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介護職の髭剃りについて。
昨日、髭剃りについて調べた記事をアップしたのですが、介護現場での利用者さんに対して行う髭剃りについて、情報がアップデートされないまま、電気シェーバーでしか出来ない、という対応を続けている現場が多いと思うので、改めてカミソリでの利用者さんへの髭剃りについて書いてみようと思いました。
結論から言うと、介護職が利用者さんへ行う髭剃りについては、身体整容の一部として認められています。カミソリであろうと電気シェーバーでも。
これ、なんで出来ない、という認識が広がっていたかというと、理容に該当するので理美容法に抵触するから禁止、という通知を厚労省が出してたんですよね。
で、久しぶりに根拠となっている通知文書を検索したんですけど、出てこないんですよね。削除されてるっぽい。
とりあえず引用して抜粋してある文章はあったので、そちらを紹介。
平成19年10月9日
内閣官房
地域活性化統合事務局
構造改革特区及び地域再生(非予算関連)に関する再々検討要請に対する各府省庁からの回答について
より一部抜粋
【要望事項(事項名)】顔剃り・髭剃りの規制緩和
【提案主体からの意見】
回答では、顔剃り等についいては、「理容」行為に該当し、理容師のみに認められた行為と示されていることから、理容師以外の者が行うのは違法行為であると認識して相違ございませんか。
つまり、介護サービス(入浴介助)でおこなわれている顔剃り・髭剃りの行為は、理容師のみに定められた行為であり、介護福祉士・ヘルパーであっても、顔剃り・髭剃りを行うのは容認されず、違法であり、認めないものと判断されますが、厚生労働省の見解をお示し下さい。
【各府省庁からの再検討要請に対する回答】
顔剃り等は理容行為に該当し、理容に関する専門的知識・技術を有しているとして免許を与えられている理容師のみがこれを業として行うことが可能なものとなっており、また、身体が不自由などの理由により理容所に来ることができない方は、法令上出張理容の対象として位置付けられ、出張理容サービスを受けることができることとなっている。そのため、美容師が顔剃り等を行うことを認めることは困難である。
なお、介護従事者であっても、かみそりによる顔剃り等は認めていない。
高齢者の髭剃りについて
この文章ですね。
これが根拠となって、介護現場ではカミソリによる髭剃りは出来ない事になっていたわけです。
これ、髭剃りとは明記されてなくて顔剃りなんですよね。で、その流れで髭剃りを”理容”として捉えた場合、法律に違反する、というのがポイントです。
ちなみに、この通知は平成19年・・・2007年の文章です。
で、その後紆余曲折がありまして、こういう解釈になっています。
【その他】
Q23
訪問介護員等が髭剃りを行うことは可能か。
A23
利用者に対し カミソリ T字カミソリ含む を使用しての髭剃り は、必要な知識及び技能をもって行う「理容」であり、理容師法に抵 触する(理容師免許を受けた者でなければ理容を業としてはならない) おそれがあるため、訪問介護員等が行うことはできない。 」 また 「理容」は訪問介護サービスの内容に含まれないため、理容 、 師免許を持ったヘルパーが理容を行った場合でも介護保険給付の対象 とならない。 なお 「電気カミソリを使用しての髭剃り」は、一般的に専門的な 、 知識及び技能が不要であり 「理容」には当たらないと考えられることから、訪問介護員等が行って差し支えないものと考える。 ただし、電気カミソリを使用する場合は、1つの電気カミソリを複 数人で使用することは避け、利用者本人の電気カミソリを使用するこ とを原則とするなど感染症予防に十分注意すること。
※上記取扱いの例外 カミソリ(T字カミソリ含む )であっても、利用者が日常的に使用していたものであれば、その器具を使用しての髭剃りは身体整容の 一環として捉えられることから、介護保険給付の対象として見守り、 介助は可能であり 髭剃りを行ったとしても理容師法には抵触しない。
ただし、安全上の観点から利用者を傷つける可能性があるカミソリを使用することは望ましくない。
また、衛生上の観点から1つの器具を使いまわして複数人で使用す ることは避けること。
改訂版 新潟県福祉保健部高齢福祉保健課
こちら、新潟県の見解ですが、例外として、利用者さんが日常的に使用しているカミソリであれば、身体整容の一環として介護職でも髭剃りをしても大丈夫ですよ、とされています。
また、こんなブログ記事もあります。
厚労省に直接問い合わせて、上記の疑義解釈(理容師法に抵触するとの解釈)との整合性も含めて回答を得た。
担当官より「当時の回答内容に不足があった。」「身体整容の一環としてT字カミソリ使用は可能。」との回答を得た。
納得はしたが、何とも腑に落ちない結果となってしまった。
T字カミソリによる髭剃りは不可!?
