その一拍を共にする。
今、働くという場が与えられている、救急という場
死と隣り合わせだったが、『生きる命』もあります。
低体温にて搬送。入室した際の体温は体温計では29度。
搬送時は心臓は有効な動きがない状況。
自宅内浴槽で発見。80代女性。
付き添いされていたのはお孫さんお一人でした。
(この患者様の息子様でありお孫さんにあたってはお父様である
家族にとっての一番の長は、仕事で不在だった)
「最後に話したのが、4時間前。お風呂に入るって言っていた。
そのあと、てっきりお風呂から出ていると思ったのに。。」
と泣きそうな声で、絞り出すように話してくれた高校生のお孫さん。
動揺もあり、祖母が最後の時に、どうしていきたいか、
救命処置はどうしていくかなど判断する状況は期待できませんでした。
救急隊が、継続して病院到着前から搬送中、患者様の息子様、義娘(お嫁様)へ、電話をするがつながらない。
この方の最期の救命処置に対する、意思がわからない。
その時、救急外来のその勤務のリーダー医師の決めた結論は以下でした。
チームリーダーの方針のもと、私たちは一斉に動きます。
20分にもわたる、心肺蘇生処置が実施され救急外来で実践されました。
搬送してくれた救急隊、医師、看護師、交代して皆で
絶え間ない胸骨圧迫(心臓マッサージ)が実践されました。
こちらは、アルゴリズムが確定されており、一般の方においても
状態が変化した人に遭遇した場合の対処方法については、
その法則、しかるべき行動がルール化され、トレーニングの機会も
学校や、公共の場、しかるべきトレーニング機構で、設定されております。
BLSとは? - 日本ACLS協会ガイド
そして、息子様に電話連絡が取れる前に、
その患者様の心臓の拍出の再開が認められた。
だが、脈拍は致死的な、不整脈に変更され、
いつどうなるかわからない。
脈拍は20から30代をさまよっている。
血圧は測定不能。意識は痛み刺激で反応もない。
この時点で、息子様に電話がつながり、
御家族間で話し合い、これ以上の、蘇生処置は希望されない
意思確認ができました。
息子様をはじめとした、御家族が到着し、
私達医療者は、今の状況においては、ここからの
回復は難しいかもしれない。
低体温の復温(体を温める事)を実践しつつ
救急外来での「看取り」を視野に入れました。
御家族にも現状について、医師から十分に説明があり、
患者様と家族の時間を初療室の中で作りました。
家族との時間をつくりつつ、脈拍が、変化する状況を見守る中、
1時間ほどたったとき、患者からの反応がでてきました。
脈拍はかわらず30代。ですが復温と共に、
意識レベルが改善。血圧も測定可能となってきた。
~その患者様は、最終的にリハビリをし、2週間を待たずに
自宅へと退院しました。~
私たちは、その一日、一日を一つのチームの中で、
リーダーとなる医師を中心に、統制し、
自分の命の時間を共有しながら、
患者の命の一拍を、あきらめません。
その命の一拍を
全力で、蘇生するかしないかの判断含め
皆で尊重しているんだと思っています。
その一拍をあきらめないでという
メッセージをこの患者様からいただきました。
この患者の心臓の一拍がでたときの報告を医師からしたときの
お孫様の表情、
そのあとの、患者様が反応がでたときの、家族と共に喜ぶ
お孫様の表情
それが忘れられないのと、
患者様が、もしかしたら、お孫様の想いを察して、
「生きていきたい!!」を身体で表現したのかなと
個人的に一人の人間として感じた事例です。
今、胸に手をあてると心臓の鼓動が、このメッセージを読んでくれている
皆さんは感じると思います。
その一拍は、当たり前の一拍ではない。
綿密な体の連携にて生かされている一拍です。
今日もこの、一拍を大事に、共に、生きていきたいと思います。
少し長くなりましたが最後まで読んでいただき感謝です