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社説〉 訪問介護の苦境 政策の失敗、早急に正せ・・・という記事の紹介です。

今春に実施された介護報酬の改定により、訪問介護事業者の撤退に拍車がかかるのではないか―。懸念されていた事態が、現実のものとなっている。

Shinano Mainichi Shimbun.

倒産の数字だけでみていると撤退に拍車がかかっているように見えますが、一方で新規開設も増えている情報があるので、一概にそうとも言えないのですが、ただ増えている事業所も施設併設型という話もあるので、もしそれが本当なら、地域で展開する訪問介護事業所の撤退に拍車がかかっているのは間違いない状況とも言えます。

東京商工リサーチのまとめで、上半期(4~9月)の介護事業者の倒産が過去最多の95件に上り、前年度上半期と比べて7割近く増えた。中でも訪問介護は46件を数え、業種別で最多となっている。

Shinano Mainichi Shimbun.

毎年毎月倒産件数は右肩上がりなんですよね。
恐らくこの傾向は今後も変らないと思うので、どんどん地域に出ていく訪問介護事業所は減っていくと思います。

なぜか。

理由は単純なんだと思うんですよね。儲からなくなってきたから。
民間事業所が経営するので、儲けは必須要件です。
それが、これまでは他の事業をするとの同等かそれ以上に儲かった。
だからある一定時期まで増えてきて全国に広がった。
だけど、人件費が全産業で高騰し始め、それでも介護業界内でのヘルパーの給与は施設職員と比較しても安くてもなんとか補充できたり採用できたりしたのが、ここにきて人件費を引き上げないといけなくなったうえに利益が出にくい構造になってきた。だったら見切りをつけて撤退しよう。

中にはそうじゃなくて地域のために頑張ってきた事業所もあると思いますが、募集をかけても応募すらない、職員は高齢化していく、新規が受けれない、利益を確保できない、そういった悪循環で経営がうまく行かずに今回の報酬改定のマイナス改定の影響で見通しが立たなくなって撤退。

そんな感じなんだろうと思います。

政府はこの春の介護報酬改定で介護職の処遇改善を主眼に、報酬全体を1・59%引き上げた。多くのサービスで基本報酬が引き上げられた一方で、訪問介護はまさかの引き下げとなった。

基本報酬は、サービスの内容などに対応した公定価格であり、事業所収入の柱となる。減額は経営を直撃する。上半期に倒産した訪問介護事業者に基本報酬の減額で事業継続を諦めたケースがある可能性を指摘されている。

Shinano Mainichi Shimbun.

実際、僕も少しくらいのプラスになると楽観的に考えてましたが、まさかのマイナスでびっくりでした。
1年目は厳しい結果だったので、少しでもプラス改定になれば経営的にはかなり安定するなぁ・・・なんて考えてたのですが、マイナスになる情報を得てから見通しを見直しましたもんね。

処遇改善加算が増額された分、職員へのお給料をアップするのは簡単でしたし、それはそれでいいのですが、やはり単純に会社に入る利益の額が少なくなるので、採用や研修、定着や設備投資といったような資金に回せる体力がなくなりました、いや、もととも無かったんですけど・・・。

厚労省は、おそらくですけど介護事業全体の中でも処遇改善加算の割合を突出して高く設定している訪問介護で働く現場の訪問介護員のお給料が、他の介護事業に従事する介護職員よりも平均値で低い事に目を付けたんだと思うんですよね。

2021年度の業種別の平均年収のランキングがこちら。

2021年 介護の職種別 平均年収ランキング 介護職・ケアマネ・相談員・看護・リハビリ
介護の仕事大百科より

一番上に記載されてるので、訪問介護がトップか?と思いますが、一番下の看護職員が1位です。
こちらのランキングからも分かりますが、介護業界で一番処遇改善加算の比率が高い訪問介護員が、介護業界の中で一番年収が低いんですよ。