また、こちらの掲示板でのやりとりでも似たような回答を得られている内容がありました。
厚生労働省 老健局振興課 サービス基準第一係に確認しました。
「身体整容の一環として可能」との回答でしたが、従前の解釈・平成19年10月9日内閣官房 地域活性化統合事務局 顔剃り・髭剃りの規制緩和について『理容師法に抵触するとの見識であったが?』と指摘したところ、担当官より「再度確認します」との事。
折り返しの連絡で「当時の回答内容に不足があった」との前提で、「身体整容の一環としてT字カミソリ使用は可能」との事です。
※西洋ナイフの可否等ではなく
これは都道府県・区市町村担当者にも周知する必要がありますね。
朗報 T字カミソリの使用は以前から可能であった
で、この資料が一番しっかり根拠示されてるかも。
【介護職員の髭剃り行為】
身体整容の一環として行う髭の手入れにおいて、介護職員がカミソリ(T字カミソリを含む)を使用 することは可能である。
以下、厚労省老健局振興課基準第一係からの聴取事項。
①老計第10号1-2-5身体整容(日常的な行為としての身体整容)の中で例示されている「髭の 手入れ」は、理容師法の理容業には該当しないと解釈している。
②そのため、身体整容の一環としてT字カミソリ又は電動カミソリを使用した介護サービスを介護 職員が行うことは可能である。
③使用するカミソリについては、本人が日常的に使用しているもの、又は介護職員が持ち込む場合 は衛生的なものを準備すべきと考える。
集団指導資料 運営上の留意事項について
この集団指導の資料では、明確に厚労省老健局から聴取した事項として、身体整容として髭の手入れは理容業に該当せず、T字カミソリを使用した髭剃りを介護職が行う事は可能と示しています。
当然、安全や衛生面をきちんとするのが当たり前の事ではあります。
ちなみに、令和元年は、2019年ですね。
上記の掲示板の書き込みも、2019年の書き込みだったので、この時期から介護職の髭剃り(カミソリ使用)については、公的に認められた行為になっていた事になります。
ちなみに、僕自身はこの掲示板のやり取りも当時から見ていて、こういう根拠のある資料が出た段階で、この認識でしたが、これがいくら現場で認められたよ、と介護職でやっても大丈夫だよ、と説明しても何故か当人の情報がアップデートされない事が多いので諦めました。
ずっとダメって教えられてきたから今更・・・という感じなのかもですけど。
ただ、やはり刃物を扱う介助になるので、やりたくない人や自信ない人はやらない方がいいと思います。お互いに不幸になるだけだし。
やれる人、出来る人は、厚労省も認めている行為なので堂々とやればいいと思います。
その際は、『 ③使用するカミソリについては、本人が日常的に使用しているもの、又は介護職員が持ち込む場合 は衛生的なものを準備すべきと考える。』・・・この部分をしっかり遵守しておけば大丈夫だと思います。
これ、厚労省の担当者に聞いた内容です、と集団指導で行政が明示した内容ですから。
折り返しの連絡で「当時の回答内容に不足があった」との前提で、「身体整容の一環としてT字カミソリ使用は可能」との事です。
上記で引用した直接厚労省に確認された方が書かれていた内容の再引用ですが、10年以上も回答の内容に不足があって、それが原因で本当は出来たはずのケアが介護現場で出来てこなかったのは結構重大だと思うんですよね。
その上で、改めて誤りでした、という文章を出さずに、質問を受けたら回答する、というスタンス・・・。
まぁいいんですけど、気になる方は行政や厚労省に確認してから実施を検討されたらいいと思います。
大事なのは、介護職が髭剃りを行う場合は、身体整容の一環として、という位置づけであることをしっかり認識しておく事が重要です。