーズンを通して1軍に帯同した。その熊谷が1軍定着を目標にするのではなくレギュラー奪取を目標にしていること、それを本人の口から聞けたことが、なんだか嬉しかった。

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この時期の練習試合は後攻チームが9回表で勝っていても、特別ルールで9回の裏を実施することがある。見ている側も少しお得な気持ちになる。本来なら存在しない9回裏、タイガース最後の攻撃。スタメン出場したM.ロハスJrの代わりに途中から出場した熊谷に今日2回目の打席が回ってきた。

昨シーズンわずか6回しか立たなかった熊谷の打席。でも昨日の練習試合でも良い当たりを飛ばしている。今日はどんな良いところを見せてくれるだろう。
追い込まれてからの6球目。インコースに入ってきたボールを弾き返した。気持ちのいい当たりに乗ってボールは伸び、レフトフェンスにそのまま直撃した。この二塁打をきっかけに、タイガースは2点を奪った。昨シーズンはその足でチャンスを広げた熊谷が、今日はバットでチャンスを拡大した。今年はそんな場面がもっと見られるかもしれない。キャンプ中だもん、どれだけポジったっていいじゃないか。

立教大時代は警備員さんに「電気消すからそろそろ終わりにしな」と言われるまで練習を続けていた熊谷。
1軍の試合が雨天中止になった日は自ら志願して甲子園球場から京セラドームに移動し、2軍戦に出場した熊谷。
今年のキャンプでは連日のように早出して練習に励んでいる熊谷。

爽やかな顔をしているけど、内に秘める闘志は相当なものだ。そうじゃなければ皆の前で「打倒糸原健斗」なんて言わないだろう。

すべての努力が報われるほど甘い世界じゃないことは分かっている。でもこの男の努力はどうか報われてほしい。そう思わせるだけの魅力が彼にはある。

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