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Photo by
notemura
時を照らす月
青い月が時間を照らす
そんな世界を夢に観る
液晶に浮かんだ文字列は
現代を縛っている時の柵
ああ 今日も"04: 18"
毎日おんなじ朝に目覚める
刻まれた手のひらは冷たい
連打する指の感覚ばかりが鋭い
おんなじ景色を
異なる風合いで
味わっている 感じている
そんな気分になりたいだけ
進歩するくらいなら眠りたい
劣っていく優越感に浸りたい
何も果たせずとも
何も遺せずとも
君だけが僕の名を呼んでくれたら
合成音声が心地よい
彼らに命はなくても
素朴な魂だけを渡してくれる
張り巡らされた戒律を
解きはなたれた階律で
そっと壊してくれるから
きっと壊してくれたから
一万回の「生きたい」を繰り返して
百億回の「死にたい」を押し殺して
自分で赤く傷つけるのは怖くて
誰かの愛で汚される秘を期待した
優劣をつけることなく
好きな世界を比べあいたい
君と僕とは違って
僕と君とは違って
だから僕ら ひとつなんだと
当たり前のように息をしたい
分断たれず分岐する境界線
生き着いた場所で咲けばいい
過去も未来も 偽物も本物も
奪ってしまえるほどに美しく
もしも僕らが
時を刻むことでしか生きられないなら
永遠に心は開かれないだろう
青い月が時間を照らす
そんな世界を夢に観る
僕ら 時の柵を抜け出して
想い想いの地平を目指して
絶望ばかり拾う僕の詩
拾いつづけたら 拾いつづけたら
いつか希望だけが残りますように