そりゃ厚労省もキレますよね。
正しく処遇改善をしていればこうはならなかったんだろうと思いますが、厚労省としても、訪問介護で働く職員の処遇アップをして新規採用や定着を進めたかったのに、いつまでたっても増えない・・・。
しかも表をよく見てもらえばわかりますが、訪問介護員の平均年収って令和元年より減少しているんですよね。

厚労省がマイナス改定をしたくなる気持ちも理解はできます。
ただ、もうちょっと丁寧に現場の実態を見て欲しいとは思いましたね。
併設型と地域で訪問している事業者が一緒くたになっている現状の数値では正確な経営分析は不可能です。

地域の在宅利用者を中心に訪問介護を展開する11都府県の14社員法人にアンケートしたところ、4、5月の事業収入の合計は、前年同期比1・3%のマイナスに。事業損益は3119万円の黒字から955万円の赤字に転落した。

賃上げをした事業所に報酬の加算措置を設けたので、基本報酬が下がっても加算を取れば総収入は増える―。厚生労働省はこう説明する。新たな処遇改善加算は6月に始まったものの、それで減収を穴埋めできるかは不透明だ。

Shinano Mainichi Shimbun.

加算をとって総収入は増えても、処遇改善加算での収益分は全額職員への処遇改善とそれに伴う社保の増額分にしか充当できないわけですから、会社として得られる利益は減るんですよ。わからんのかな。
制度的に利益の穴埋めが出来ない設計になっているので、経営体力はどんどん削られいくし、そういう縛りがない他産業では売り上げを上げて利益を上げれば上げるだけ人材採用などに投資できる費用に回せるわけで、どんどんと差が開いていきます。

人手不足はますます深刻になっている。コープ福祉機構の調査では、5月時点で前年同月に比べて直行直帰型ヘルパーが162人減少。人材紹介会社を利用せざるを得なくなり、高額の紹介料負担が発生している。

Shinano Mainichi Shimbun.

高額の紹介料についても厚労省がメスを入れ始めましたが、全産業で人手不足になるので、こういう紹介事業はかなり規制をかけないと無理じゃないかなぁ。ハローワークとか存在意義どうなってんだろ。

訪問介護は介護保険制度の柱であり、地域包括ケアの要だ。事業者の撤退を食い止めないと、いずれ地域の介護基盤は崩壊する。

Shinano Mainichi Shimbun.

そもそもなんですけど、国も厚労省も、地域包括ケアとか忘れてますよね。まるでやる気が感じられません。

あ、もしかして地方行政任せにして責任とらない気なんだろうか・・・。

足元の危機感は強い。飯田市や長和町、豊丘村など県内の市町村議会では、9月定例会で訪問介護の報酬の引き下げの撤回や引き上げへの再改定を国に求める意見書が続々と可決されている。

Shinano Mainichi Shimbun.

こういう意見書が既に国に上がっているのは朗報ですけど、国や厚労省は現段階で調査を始めたくらいなので臨時で何かやる気はまったくないですね。

厚労省は基本報酬減額の理由に経営実態調査における利益率の高さを挙げたが、訪問介護事業所の4割近くは赤字だった。あまりに雑な分析は、厚労省がヘルパーの重要性を軽視し、報酬を低く抑えてきたことと地続きだ。

Shinano Mainichi Shimbun.

そう、4割も赤字だったからマイナス改定で耐えきれなくなって倒産する事業所が増加している状況だと思います。
記事での指摘通り、今回の報酬改定の根拠にした分析は本当に雑だと思いました。
個人的には、こんなすごく大事な時期の報酬改定だったので、かなり細かい所までデータを集めて吟味して、これまで続いてきた人材不足と、これから起こる介護離職問題なども見据えた対策・報酬の設定をしてくると思ったんですけど、本当に期待外れというか、いつも通りの仕事をしたんだな、という感じで、国や厚労省には全く危機感がないんだな、というのが良く分かりました。

基本報酬の減額は、政策の失敗である。猛省し、早急に引き上げを図るべきだ。

Shinano Mainichi Shimbun.

さて、政策といえば総選挙ありますね。
一部の政党は、訪問介護の基本報酬のアップ等を公約にしている所もあるようですが、果たしてどうなる事やら。


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