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バイト先の常連さんは隣の大学のマドンナでした

○○:お会計1060円です、ちょうどお預かりします。ありがとうございましたー

店長:○○君、今お客さんいないから休憩入ってもいいよー

○○:分かりましたー

僕は井上○○、ここのコンビニでバイトしてる大学3年生

普段は大学が終わって夕方から日付が変わる頃までバイトをしている。そんな僕が1日の中で楽しみにしてる事が2つある

○○:カチッ スゥーハー🚬

1つは煙草。20歳になった時にここのバイトの先輩からもらった1本を吸って以来ずっと吸ってる。その時だけは何も考えずにぼーっとできるから好きだ。

○○:さっむ…早く吸って中入ろっと…

バイトの制服に消臭剤をかけてレジ前へ出る。さすがに煙草の匂いをまとったままバイトするのは良くないので消臭剤はかかせない。

○○:休憩終わりましたー

店長:○○君毎回休憩短いけどいいの?

○○:僕は煙草吸える時間があれば十分です。それより店長が休憩入ったらどうですか?

店長:んー、そうする!じゃあ○○君よろしくねー!

○○:分かりましたー

時刻は23時、この時間になるとさすがのコンビニも人足が少なくなり暇な時間が増える。

○○:(後30分でバイト終わりか、早く終わんないかなー)

そんなことを考えていると店の自動ドアが開き女性が1人入ってくる

○○:いらっしゃいませー(あ、来た…)

お弁当コーナーで商品を選ぶスラッとした女性が、僕の1日の楽しみのもう1つである。

??:お願いします

○○:箸はお付けしますか?

??:それ毎回聞くんですね? クスッ

○○:一応マニュアルなんで…

??:お願いします。

○○:はい

??:昨日も来たけど井上さんいませんでしたよね?

○○:あー、昨日はシフト入ってなかったんですよね。

??:そうだったんですね…でも今日はいてくれて良かったです😊

○○:お、お会計810円です…//

??:はい、ちょうど!

○○:ちょうどお預かりします。こちらレシートです

??:どうも。はいこれ、井上さんに☺️

○○:え、いいんですか?

??:うん!井上さんいつも私と話してくれるからそのお礼にあげるっ

○○:いえいえこちらこそですよ…ありがとうございます!

??:じゃ、また明日ね

○○:ありがとうございましたー

彼女はいつもこれくらいの時間にここに来る常連さん。名前も知らないしどこに住んでるのかも知らないけど、商品の購入を媒介にするこの会話を毎日楽しみにしている

僕がバイトに入ってない日は会えないので極力バイトに入るようにしてるのも彼女が原因である。いつしか僕は、彼女に恋をしていた…

そんな日々が続いていたある日の大学終わり…

友人A:なぁ○○!今日の夜空いてる?

○○:まぁバイトも無いし空いてるっちゃ空いてるけど…

友人A:良かったー!なら頼みあるんだよ!

○○:何?めんどくさいことならやらないよ?

友人A:今日3:3の合コンやるんだけど1人来れなくなったんだよ!だから○○来てくれない?

○○:えー…めんどくさいって……

友人A:頼む!今日のはめっちゃ可愛い子来るらしいから俺ら気合い入ってんだよ!それなのに人数足りなくて出来ないとかまじで最悪なんだ!!それに○○イケメンだから来てくれるだけでありがたいし!!

○○:んー、でもなー…

友人A:分かった!今度飯奢るから!!これでどうだ?

○○:……集合時間は?

友人A:さっすが○○!まじありがとう!!じゃあ19時に駅前集合な、よろしくー!!

そう言い残しスキップで帰っていく友人A

○○:はぁ…帰って準備するか。

ーーーーーーーーーー

○○:あいつら遅いな…もう集合時間なるぞ…

友人A:悪い遅れた!!

○○:おせーよ…

友人A:すまんすまん!こいつが電車間違えてさー!

友人B:ほんとごめん!

○○:まぁギリギリ間に合ってるし、店に遅れちゃまずいからもう行くぞー。A道案内よろしく

友人A:よっしゃ!着いてこーい!!

〜〜〜〜〜

友人A:ごめんなさい遅れましたー!

女性1:いえいえ!こっちもさっき来たばっかりなので大丈夫ですよ!

女性2:それに1人遅れてくるっぽいので安心してください!

友人A:そうなんですね!それなら先に始めちゃいますか?

女性1:ですね!皆さん何飲みますか?

友人A:とりあえずビールで!

友人B:俺もビール!○○は?

○○:僕も同じで

女性2:じゃあ私たちもビールにしよっか!すみませんビール5つお願いしまーす!

友人A:先に自己紹介でもしますか?

女性1:ですね!じゃあまずは私から…女性1です!趣味はー、カフェ巡りです!

女性2:はい!女性2でーす!最近は映画鑑賞にハマってます!よろしくお願いします!

友人A:俺は友人Aです!よろしくです!

友人B:友人Bです!よろしくお願いしまーす!!

