居宅介護支援の主任ケアマネ管理者要件に疑問の声 撤廃を求める意見も 厚労省検討会・・・という記事の紹介です。
検討会では、この他にもケアマネの業務範囲の明確化についての意見交換もあったようですが、明確化は困難との見解が多く示されているようです。
まぁ当然ですね、一人ひとりの人生や生活の事ですから一律に線引きできるようなものではなく、ソーシャルワークというのはそういうものでしょう。
実際、制度の穴というか誰も手を差し伸べてくれない部分を、ケアマネジャーがフォローしている状況だと思いますので、そこを線引きしたとして、じゃあケアマネが対応できない事例を代わりに誰が対応してくれるのですか?という疑問は生じますし、そもそも誰も対応できないからケアマネが対応している状況であろうと思うのです。
ですので、議論するのであれば、そういう受け皿の話の具体化も同時にできないと無理ですし、一応公的な制度で走っている介護保険事業所が、そういう社会保障の最後の砦にならざるを得ないのが現状ですので、そろそろ腹を括った方がいいのではないかと思ったり。
で、こちらの記事ではケアマネ事業所の主任ケアマネの要件について。
とても当たり前な意見がちゃんと出ていてよかった、と思いました。
事業所の管理と主任ケアマネに求められる専門性は全くの別物で、それは他の介護事業所でも同様です。
現場レベルでは優秀でも、管理者となるとそうではないケースが多く見られますし、それが原因でバーンアウトするケースも多いです。
一方で、現場の仕事には向いてなくても管理者の仕事には向いている人も中にはいるはずなんですけど、介護事業所で評価されるのは現場での仕事ぶりですから、そういう隠れた才能が発掘される事は永遠にない状況でもあるのが現状の介護現場の問題だと思います。
介護保険が始まって20年以上が経過しましたが、要は適材適所をうまく出来る評価制度も仕組みも全く作れてきていない、という状況が露呈している訳で、記事での指摘の通り、管理の専門性と現場の専門性の違いについてもっと大きく取り上げてもらった方がいいと思います。
そもそもですけど、介護現場全般に言える事ですが、一人の職員に完璧を求めすぎですね。人間だれしも得手不得手があり、成長過程があるわけです。
その場その場で完璧を求めすぎるから働きにくい、居づらい状況が生まれます。
特にその職場での経験年数が多い職員さんは、そういう部分を自己覚知した上で職場づくりをしないといかんと思います。
管理者要件に特定の資格を指定している人員基準って他には無いと思うので、そういう意味でも整合性が取れないというか、なんでこんな制度を導入したんだろう・・・と思いますし、そもそもこういう制度が出来る前の段階で誰も反対しなかったのだろうか・・・と疑問になります。
・・・で、ちょっと調べてみましたが、検討してた会議の資料でこんなのがありました。
管理者を主任ケアマネにするという議論の中で、その目的はケアマネジメントの質の向上が第一にきていたので、特に事業管理をどうこう、という事が目的の要件ではなさそうですが、そうであれば検討の段階で管理者と主任ケアマネの役割についてあまり深く検討されてなかった事がうかがえます。
で、こちらの資料ですが主任ケアマネ研修のカリキュラムですが、この中で管理業務に関連しそうな内容は・・・
・⼈材育成及び業務管理 3時間
・運営管理におけるリスクマネジメント 3時間
・対⼈援助者監督指導 18時間
他にも関係ありそうな内容はありましたが、どちらかというと主任ケアマネとしての役割の方が強そうな内容だったので省きました。
こういう研修を修了しているから管理者もできる、という事なんでしょうかねぇ。
まぁ現場からのたたき上げで事業所を率いてくれた方が理想的とは思いますけど、結構管理者になると人が変わったようになる人とか、逆パワハラみたいな事を受けるようになってしまうような人とかいろいろあるので、記事での指摘のように、これからどんどん人手不足になる業界だという事を考えると限界だと思います。
