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最近の話

「裏技を教えてあげる」
同じエレベーターに居合わせジジイはおもむろにそう言うと、腕全体が震えるほどの力で「閉じる」ボタンを押し続け、やがて離した。
「ほうら、早くなったろう」
なにが早くなったのか、よくわからないが、早朝から晴れていて気分がいいので適当に便乗した。

最近はOutlast trialsを始めた。難しいが、なかなか面白い。ホラーだけど、ジャンプスケアがほとんどないから助かってる。逃げ回る緊張感だけを適度に摂取できる。もっと慣れていけばきっと面白くなると思う。

ただ一つ、気になることがある。ここからはちょっと下品な話をするぞ。
このゲームに登場する敵の中には、まじのスッポンポンなやつがいる。
遊んでいると、追跡を振り切るために机の下で隠れて、息をひそめて、僕を追いかけるそいつのお尻を見つめざるを得ないときがたまにやってくる。そうして見つめていると、お尻の割れ目の下から、なんとも無防備にぷらんぷらんしている、あるものが、どうしても目に入ってしまうんだ。

それはキンタマだ

これが、なんかこう…ヤダ。下手に正面から見るよりもなんかヤダ。
いや、別に消してほしいわけでもないし、仮にそれが見えたとて、僕は笑うでもなく引くでもなく、純粋にゲームをすると思うんだけど、ふとしたときにみえてしまうこいつが、どうしても僕の気を緩くさせるのだ。

その立派なものを持つ怪物の身長は、裕に2mを超えているだろう。頭には、頭蓋骨が切開された跡がある。パラノイアめいた支離滅裂な言動を常に繰り返している。2発殴られると瀕死になる。そいつはこんなにも狂暴で、恐ろしい怪物で、追跡者でもあるのに、唯一お尻とお尻の間からぷらんぷらんさせているものがあるというだけで、僕はそいつに謎の親近感を覚えてしまった。

というか、男の生殖器、邪魔すぎ。取り外し可能にしてほしい。

それはラオコーン像だ

みてくれ、この肉体美。苦悶を浮かべる表情もさることながら、くっきりとみえる肋骨に、脇腹にかけて現れる前鋸筋。内股から膝裏にかけてまっすぐに伸びる縫工筋に、人体で一番肉厚でおいしそう(個人的見解)な大腿直筋。足のつけ根、くっきりと表れたその骨の名は上前腸骨棘。そこから伸びる腹直筋鞘は、迷いなく恥骨を支えている(あるいは支えられている)。そんで恥骨の前にあるものが、まじでどうしようもなく、邪魔。骨すら入ってないようなボンクラがこんなにしゃしゃんなよ。この肉体美を邪魔するなよ。そう言いたい。

とここまで書いてみたが、意外と、そんなわるいものでもないかもという気がしてきた。
というのも、僕は男のデッサン人形をありがたがったことがないのだ。
物にもよるけれど、男のデッサン人形は、たいていモノがついてない。まさに僕が邪魔だといっていたものが、ちょうど取り除かれた状態にあるのだ。でも僕は、それに対して、外れてる!ラッキー!なんておもうどころか、なにか足りないものがあるように思えて仕方がなかったのだ。

本来あるべきものが、そこにはない。それは僕が望んで仕方がなかったことだが、同時に実現するべきではなかったことなのかもしれない。

ミロのヴィーナスの逆を行く。そこにあればよかったのにな。ではなく、そこになければよかったのにな。そうして想像すると、その間には無限の美学が広がっていた。それこそが、キンタマに、男性器に、かつては望まれていたあり方だったのかもしれない。

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