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全世代型社保会議、高齢者の生活支援のあり方を検討 介護サービス提供体制の改革も・・・という記事の紹介です。

ちょっと地域分析とかしながら記事を書いてたので完成まで時間がかかりました。

政府の「全世代型社会保障構築会議」は今後、1人暮らしの高齢者らに対する生活支援のあり方をめぐる議論を深めていく。27日の会合でそうした方針を確認した。【Joint編集部】

例えば身元保証や金銭管理、少し大掛かりな掃除や買い物、死後の遺品の整理など、従来なら親族や“ご近所さん”らが担っていた生活支援のニーズは今後更に拡大する見通し。1人暮らしの高齢者、認知症の高齢者らが急速に増えていくためだ。

民間サービスを十分に使う余裕のない高齢者をどう支えるか、政府は介護・福祉の制度との関係性も含めて検討していく考えだ。地域の助け合いの仕組みを整備していくことが必要、との声もあがっている。

JOINT

そもそも民間サービスにも限界があるので、こういう問題や課題というのはこれからどんどん顕在化というか、深刻な問題になっていくと思います。
民間サービスを活用する前提であれば、基本的にお金が払えなければその支援は受けれませんので、支払いができない方にとって地域の助け合いというのはどこまで現実的なのか本当に疑問です。

この流れだと完全に地域の助け合いベースなので、地域の助け合いから零れ落ちてしまった方に対して自己責任論など出てきそうでうんざりなんですけど、そういう問題ではないと思うんですよね。

今回の「全世代型社会保障構築会議」ではこのほか、地域間の状況の差異に着目した介護サービス提供体制の見直しも議論していく方針を確認した。

今後、都市部では介護ニーズが更に拡大していくと見込まれているが、一部の地方は違う。高齢化がピークを超え、介護ニーズが徐々に縮小していくところもある。このため、法人や施設のあり方、人材確保の方策なども含めて、地域によっては介護・福祉のダウンサイジングが必要との意見が出ている。

JOINT

これ単純に読んで理解してしまうと、これから地方は介護ニーズが減って都会の方が大変になるから介護事業の整理など人口密集地に集中した方がいい、みたいな話になりそうなんですけど、確かに人口が多い地域へ担い手を増やすのは重要なんですが、もう働ける人が限られてしまっていて、しかもこれから年々減少していく状況になっているわけで、そう簡単に人は増やせない上に、高齢化のピークも結構後ろにズレている地域もあるので、少なくとも2040年頃まではまだピークを迎えるという事はないと思いますので、あと15年近くは介護ニーズが増加するか維持していく状況と思います。

その上で、たとえば僕らがサービスを提供している地域ではこの先どうなるのかをちょっと調べてみました。

登別市立地適正化計画(1章 登別市の概要及び現況と課題)より抜粋

僕らが事業展開しているのが、北海道のこの地域です。
登別市を中心に、白老町と室蘭市への訪問介護のサービスも提供しています。白老町の端っこから室蘭市の端っこまで、だいたい50kmくらいの距離感です。

これ、ちょっと調べてみると、大阪梅田駅から京都の出町柳駅までの距離とほぼ同じくらいでした。にわかに信じがたいので計測間違ってるかもしれません・・・。(東京だと、東京駅から明治の森高尾国定公園くらいまで)

それでは、まず登別市の状況から見ていきましょう。

第9期 登別市高齢者保健福祉計画 及び介護保険事業計画(令和6年3月発行)より抜粋

登別市は、今後も人口は減少していき2040年には34000人ほどまで減る見込みなので、今から約10000人が減少する感じですね。結構急激に減りそうです。

で、人口構造を見ると65歳以上の割合ってそんなに減ってなくて、65歳以下の割合が縮小していくのがよくわかります。
当然、高齢化率も急激に増加していきます。(折れ線グラフ)
2040年の高齢化率は43.9%ですから完全に別の世界になっているような覚悟をしておかないとヤバそうです。

次に、要介護認定者数の推移についても見ていきましょう。
これは僕ら介護サービスを必要とされる方の推移なので重要なデータです。

第9期 登別市高齢者保健福祉計画 及び介護保険事業計画(令和6年3月発行)より抜粋

介護を必要とされる方のピークについては、2035年がピークになりそうです。その後は減少に転じるのですが、それでも現状の2024年度の要介護認定者数と比較すると2040年度の予測値でも全然多いわけです。
ですので、ピークを過ぎたとしても現状のニーズよりも減るわけではなくて、あくまでピークを過ぎて減っている、という状況になるだけなので、その時にすぐに介護サービスが今より少なくても大丈夫、という事ではない事に注意が必要ですし、そもそも人口構造が激減しますので、2040年の段階でどれだけの介護職が地域で働いている事か・・・。
前述のグラフで65歳以下の人口の割合が減少している事を根拠とすると、介護職も減るに違いないので、そう考えると地方の介護ニーズは減ったとしてもそれに対応できる職員が確保できずに介護難民が発生してしまっている状況が予想できます。

