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55歳母親を暴行死させた37歳男は”ヤングケアラー”だった 10歳から家事に追われた男と母親の「狂気の関係」・・・という記事の紹介です。
2023年5月、東京地裁で開かれた傷害致死事件の裁判。37歳の被告が問われたのは、55歳の母親に対し殴る蹴るなどの暴行を加え、その後死亡させた罪だ。
病気の母親と無職の息子が、生活保護費を頼りに暮らす日々。
裁判長が“狂気”と表現した親子に何があったのか。法廷で取材を進めると、被告が小学生の頃から家事全般を担う、いわゆる”ヤングケアラー”だったことが明らかになった。
ちょっとびっくりしたニュースでした。
ヤングケアラーという言葉自体は最近よく聞くようになりましたし、家族が頑張って介護をする事の危険性はずっと危惧してきていましたが、ここまで深刻なケースがあったのかと思うと、これは氷山の一角なんだろうな・・・と思いました。
ーー暴行の最初のきっかけは?
たばこのルールがあったのに(母が)1箱吸ったのが分かり注意した。その時の態度に腹が立った。
「たばこは1日3本まで」
被告が母親の体調を気遣い、家計も気にして決めたルールだ。
糖尿病とうつ病を患う母親は、自分で食事や排泄はできるものの、一日のほとんどを寝て過ごしていたという。
被告は高校卒業後、接客のアルバイトや派遣の仕事を転々とした。
30歳ごろから一切仕事をせず、母親の生活保護費のみで生計を成り立たせていた。
自治体には母親の1人暮らしと偽っていて「不正受給だった(被告の供述)」可能性がある。
30歳頃まで転々と仕事をしていたとの事なので、およそ7年間は母親の介護漬けだった事がうかがえますし、それ以前から介護してきて、いよいよ仕事もできないくらい母親の介護以外が手につかなくなったのでしょう。
10歳頃からとの事なので、27年もの長い間という事になります。
生活保護を受給しているので、定期的に行政の担当者が母親と面会していたのではないかと思うので全く外部の目が入ってなかったとは思えないのですが、不正受給を隠すために介護の事は核にしていたのかもしれませんね。
両親が離婚したのは被告が10歳のころだ。その後は、母親、7歳下の妹との3人暮らし。裁判で被告の妹は、当時の暮らしについて証言した。
【妹への証人尋問】
ーー母親はどんな生活だった?
基本的にゴロゴロ、だらけている感じ。浴びるようにお酒を飲んでいた。朝起きると焼酎のボトルがあって、ひっきりなしに飲んでいた。
ーー被告人やあなたに対しては?
暴力をふるったり、嫌なことを言ったり。高校の制服を破られたこともあった。
ーー母親がうつ病で困ったことは?
(母が)「1人でいられない、寂しい」と。小学生の時に「1人になりたくないから」と学校に行かせてくれないことや、遊びに行かせてくれないこともあった。
ーー家事は?
母はできなかったので、兄が積極的にやって、私も手伝っていた。
ーー当時、誰かに相談は?
できなかったです、そういう力がなかった。みんなバラバラになってしまうと思っていた。幼少期に、兄がいてくれて本当に助かった。
6年ほど前、妹が結婚したのを機に実家を出て以降、被告はつきっきりで母親の面倒を見るようになった。
両親が離婚してからは、母親、長男、妹の3人暮らしだったようで、その妹が6年前に結婚して家を出てから長男はつきっきりでの介護になったようです。
家族がバラバラにならないようにどこにも相談できなかった、というようにも読めますが、やはり外部の目がなくなると異常な事を行っていたとしてもそれ自体に気づけなくなってしまうんでしょう。
「無職であることに負い目を感じ、友達との関係も絶った」
被告は携帯電話も持っていなかった。
誰とも繋がりがなく、介護している母親だけという環境がどんなだったかは想像するしかありませんが、とても過酷だったと思います。
【被告人質問】
ーーお母さんとあなたとの関係、狂気だと思うが、どう思う?