管理者は管理者として役割を発揮できるように、管理者の兼務要件が緩和されたんだと思ってましたが、厚労省としてはあまりそういう事を繋げて考えてないようですね。まぁ、管理者の兼務要件もそこまで考えていたらもっと緩和してたと思うので、やはり深くは考えてないのかなぁと思ってしまいます。
意見の中では、運営基準の撤廃を求める声が出ているようですが、正規の検討会のメンバーからはそういう意見が出ていないという事なので、撤廃の方向になるのは難しそうな感じがしますが、これ早めに撤廃しとかないと運営継続できなくなる事業所が出てきそうですよ。
現状では経過措置が延長されていて、令和9年度から主任ケアマネじゃないと管理者ができなくなる状況になるわけですけど、そこ頃にはもっとケアマネ不足が深刻になってると思うので本当に大丈夫だろうか・・・と思います。
ヘルパーのサービス提供責任者の要件(利用者40人に対して1人)とか、ヘルパーの人員基準(常勤換算で2.5人以上)とかも、いつまでこれ維持できるかわからんですよ。
現に、サ責の退職で利用者数を維持できないから閉鎖した事業所もあります。ヘルパー不足もどんどん深刻になるので、こういう人員基準は本当に深刻に事業の首を閉めそうです。
さて、最後にさっき引用した資料の中で面白い資料があったので抜粋して紹介します。古い情報なので現状とは違うとは思いますが、処遇改善加算の関係でケアマネ以外の介護事業については、1~2%くらいは人件比率がアップしている可能性はあります。
ケアマネの事業所の人件費率は平成29年で84%です。平成20年で99%ですよ、事業単独で成り立てない状況だったのが、9年経過してだいぶ改善出来た状態ですが、人件費率が80%を超えていて事業継続できるかというとかなり難しいと思いますし、この状態で処遇改善できるかというと、やはり難しいでしょう。
訪問系はやはり人件費率高いですね、ほとんど75%以上です。
一方で他の施設系や通所・入所系、地域密着型の事業については、だいたい65%以下という状況ですね。
人件費率の一般的な考え方とかは、以下の通りです。
介護事業と他産業と比較する事自体がナンセンスかもしれませんが、それでも参考値として知っておく事は悪くないと思いましたが、知らない方がよかったとしか思えませんね。
じゃあ介護業界だけの平均ってどうなんだろう、と思ったので調べてみました。
平均だと66%みたいですね。
さっきの資料が示している内容と同じです。
で、注目は黒字の目安ですね。
黒字の事業所の人件比率の平均は、62.6%です。
赤字の事業所の人件費率の平均は、70.9%です。
まぁ平均なのであれですけど、ケアマネを含めた訪問系はほとんど全部が平均値で見ると赤字構造にあるという事も言えそうですね。
実態はそうじゃないとは思いますけど、他産業と比べて利益率が高いから報酬を減らす判断をした厚労省には、こういう資料も見てもらって平均で赤字構造にならない報酬設定をしてもらいたいものです。半分以上の訪問介護事業所が赤字であるというデータもありましたので、そこまで飛躍した分析ではないと思います。
で、黒字の目安の62.6%で他の事業も見てみましたが、ほとんどの介護事業が黒字レベルに到達していないことも分かります。
ギリギリで運営している事が、こういうデータからも見えてきますね。
その状況で、物価高騰、処遇改善という課題がある時期の報酬改定がこんな感じですから、そりゃよくなっていく見通しなんて立ちませんねぇ・・・。
主任ケアマネの管理者要件の話でしたが思わぬ方向に話が向きましたが、管理者というのはこういう事も検討した上で事業継続できるように経営の舵取りをしないといけないわけですし、運営基準を守るための書類の整備も日常的にしないといけないわけで、主任ケアマネに求められている役割を考えると、やはりどうかんがえても管理者の仕事まで万度にできるとは思えないのが正直な所です。