【すっぱいチェリーたち🍒】スピンオフ 多さわこ(おおのさわこ)編 ③
こちらの記事は、仲良くさせてもらっているうりもさんの企画に乗っかって書いています。
▼ プロローグはこちら。
▼ スピンオフ さわこ編 前回の第②話はこちら。
さわこ ・ エピソードⅣ ‐ 新たなる希望 - (前編)
『 遠い昔 はるかかなたの銀河系で・・・ 』
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オレの名前は宇利盛男うりもりお。
田梨木高校に通う17才。
成績もスポーツもパッとしない。
特にこれと言って得意なこともない。
目標は『三年間無遅刻無欠席』という面白くもなんともない男子学生だ。
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ある日オレは、荒ぶる恋心を鎮める為に妹の爽に相談したんだ。
『 なぁ、悩みが吹っ飛ぶような面白い映画ないか? 』
『 なんや兄ちゃん、柄にもなく悩んどんのか?きゃはははー♪ 』
話を聞くなり自分の部屋に戻った爽は、ノートパソコンくらいの大きさの物体をぐるぐる振り回しながら持ってきてくれた。
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『 ええか兄ちゃん、4巻から観るんやで! 』
『 4巻から6巻まで観から、1巻から最後まで続けて観るんやで! 』
『 ぐだぐだうるさい、脳みそ小さいんやからちっさい事考えんな! 』
『 とりあえず6巻観終わるまで出てくんなや! 』
『 そんな事やからモテへんねん、ブツブツ・・・ 』
と、妹にまくしたてられて部屋に追い立てられた。
すごく失礼な事を言われた気がするが、4巻から6巻まで順番に観る事しか頭に残ってなかった。
とにもかくにも、この映画を順番通り観れば悩み毎が吹っ飛ぶらしい。
そう思って再生して出てきたのが、遠い昔・・・というメッセージだった。
映画を観るために暗くした部屋の中にその文字が浮かび上がった時、オレの脳裏にビン底黒縁メガネのクラスメイトの面影が浮かんだんだ。
オレは、無自覚にあの物静かで大人しそうなおさげ髪の女の子を傷つけてしまったのかもしれない・・・そんなことがあった事もすっかり忘れてしまっていたのに、なんだか思い出してしまった。あの日のあの時の記憶を。
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2年生になった最初の頃だったと思う。
何の用事か忘れたけれど阿久に呼ばれて廊下に向かおうとした時に、何かが床に落ちる音が聞こえたんだ。
どうやらうっかり誰かが手に持っていた眼鏡に体があたったようで、手から眼鏡が落ちてしまったらしい。
『 あ・・・ 』
かぼそい声が聞こえた。
『 あ!ごめんごめん、ごめんやで~ 』
と言って床からビン底黒縁メガネを拾い上げて本人に手渡したんだ。
ちょっと罪悪感もあったのと、阿久に呼ばれて急いでいた事もあってちゃんと相手の目を見ずにやりとりしていたんだけど、メガネを渡す時に偶然に触れたその子の手がぷるぷると震えていたのが気になってその子の顔を見たんだよな。
『 あ、ありがとう・・・ 』
と、消え入りそうな声でそう言った彼女だったが、めっちゃ睨みつけられてたのでびっくりして逃げ出したんだ。
普段、大人しそうな印象だったから余計に怖かった・・・。
眼鏡って結構大事なものだし、それを落としてしまったから怒ったんだろうと思うんだけど、ちゃんと謝ってなかったのも失敗だった。
もっとちゃんと謝るべきだったなぁ、あんまり真剣な雰囲気とか苦手だからついつい茶化してしまう悪い癖がでちゃんたんだよな・・・。
それ以来、ちょっとその子には苦手意識があって関われてないんだよなぁ。
いつもどこに居るかわかんないくらい存在感ないし・・・、あぁ、オレって失礼だよ、そんな事考えて!