○○:えーっと、井上○○です。趣味は…特に無いですね、よろしくお願いします。

友人A:おいおい、趣味無しって…

女性1:まぁでも今日で見つかるかもしれないですし💦

友人B:…だね!女性2ちゃん悪いけどこいつにおすすめの映画とか教えてやってよ😅

女性2:うん!任せてー!!

「お待たせしましたー、ビール5つになりまーす」

友人B:お、きた!じゃあ乾杯しますか!せーの

乾杯!!

〜〜〜〜〜

30分後

友人A:でさー、その時こいつが…

??:すみません遅れましたー!!

女性1:あ、来たー!遅いよ美波ー!!

美波:ごめんね!予定長引いちゃって…

女性2:何飲むー?

美波:んー、ビールにしよっかな!

女性2:すみませーんビール1つ!!

女性1:美波、自己紹介してあげて?

美波:うん!梅澤美波と言います、よろしくお願いしま…す……

○○:………

間違いない、あのバイト先の常連さんだ。普段はマスクしてて顔がよく分からなかったけど僕と目が合って固まってるのを見て確信した。

女性1:こちらが私たちの大学のマドンナの梅澤美波ちゃんです!!

美波:ちょっとやめてよその呼び方…//

名前梅澤美波さんって言うんだ、初めて知ったな。見た目通りのいい名前だな…

友人A:てか何?さっき○○の事見て固まってたけどもしかして知り合い?

美波:……いや!親戚に顔が似てたからちょっと見ちゃってた…ごめんね?

○○:あぁいや、全然です//

友人B:あれー?○○顔赤いぞー?さては梅澤さんに照れてるな!?

○○:ち、ちげーよ!これは酔ってて顔赤いだけ!!///

友人B:ごめんね梅澤さん、こいつ惚れちゃったみたい😄

○○:勝手に決めつけんな!//

美波:ふふふっ、友人B君面白いね☺️

〜〜〜〜〜

それから1時間ほど経ち、皆の酔いも回ってきた頃

友人A:美波ちゃんって今彼氏いるの〜?

美波:今は居ないかな…?

友人B:え〜以外だわ!絶対いると思ってた〜

美波:2人こそ彼女いそうですよ?

友人A:いや〜俺らはまったくだね!

○○:(くだらないことばっか聞くなよ…)

○○:すまん、ちょっと席外すわ。

恐らく誰も聞いていないであろう報告をして、財布とスマホだけ持って店外へと出る

○○:カチッ スゥーハー🚬

○○:あー、早く帰りたい…財布とスマホしか持ってきてないしもうこのまま帰ろっかな…

そう独り言を呟くと後ろから

“じゃあ私も一緒に帰っていい?”

○○:うわ…びっくりした……梅澤さんどうしてここに?

美波:んー、○○君…いや、井上さんの事が気になってね?

○○:やっぱ気づいてますよね。

美波:まさか合コンで会うとはねー

○○:僕もまさかバイト先の常連さんが来るとは思ってませんでしたよ。名前も今日知りましたし

美波:確かに!名前教えてなかったもんね〜

○○:スゥーハー さ、戻りましょ?

美波:ねぇ… ギュッ

梅澤さんから急に手首を掴まれる

○○:ど、どうしました?

美波:ほんとに2人で今から帰らない?

○○:でもお金とか払ってないし…

美波:そんなの明日渡せばいいでしょ?

○○:でも持ち物とか…

美波:○○君の荷物、財布とスマホだけだよね?

○○:………

美波:ねぇ、ダメ…かな?

○○:ギュッ 行きましょ?

僕は友人たちに心の中で平謝りしながら、梅澤さんの手を握りその店を後にした

〜〜〜〜〜

2人で抜け出した帰り道

美波:そう言えば連絡先交換してなかったね。

○○:まぁ基本会うのバイト先しかないんでしてないのは普通じゃないですか?

美波:じゃあ今しよ?

○○:……僕で良ければ//

美波:やったっ!!

小さくガッツポーズをする梅澤さんは普段の綺麗な感じとは違いとても可愛かった。

美波:はい!これ私のLINEのQRコードだから読み取って?

○○:分かりました

画面には友達欄に新しく追加された『美波』の文字が並ぶ。それを見てとても嬉しくなったのはここだけの秘密

美波:ていうか○○君煙草吸うんだね。気づかなかったよ

○○:バイトの時は匂いつかないように気をつけてましたからね。

美波:なんで吸ってるの?

○○:んー、あまり理由は無いですけど強いて言えば他に楽しみが無いからですかね。

美波:じゃあさ、煙草以外に楽しみがあれば辞めるの?

○○:まぁ…その時考えますかね。

美波:………ねぇ

○○:なんですか?

美波:も、もしね?もしも○○君が煙草辞めてくれたら付き合ってあげるって私が言ったら…どうする?

梅澤さんの口から飛び出た言葉に少し驚いた後、酔った勢いで冗談っぽくこう言った

○○:そうですね…梅澤さんみたいな綺麗な人にそんなこと言われたら僕なら絶対に辞めるでしょうね。

美波:そっか…ならさ、

梅澤さんは僕の顔を両手で掴み、まだ煙草の匂いが微かに残る僕にそっと口付けをした。そして唇を離して一言

美波:煙草…辞めてよ。

そう呟いた。

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