一歩ふかく
ひとつ歳を重ねるごとに
一歩ふかく が難しくなる
ひとの心には安寧がないことを
知らず知らず学習する
たいせつ は
重たいから
ふれなくなる
うつくしい は
脆いから
笑えなくなる
たのしい は
同調の結果だから
吐きたくなる
かなしい は
人生の敗北だから
泣けなくなる
いつから変わってしまったろう
いつから決まってしまったろう
人間の人間らしさが
きれいに削除された世界で
それでも人間に逢いたいと叫ぶ
子どもの声が聴こえる
その子どもの名前を
確かめるように聞き返して
ひとつ歳を重ねるごとに
一歩ふかく が難しくなるけれど
大切なものを見つめていれば
きっと それが
ふかくふかく
大切になるのだろうと信じている
美しいものから逃れなければ
きっと それが
ふかくふかく
美しく感じるのだろうと信じている