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35夜 議会制民主主義はどこにいくのだろうか・・・

 岸田改造内閣発足以来1か月ほどでの政務三役の辞任が,3名に上っている.現内閣の総理大臣を除く閣僚・副大臣・政務官の総数は73名で,改造内閣として,たった1か月の間に3名も変わったのである.政務3役というのはそんなにも軽い職位なのだろうかと,思わず考えてしまうのだが,考えてみれば,これまでのどの政権でも,不祥事により幾人かの辞任は毎度あった.要するに,残念ながらそんな程度のものなのだろう.しかし,結構な給与をもらっているにだから,その点からすれば,一般のサラリーマン(勿論一般の公務員も含む)からすれば「給料分は働こうよ」と,つい言いたくなってしまうだろう.もはや副大臣や政務官は必要なのだろうかと思ってしまう.
 考えてみれば,この国の政治家は,それ自体が職業として成り立っている.2世議員や3世議員の割合は,地方議会でも国会でも結構な割合になっているところが多いだろう.こういった世襲議員の弊害が取りざたされて久しい.世襲議員の中にも有能で議員としての社会への貢献度の高い方もたくさんいらっしゃるだろうが,問題は議員というものが職業として成り立ってしまうところにあるのではないだろうか.もちろん,市町村議会の中には議員のなりてがおらず,このままでは議会が成立しないなどといったところもあるのは事実である.しかし,それ以上に議員の劣化が激しい今日においては,もはや議員そのものの有り方を考えるべき時にきているのではないだろうか.
 この国は議会制民主主義によって成り立つ国であり,国会でも地方議会でも,その多くは政党に所属する(勿論無所属もある),選挙によって選ばれた議員が民意の代弁者として議会において様々な案件を議論したり,その可否を決定したり,国会においては立法をする立場にある.私たちの生活すべてに必要な事柄を決める場という議会における発言権を持っているのである.ただ,その発言権は,あくまで「民意を代弁する」権利であり,議員の個人的な意見を述べる権利ではない.よく選挙カーから「みなさなの声を届ける・・・・」とか「皆様の代表として・・・」とかいう声を聞くが,まさにそれこそが「民意を代弁する」という事なのだと筆者は考える.しかしながら,選挙が終わると選挙カーから聞こえたあの声はどこへいったのだろうか,というような感じになってしまう事が,昨今は特に多い気がしてならない.今回の件は,事に当たる以前に更迭や辞任するという民意の代弁以前の問題なのだが,そもそも問題の根源は,議員という職業が成立してしまうところにあるだろうと筆者は考える.つまり,議員報酬=給与によって生活ができたり,議員になったとたん,議員特権などの「閣下」的な立場になれてしまう事が,もともと手段であった議員になることが目的となってしまい,本来の目的である「民意の代弁者」という目的が遠くに飛ばされてしまう状況をつくりだしてしまうのだろう.明治新政府を創った人々は,昨今のこの状況を見てどう思うだろうなあ.
 しかし,一党独裁のような国々を見る限り,私たちにとって民主主義は大切なこの国の柱であることは間違いなく,議会制や三権分立という国の基本を崩してはならないことは確かだ.私たちにとって,果たしてこの議員という「こんなにたくさんいらないんじゃね」とか「結局,役人の書いた原稿を読んでるだけ」の人々は必要なのだろうか.
 北欧の国によっては,議員報酬ゼロの議員で議会を構成したり,年収1000万未満の国会議員が標準であったりと,「政治には金がかかるのだ」と当たり前のようにおっしゃる議員が多くを占めるこの国とはまるで異なる議会制民主主義を実現している国がある.直接民主主義を貫くスイスのように,国民一人一人が国政の意思決定権を持つ国だってある.
 議員によって成り立つ間接民主制が,直接民主制よりも多くの国々で採用されている大きな理由は,これまで,国民全員の意見を集約することの難しさにあるといわれてきた.情報通信の発達していない時代あれば,一人ひとりの意見を聞こうとすれば,途方もない時間と労力が必要となることは明らかであり,間接民主制の方が合理的であることは明白であった.しかし,インターネットが張り巡らされSNSが進化した現在において,その理由は直接民主制を否定する根拠にはならないと筆者は考える.
 直接民主制が性急であるならば,まずは議員の在り方そのものを考え直すところから始めたらどうだろうか.もちろん法律改正が必要だろうが,このままでは,あってもなくても変わらないと本当に言われてしまうような議会や国会のために,多くの経費を費やすことや,必要のない短期雇用政務役人への経費など,ますます,何のために議員がいるのかがわからない,「やっぱり社会主義国家日本だったのか」になってしまうような気がしてならない.


 

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