「最近のお笑いは、面白くない」と言う人の心理
私の前職は、お笑い芸人でした。
10年以上活動していました。鳴かず飛ばすの芸人でしたので、説得力が無いかもしれませんが、聞いてください。
お笑い芸人のネタについて、時々、こういうことを言う人がいます。
「最近のお笑いは、面白くない」
こういう事を言う人の多くは、個人的に自分が「面白くない」と感じたことを、強引に一般化してしまっていることに気がついていません。
「最近のお笑いは面白くない」
これだけを聞くと、さも、最近のお笑いのレベルが下がったかのような印象を受けます。
しかし、こういう事を言う人の多くは
「最近のお笑いを見ても、『私は』面白いと感じない」
ということを、強引に一般化して
「最近のお笑いは面白くない」
と、言っているだけのことが多いのです。
では、本当に「最近のお笑いは、面白くない」のでしょうか。
そもそも、「面白い・面白くない」は、多分にその人の好みに依存します。
また、「何を・どのレベルまで面白いと定義するのか」によっても、大きく変わってきます。
だから、残念ながら、最近のお笑いは面白い・面白くない、とはっきりと一般化して断言することは、私にはできません。
しかしながら、これだけは自信を持って言うことができます。
それは
「昔のお笑い芸人と比べて、1人1人の技術は格段に上がっている」
ということです。
「漫才ブームの時の方が面白かった」
などと言う人が時々いますが、
個々の技術は、圧倒的に現代の芸人の方が上です。
ここで言う個々の技術と言うのは
「演技力」「ツッコミの間」「言葉選び」
のことです。
もちろん、昔の芸人の方々の中で、「演技力」「ツッコミの間」「言葉選び」どれをとってもピカイチのコンビもいると思います。
ダウンタウンさん辺りが最たるところでしょうか。
しかし、全体的な傾向としては、現代の芸人の方が圧倒的に技術が高いです。
昔の芸人の動画をYouTube等で見ると、なんとも言えないモッサリした印象を受けることはないでしょうか。
それは、技術的なことが主な理由です。
ダウンタウンさんでさえ、20歳前後の漫才を見ると、なんとも言えないモッサリ感が垣間みえます。
推察するに、当時は、まだ「松本人志」という才能に、二人の技術が追い付いていなかったからなのだと思います。
話題を、冒頭の「最近のお笑いは面白くない」と言う人がいる件に戻します。
彼らが、このようなことを言う心理の裏側には「思い出補正」が起因しているのだと思います。
誰もが、過去の自分の経験を美化したいという気持ちがあります。
特に、子どもの頃、あるいは多感な頃に、面白いと感じたもの、魅力的だと思ったものは、大人になっても色褪せず、心に残り続けるものが多いのです。
例えば、中学生・高校生の頃に聞いたJ-POPの曲が未だにベストな曲だと感じている人は、結構いらっしゃるのではないでしょうか。
そのような人は「最近の曲は、良く分からん」などと感じているのではないでしょうか。
実は、私もそのうちの1人なのです。
それと同じ心理が「今のお笑いは面白くない」と言っている人に働いているのです。
つまり、長々と、何が言いたいのかと言うと、過去の思い出を良き物とする心理が働いた結果
「昔のお笑いの方が楽しかった」
「今のお笑いは面白くない」
と言っているだけなのではないか?ということです。
「何が面白いのか?」は、人によって答えが異なってしかるべきです。
しかし、確実に、現代のお笑いは、全体的な底上げがなされています。
次の記事では、全体的な底上げがなされたことの理由の考察と、芸人の世界と教員の世界との共通点・相違点を交えた話をしようと思います。