男友達を連れてレズ風俗に行った③
仲の良いサークル同期マイケルはメンヘラにモテるので、うつ病と診断された私は大喜びで彼に依存したのだった。
好きでもないのに。
そんなこんなで鬱病の私の毎日は、現Xの裏アカウントを通じてマイケル氏に筒抜けになっている。今も。
ある夜、私は男性と遊んでいた。その男性は私の人生におけるマクガフィン(調べられたし)なので詳しくは書かないが、ともかくマクガフィンと遊ぶくらい私の判断能力は鈍っていた。ガールズバーに何セットも居座って2万円以上支払い、なおかつそれをハシゴする、みたいなことをし始めたのもこのころである(とはいえガールズバーはたいそう楽しいので、また別の連載をしたい次第)。
マクガフィンとの遊びが予定外に早く終わってしまい、飲み足りなかった私は2人だけいる女性の親友のうちの一人(仮にユキちゃんとしておく)の家で飲み明かすことにした。「私も飲み足りないからうちに来て」と言ってくれたのは今思えばユキちゃんの優しさかもしれない。
ユキちゃんはアイドルみたいな女の子だ。みたいな、というか、実際にアイドルとしても活動している。身バレが怖いので詳細は伏せるが。
細くて小柄で猫っぽい顔をした、声までかわいい女の子。私と並ぶと同じ生物とは思えない気さえしてくる。
ユキちゃんの最寄り駅の近くで待ち合わせた。ユキちゃんはあわてて部屋を片付けようとしてお酢をぶちまけたらしく、ずいぶん遅れてやってきた。そんなところもかわいいと思う。一緒に掃除しようと密かにウエットティッシュを買っていったが、お酢はもう跡形もなく拭き去られていた。
初めて見るユキちゃんの一人暮らしの部屋。ユキちゃんが揃えた、ユキちゃんの匂いのする家具。
ユキちゃんの手料理を食べた。見た目に似合わず「男飯」みたいなものを作ってくれた。「男に褒められたくて料理してるんだもん。そりゃ男飯に決まってるでしょ」とユキちゃんは言った。そんなところもやはりかわいいと思う。冷蔵庫に余らせていたというエリンギに小エビ、インゲンをたっぷりのバターとクミンで炒めたあやしい料理。おいしかった。
そのあと適当にお酒を飲んで、ユキちゃんのベッドを二人でふんふん言いながら動かしてダブルベッド仕様にしてから、私達は隣り合って寝ころんだ。
ユキちゃんはいつのまにか部屋着になっていた。
キャミソールにふわふわしたスカートがくっついた黒いワンピース。寝るときまでかわいいのか。アイドルみたいな小悪魔。
「かわいいね」とか言えばよかったのに。
私の口から出た言葉といったら、
「お、おまえ!私が男じゃなくて……せ、攻めでもなくてよかったな!」
呆れた。何年もかけてじっくり拗らせた「へんな好意」がベッドの上で出てしまうなんて。慌てて取り繕おうとしてももう遅い。
「華子が受けだなんて聞きたくもないわ(笑)」
地獄みたいな甘い声でユキちゃんは笑った。
私の中で何かが弾けるような、いや、もっとこう、重みに耐えきれずにべとりと腐り落ちるような、そんな音がした。