ソフトドリンク
あの夏をやり直せたらと
立ち止まる風が笑っている
名前のない空模様を眺めて
君はただ美しいねって褒めて
それですべて描き切ったように
これでぜんぶ終わりみたいに
笑って笑って 消えた
空の 波間に 消えた
夏をさわがす心音と
湖月をゆらす波紋たち
笛吹男の影さがす
君は何をしたかったんだい?
あれから幾ら経っただろう
想い出は幾ら減っただろう
こころの寒暖差がこわくて
廻りめぐるプレイリスト
聴き足りないを埋めながら
やるべきことは僕の中にあって
考えている途中のものもあって
それでも未だに噛み締めたくて
懲りもせず幼い歌を書いている
わすれていた記憶のリンク
君の好きなソフトドリンク
弾けてしまう 沁みてしまう
暑い 暑い夏の夜に
こぼれ落ちた碧のインク
君が得意だったウインク
閉じてしまう 濡れてしまう
深い 深い森の雨に
はらはらと あの夏が剥がれていく
ソフトドリンクの感触だけが
たしかに君が居たことを思い出させる
今夜も雨に打たれながら
悲しみとも 喜びともつかない
微炭酸の夏が来る