あ、そういえばあの子とハンバーガー屋でも会ったなぁ。
その時も阿久や小郷と買い食いしに行ったんだけど、追加でナゲットとポテトを注文しにレジに行ったらその子が居て、うまく注文できてなかったみたいだから手伝ってあげたんだよな。
周りががやがやしててその子の声も小さかったから、あまり聞き取れなくて適当にオレの好きなセットにしちゃったんだけど、そのあとその子の様子をちょっと見たら、すごく苦しそうな様子でコーラ飲んでたから、もしかしたらコーラ嫌いだったのかなぁ。
この世界にコーラが嫌いな人がいるなんて思ってなかったから喜んでもらえると思ったのに凄く恐々とコーラを観察してからまるで毒を飲むかのような表情で飲み始めたのを見て、絶対嫌われたって思ってそれ以上様子を見るのやめたんだよなぁ・・・。なんでこんなことを思いだしたんだろ・・・。
そういや、最近その子をちらちら見かけるようになった気もするしなぁ。
不思議な子だけどちょっと怖いんだよなぁ。
多さわこさん。
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そんなことを思いならが観ていたので映画の内容があまり頭に入ってこなかったけど、どうやら主人公の金ぴかノッポと青と白のずんぐりのロボットの兄弟が宇宙戦争に巻き込まれてしまうお話らしい。
さすが爽が勧めてくれる映画だけあって最新技術のCGを駆使した超大作みたいでビームサーベルとかジリオン銃の撃ち合いとか興奮した。
これはガンダムに影響を受けたハリウッドが本気で作った映画に違いない。
黒衣の敵の赤いビームサーベルが光り輝く頃には、宇利盛男は映画の世界に没入して、多さわこの出来事等は再びすっかり忘れてしまっていた。
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僕は、吉田吉夫。
2年A組の級長を任され、教壇の最前線を任されるエリート高校生だ。
だが、それは世をしのぶ仮の姿。
本当の僕は、授業や成績なんてそっちのけ、追試の常連。
お笑いマニュアルを日夜研究分析するムッツリ陽キャだ。
最近はバンドも初めておかんのベースの練習にも忙殺されていて、お笑い研究の時間がなかなか取れないけれど、毎日の登下校の時にいつもしている漫才の研究は継続している。
漫才は、ボケとツッコミの絶妙なタイミングが重要だ。
頭の中で、ボケ吉田とツッコミ吉夫を想像して登下校の時に脳内シミュレーションしている。
こういう事はAIでは難しい、生の雰囲気とライブ感が重要だ。
だからだろうか、なかなかこれだ!と思える脳内漫才が出来ないでいた。
ただ、いつだっただろう。
そうそう、半年ほど前かな、下校中に完璧な漫才が出来たんだ。
あれは最高によかったし、何より気持ちよかったなぁ。
脳内オーディエンスの拍手喝采も聞こえてきたような気がする。
そういえば、その時のその瞬間、背中で何かの気配がしたような気がして振り返ったんだけど、誰もいなかったんだよなぁ。
ぜったい誰かいたような気配だったんだけど、それからちょっと時々視線を感じたりするようになったんだけど・・・。
そうそう、視線といったらあの時だ。
朝のホームルームで、阿久君から初めて仕込まれて披露してクラスの爆笑をさらった『起立・礼・着陸!』の時だ。
クラスの爆笑に紛れて鋭い視線を感じたんだよなぁ。
気のせいかもしれない、この爆笑に甘んじて自分の笑いに対する努力を怠るなよ、という神様からの戒めだったのかもしれない。
実際、その時はちょっと気が引き締まる思いで更にお笑いを研究しようと決意も出来たような気がする。
そうそう、それはそうとして、AIへのクラス情報の登録もだいぶ進んできたんだけど、どうも数人のクラスメイトの情報が不足している。
特に、多さわこさんの情報がダントツで少ない。
というか、どんな子だったかも思い出せないし、こうして名簿を見てないと存在すら認知できないくらいのクラスメイトだ。
逆に興味深いんだけど、今はバンド練が最優先だ。
文化祭も迫っているし、何より僕はモテたい!
