オタクは知的財産管理技能士を取れ~教材費ゼロで3級試験に合格する方法~
・自分で判断できるようになるために
トレースはダメ? 動画タイトルの商標化は悪いこと? AIにイラストを学習されない権利? 混沌としたインターネッツでは今日も喧々囂々(けんけんごうごう)学級会が開かれています。楽しいですね。
でも、その多くは声の大きい発信者に追従したり、聞きかじった知識を理解しないままなんとなくの思い込みで発言しているように思います。
お気持ち、もとい素朴理論は否定しませんが、体系的な知識はコンテンツを作り出す人も、利用して楽しむ人も守ってくれます。無用な不安でメンタルをすり減らすことも無くなりますよ。
・どこまでなら許可無く利用していい?
・自分の作品が勝手に使われていたら何ができる?
疑問があれば、まず原作(法律)を見てみましょう。
よく聞く「著作権」だけでなく、商標や意匠、知財のボスともいえる特許法についても知っておくことは決して無駄になりません。
知らなかったでは許されない法律知識、コンテンツを正しく楽しむためにちょっとしたお勉強はいかがですか?
――オタクなら知識で差を付けろ。
・【国家資格】知的財産管理技能士とは
知的財産管理技能士とは知的財産を管理する技能を評価する試験によって公的にその能力を証明された技能士であり、レベルに応じて3級から1級までの区分があります。
技能士は厚生労働省所管の国家資格で、名称独占資格(試験に合格しないと技能士を名乗ってはいけない)ですが、運転免許のように“これがないとできない”業務がある資格ではありません。
資格として役に立つ場面は、採用担当者や取引の相手方に対して知財に関する能力を有していることをアピールする、などがあります。就職に直結!とはいきませんが知的財産についての知識を深めるための入門としては非常に優れた資格ですよ。
・試験について
知的財産管理技能士になるには知的財産管理技能検定に合格する必要があります。
※以下、原則として3級についてのみ解説します。
時期:年3回(3月、7月、11月) ※会場試験のみ
全部マークシートなんだからCBT方式を採用しても良いと思うのですが……。
受験資格:なし
正確には「知的財産に関する業務に従事している者または従事しようとしている者」ですが、この要件で不適格となることはありません。
方式:学科、マークシート(3択) 30問、45分
実技、マークシート(一部記述)30問、45分
筆記試験も実技試験もほぼマークシートのみです。
実技試験といってもペーパーテストのみで面接などはありませんので、単なる事例問題と思ってもらえれば大丈夫です。
記述部分も著作権の保護期間が満了する月日や特許料の金額を手書きさせる程度なので記述の練習や漢字の勉強は不要です。
合格ライン:学科実技それぞれで正答率70%以上
合格率:70%程度
詳細は公式サイトを参照。ちゃんとやれば問題なく受かります。
試験内容
学科試験
1.保護(競争力のデザイン)
1-1 ブランド保護
1-2 技術保護
1-3 コンテンツ保護
1-4 デザイン保護
2.活用
2-1 契約
2-2 エンフォースメント
3.関係法規
実技試験
1.保護(競争力のデザイン)
1-1 ブランド保護
1-2 技術保護
1-3 コンテンツ保護
1-4 デザイン保護
2.活用
2-1 契約
2-2 エンフォースメント
見慣れない言葉が並んでいますが、要は特許権、商標権、意匠権、実用新案権、不正競争防止法、著作権、などの概要と出願手続き及び侵害時の対応ということです。
受験料:筆記6,100円、実技6,100円、事務手数料420円
合計12,620円
筆記と技能でそれぞれ受験料がかかるので合計すると結構高いです。学校や職場に補助金制度があれば活用したいところ。そんな制度が無ければ……なおさらテキストにお金かけたくないですよね?
・テキストは買わなくていい
わざわざこのページを開いているということは教材にお金をかけたくない、あるいはできるだけ安く済ませたい、ということですね。わかります。
さて、買わないなら一体何を使って勉強するのか。
試験内容は大きく分けて2つ、産業財産権(特許や商標)と著作権です。それぞれ司る省庁は特許庁と文化庁。
というわけでページをチラッとのぞいてみると……。
・知的財産権制度入門テキスト(特許庁)
・著作権テキスト(文化庁)
最新年度版を探せましたか?
分量は多いですがこのファイル2つで3級の試験分野はすべて網羅しているといっても過言ではありません。
無料かつ最新版。これ以上の教材は無いと思います。
YouTubeにも解説動画が上がっていたりするのでテキストを一通り読んだらそちらを参考にしてもいいでしょう。
もちろん、この手の試験には公式テキストというものがあって。
https://www.kentei-info-ip-edu.org/gakushujoho.html
それなりの値段(税抜き3,000円)で売っています。
その他にTACや秀和システムからもテキストが出ているようですね。
当然、テキストは要点がまとめてあり、教えることに特化した書籍なので必要があれば購入してもいいと思います。試験会場ではテキストで復習してる人を結構見かけました。
・過去問集も買わなくていい
過去問対策は重要です。問題の出し方や点数配分が理解できますし、何より重要な問題は年度をまたいで繰り返し出題されます。
だから繰り返し、過去問を解くのは非常に大事なのですが……まぁ買わなくてもいいでしょう。
だって試験の公式HPで直近3回分の過去問が公開されていますし。
https://www.kentei-info-ip-edu.org/exam_kakomon.html
足りなければインターネットアーカイブとかを上手く使ってください。
私は、問題演習はアプリでやりました。
もちろん公式問題集もありますので、必要ならさっきのURLを参照してもらえればよいかと。
・合格するために
とにかくテキストを読み込んで過去問を解く。それで十分。どのくらい学習時間が取れるかにもよりますが、一か月もあれば大丈夫じゃないでしょうか。法律の初学者、もしくは暗記に苦手意識がある人は少し多めに時間をとったほうがいいかもしれません。
もっとコツ的なことが知りたい、ですか?
それなら出題者の立場で考えてみるのがどうでしょう。
・問題にしやすいのはどこだろう?
・絶対に覚えてほしいところはどこだろう?
例えば出願に関する期限や権利保護の例外規定、法律の立法趣旨などが考えられるかと思います。
自分だったらこの内容でどこを問題にするか、を考えながら学習すると試験勉強の効率は良くなりますよ。
・試験当日の流れ
webで試験申し込みをしたら当日までしっかり準備するだけ。
受験票の印刷と本人確認書類と筆記用具を忘れないように。
筆記試験と技能試験は別々に行われます。時間は別でも席は一緒。
マークシートは受験番号と氏名があらかじめ記入されています。
マークミスにだけ気をつければあとは実力を出すだけです。
そうそう、“適切でないもの”を選ぶ問題もよく出るので気を付けて。
試験の翌日にはHPに正答が掲載されるので、問題用紙に答えを書いておくと持ち帰って自己採点ができますよ。
合否は発表日以降にマイページから確認できます。また、発表後数日以内に郵送で「合否通知書」と「合格証書」が届きます。
・2級以上は?
2級からは少し難易度が上がるので更に知識を深めたい人は挑戦してみるといいかもしれません。
2級の受験資格の一つに3級合格から翌々年度まで、というものがあるので、知財に関する業務をしているなど他の要件を満たさない場合はその期間が2級挑戦の期限ということになります。詳しい受験資格は公式HPを参照してください。
・最後に
最後に一つだけ、当たり前で一番大事なこと。
「不合格が一番お金がもったいない」
やるからには一発合格、目指しましょう。