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風の頁

ひらひらと、頼りなく風に吹かれて、煽られて、めく
れる頁、めくれる言葉、歌になる言葉、歌が記された
紙片、ただの頼りない、薄いいちまいずつの紙が、そ
こに言葉が記されてあるというだけで、どこか尊いも
ののように錯誤される、たとえそれが、意味を纏った
言葉や、蛙の子のような音の元となるものであったと
しても、それはりかいされ、愛唱され、夢のなかで口
ずさまれることすらある、また風が吹いて、吹き飛ば
すほどでもない、そよそよと、他人のようなよそよそ
しさで頁をひるがえらせ、そのせいで、どこまで読ん
だのか、どこまでりかいの戸口に立たせたのか、わか
らなくなってしまう、すべてのうたはむいみ、あなた
を思う夢精のような白い汚らわしさも、あなたにりか
いされない、無声のような慟哭も、うたになってしま
えばすべてむいみ、日々のなか、くだらないものとし
て処理されてしまう、また風に乗って、いちまいの花
弁のような湿潤が、あるいは枯葉のよう乾燥が、飛ん
できました、ひらひらと、便りもなく伝えようとする
ふかのうな伝達、風に吹かれて、めくれる頁、めくれ
る言葉、めくれる情感、おんなのみにすかーと、男の
禿げた頭部、それらも結局はざんこくにも歌になって
しまう、だから僕等は、それらの風の頁を、めくれて
しまわないように、飛ばされてしまわないように、し
っかりと抑えて、僕等じしんが風、ただの吹き過ぎる
風、めくれてしまう歌、その頁に過ぎないのだから、

(2024年4月)

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