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ストレイシープ

わたしらしく在ればいいとか
主体的に生きてみようとかの
常套句で満足できたら
転がる空蝉に怯えて
夏に苦しくなんかないよな

ひとりの時間は大好きで
夜の満月には惚れこむのに
ひとりの夜を迎えた途端
しんどくなってしまうな

生きていても飢えている
叫んでも諦めている
馳せても蹴とばしている
泣いても願っている

矛盾と不純は命からがら
西暦をひた走るストレイシープ
十字架を忘れた天の底へ
ただ ひとすじの流星あれ

変節な正解も素敵なんだよな

犯人が捕まるミステリや
恋敵が斃されるラブコメディでは
感動しない獣に化けたから
誰も知らない鍵つきの名前
アカギレの胸で唱えた冬

わたしはわたしがキライなんだ
全部粉々にしてやりたいんだ
傷つける運動さえ慣れたから
冷たい哀の歌をかじるの

ループする曲に現実を溶かして
画面の外で歌う君は涙を誘う
バラバラな方角を唆すGPSは
幻を求める過去へ棄ててしまえ

苦悩と無能は命からがら
軽蔑に抗うストレイシープ
讃美歌を離れた指の渦へ
ただ 一夜の祭りあれ

屈折した青海だから君を見つけた

不一致なココロとカラダだから
君のために矛盾を繰り返すけど
全会一致の大人しい表現よりも
わたしらしく告げられる気がするな


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