もう一度言うぞ!
僕はモテたいんだ!
この黒縁メガネの優等生顔で、一見恋愛とは無縁と思われるが、何なら宇利君にも負けないくらい恋愛に渇望していると自負しているのだ!
これだけは誰にも負けないんだぞ!
・・・なんて事を考えていたらもうこんな時間だ。
・・・ん?黒縁メガネ。
そうだ、思い出した。
多さわこさんと一度だけ話したことがあった。
珍しくさわこさんが話しかけてくれたんだよ。
『 その黒縁メガネ、カッコいいですね。 』
だった気がする。
眼鏡を褒められたことがなかったので何だか嬉しかったな。
そういえばさわこさんも黒縁メガネだったもんな。
眼鏡の趣味が合うってことなのかなぁ。
吉田吉夫は、すっと黒縁メガネを外してまじまじと見つめながらお気に入りの眼鏡拭きで磨き上げた。
自然とほほ笑んでいたが、吉田吉夫は自分のそれに気が付かずにバンドのロゴマークの作成に没頭した。
ロゴマークが吉夫の満足いくクオリティに仕上がる頃には、さわことの想い出はすっかり忘れてしまっていた。
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今日も微熱がある・・・。
どうした事だろう、風邪などひいたことがない"私"がこんな体調になるなんて・・・。
どうも気になる、あの木札を拾ってからこれだ。
やはり何か危ない代物なんだろうか・・・。
呪いとか呪物とか、そんな物だとしたらどうしよう・・・。
まさか、多さわこが"私"を排除しようとして巧妙に仕組まれた罠だったのだろうか。
いやいや、それはない。
"私"の存在は、多さわこには悟られていないはずだ。
そんなミスは犯していない。大丈夫だ。
そうか、貝差彩子の仕業か。
そうに違いない、偶然に見かけるにしてはタイミングが良すぎだ。
"私"は貝差彩子に嵌められているのかもしれない・・・。
それにしても貝差彩子も要注意だが、宇利盛男は本当に訳が分からない。
どうも小室哲子にもフラれたらしい。
どういう行動力なのだ、しかも商店街の不審者騒動の犯人も宇利盛男だそうだ、情緒の不安定が過ぎてて見てて痛々しい。
そういう時はいつも保健室に行っているな、宇利盛男。
あそこはお前だけの場所じゃないんだぞ。
茶保先生も大変だ。
そういえば宇利盛男とその取り巻きでバンドを結成したようだ。
変なバンド名なので覚えていないが声に出すのもはばかられるような恥ずかしい名前だったような気がする。
問題なのがその顧問に茶保先生がなっているらしい、という事だ。
恐らく大丈夫だと思うが、宇利盛男が茶保先生の魅力を知ってしまったら宇利盛男などイチコロだ。
いや、高校男子など誰でもイチコロになるに違いない。
茶保先生が危ない。
"私"を癒してくれる茶保先生の事は、何としても守らなければならない。
こんなに忙しいのに何故体調が悪いのだ・・・。
そうか、そうなのか。
全部、貝差彩子が悪いのか。
どうしたものか、貝差彩子は手ごわい。
慎重に情報を集めよう。
どうするかはそれから考えよう、遅くはないはずだ。
後編につづく。
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今回は、以下の方に登場してもらいました。
▼ 宇利盛男役のうりもさん
▼ 宇利爽役のsou. さん
▼ 吉田吉夫役のよしよしさん
▼ 阿久佳祐役のアークンさん
▼ 小郷オーエン役の習慣応援家 shogo さん
▼ 貝差彩子役の彩夏さん
▼ 小室哲子/小室友美役のT K さん
▼ 茶保先生役のちゃぼはちさん
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よかったら妄想の世界への飛び入り参加とかどうでしょう(笑)
個人的にまとめている設定メモもご活用くださいませ。
▼ 設定メモ
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