母は普通じゃない人間だったが、自分も普通じゃないことばかりをやった。後悔しています。
ーー暴力をふるわれたお母さんの気持ちは?
自分の息子から無慈悲な暴力をふるわれて、とても苦しかっただろうと思います。
「母親への復讐だったのか」と問われると「恨みや憎しみはなかった」と否定した。
母親が自由に水を飲めないルールを作る(失禁対策として)など、自分でも普通じゃないと自覚があって後悔していますね。
【最終意見陳述】
被告「私の身勝手な行動で母に取り返しのつかないことをしてしまった。母には孫がいて、孫が生きがいで生活していたのに、奪ってしまい、謝っても謝りきれない」
裁判長は「執拗な暴行で被害者の尊い生命が奪われた」と非難する一方で、「酌むことができる事情」として次のように述べた。
裁判長「幼い時から家事全般を担当し、1人を寂しがる被害者に寄り添い、外部との関わりをあまり持たず、基本的に2人で相互依存するような関係で長らく暮らしてきたことが、被告人を歪んだ心理状況に陥らせた」
家族や母親を守りたいという想いが孤立した環境で煮詰まってしまうとこうなってしまう、というケースなのかな、と思いました。
外に助けを求められない、という点はヤングケアラー全般の問題だと思いますので、いかに誰かが気が付いてしかるべき期間に繋げられるかが重要かと思います。
児童相談所相談専用ダイヤル
令和3年7月から児童相談所相談専用ダイヤルが無料になります。
児童相談所相談専用ダイヤルの無料化について
児童相談所は、都道府県、指定都市等が設置する機関で、こどもの健やかな成長を願って、ともに考え、問題を解決していく専門の相談機関です。
育児、里親、ヤングケアラーなどこどもの福祉に関する様々な相談を受け付けています。
フリーダイヤル0120-189-783(いちはやく・おなやみを)までご相談ください(お近くの児童相談所につながります)。
ちゃんと相談窓口があるので、もっと周知されていた方がよいと思います。
小学生15人に1人「ヤングケアラー」成人後も社会から孤立
大人の代わりに家事や家族の世話、介護などを日常的に行う子どもは「ヤングケアラー」と呼ばれる。
厚労省の調査(2022年公表)では、小学6年生の“15人に1人”が「家族の世話をしている」と回答している。クラスに1〜2人の割合で「ヤングケアラー」がいる計算だ。
小学6年生の15人に一人が家族の世話をしているという事です。
これからもっと社会問題としてフォーカスされていきそうですし、やはり何等かの対策は必要ですね。
サポートがあれば働ける人が働けないわけで、以前紹介したニュースでも経済的な損失はかなり大きいと指摘されていました。
大阪公立大学 濱島淑恵准教授(社会福祉学)
「毎日の家事、家族の感情面のサポートなどに追われて、勉強や就職、友達づくりを諦めざるを得ないヤングケアラーも多い」
濱島准教授は、被告の事件について「特異なケースとは思えない」と語る。ヤングケアラーや元ケアラーから「一歩間違っていたら、事件の当事者になっていたかもしれない」という声をよく聞くという。「ヤングケアラー」をめぐっては、4月に発足したこども家庭庁が司令塔となり課題解決に取り組むとされている。だが、濱島准教授は「子どもの支援のみに留めてほしくない」と訴える。
ヤングケアラーに詳しい人に言わせてもこのケースは特異ではないという事ですし、そうなってたかもしれないという経験者も多いそうです。
「ヤングケアラーは20代、30代以降も続く問題。成人すると、家族の世話も“当たり前”と見られ、より一層孤立してしまうこともある。当事者が経験を共有し交流できる場を作るなど、社会全体でサポートすることが重要だ」
やはり孤立させない事が重要ですね。
どうなんでしょう・・・なんというか日本の社会保障ってボロボロじゃないですか?
これで安心して子供産んで育ててって思えるでしょうかねぇ・・・。
困っていても社会が助けてくれないのが現実なんですよね、助けを求めないからという自己責任論にもなるんでしょうけど・・・
本当にそれでいいのかと思う悩ましい問題ですね。