ヘルパーもケアマネも平均年齢で介護職の高齢化率のトップをいく業種です。これらのマンパワーが激減していく事は明らかです。

登別市の在宅サービスの利用者数などの見込み

こちらの表は、ヘルパーやデイサービスといった在宅サービスの利用者数の見込みで、上の表が2026年まで、下の表が2040年までの予測です。

登別市の在宅サービスの利用者数などの見込み

訪問介護については、2040年まで利用者数は増加していきます。
一方でデイサービスのニーズは減少に転じますが、それでもわずか1名の減少の予測になっています。

まずは事業所がある登別市の状況を見ましたが、やはり2040年まではニーズは上昇傾向ですね。

次は白老町を見てみましょう。
登別市と室蘭市と比べると、一番人口が少なくて高齢化も進んでいるはずです。

白老町高齢者保健福祉計画・介護保険事業計画(第 9 期)より抜粋

2025年で14852人の人口が、2040年には9952人と1万人を切ってしまう状態が予想されています。
高齢化や人口構造については登別市と同様で、40~64歳の年代の割合は減少していく一方で、65歳以上の割合は増加していきます。

白老町も登別市と同様で、地域を支える労働力は減少するが高齢者の数はどんどん増えていくので、現役世代への負担は増加していく一方という事になりますので、高齢化がピークを迎えたとしても状況は更に深刻になっていく事が予想されます。高齢化率も他の追随を許さない52.3%(2040年)が予想されています。

では、介護ニーズについてはどうでしょうか。

白老町高齢者保健福祉計画・介護保険事業計画(第 9 期)より抜粋

介護ニーズについては、登別市と違ってピークを越えると減少していく事が予想されています。
2025年で1664人の要介護認定者数が予測されていますが、2040年では1476人と減少しています。これは2023年の1593人よりも下回っていますので、登別市とは違った状況になっていますが、おそらくですが地域の介護事業所や介護職の数もどんどん減っていく事が予想されますので、深刻な状況に変わりないと思います。

たとえば介護事業所の数や介護職員数を見ると以下の通りです。
(情報の公表の数値を参照しました/訪問介護事業所のみ)

★ 訪問介護事業所のみのデータですが参考まで。
★ 2024年5月時点のデータです。

登別市がサービス提供範囲の事業所数=24事業所
登別市がサービス提供範囲のヘルパー数=250人
※ 常勤換算数 114.36人

室蘭市がサービス提供範囲の事業所数=23事業所
室蘭市がサービス提供範囲のヘルパー数=250人
※ 常勤換算数 115.06人

白老町がサービス提供範囲の事業所数=8事業所
白老町がサービス提供範囲のヘルパー数=69人
※ 常勤換算数 31.0人

白老町については本当に介護サービスの提供が困難になっていきそうです。
上記の数字の中に、弊社の職員も僕自身も含まれています。

白老町高齢者保健福祉計画・介護保険事業計画(第 9 期)より抜粋

白老町としても状況の深刻度は把握されているようで需要に対して介護人材が不足する事が予想されています。人材確保について、どこまで課題解決できるのか・・・非常に重大な課題になっていきそうです。

では、最後に一番人口の多い室蘭市を見てみましょう。

第9期室蘭市 高齢者保健福祉計画・ 介護保険事業計画 より抜粋

室蘭市も人口減少が深刻な問題です。
2023年度で76941人だった人口が、2040年には21675人と本当に急激に減少します。この減り幅は登別や白老以上ですね。
2040年の予測だと登別市よりも人口が少なくなる予測なんですね、これはちょっと興味深いです。

高齢化率の上がり幅もゆるやかな感じですけど、それでも40%越えが予想されています。
室蘭市については、後期高齢者の割合と64歳以下の人口の割合が減少していく感じですね。

介護ニーズはどうでしょうか。

第9期室蘭市 高齢者保健福祉計画・ 介護保険事業計画 より抜粋

要介護認定者数は、2030年にピークの5955人に達して、その後2040年には5112人まで減少していくようです。
室蘭市については2040年では現状と比較しても介護ニーズについては落ち着いていくような感じですね。
それでも労働人口の減少も激しいので、やはりどこまで介護人材が確保できているかが大きな課題になりそうです。

最後に・・・

登別市、白老町、室蘭市の将来予測を見てきましたが、こういった地域はほかにも多いと思いますので、高齢化のピークが過ぎたとしてもそれは2040年以降の話であって、結構先の事で、その時には今よりもどんどん働ける人が少なくなっている事も考慮していろいろ考えないとならないと思います。

【 今後、都市部では介護ニーズが更に拡大していくと見込まれているが、一部の地方は違う。高齢化がピークを超え、介護ニーズが徐々に縮小していくところもある。このため、法人や施設のあり方、人材確保の方策なども含めて、地域によっては介護・福祉のダウンサイジングが必要との意見が出ている。 】

ですので、こういう議論をするよりかは、そもそも現状のシステムやルールのままサイズ感を縮小するのではなくて、新しい人口構造にあわせた新しいシステムやルールの構築が必要と思いました。

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