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意思疎通を図り、患者から教わることで臨床力が上がる
はじめに
今回は、"自身の臨床力を引き上げる鍵は指導対象者と意思疎通を図り、情報をうまく取り入れること"、という内容を書きます。
私は現在、スポーツ整形外科クリニックに勤務しています。肩肘診療に精通した医師や理学療法士と連携し、手術後やスポーツ障害後のリハビリテーション指導に携わっています。
患部の治癒過程を損なわない
「マッサージが痛いとチームのトレーナーに言っているのに、全然聞く耳を持ってくれないんですよ。もみ返しみたいになって、腕が全然挙がらなくなっちゃいました。」
通院する色んな選手からこのようなお話をこれまでに何度かお聞きしました。
マッサージするときの力が相手にとって強すぎないか、不快な痛みや違和感を抱いていないかなど相手の反応を確かめながら治療を進めるべきなのですが、その確認作業を怠るセラピストやトレーナーが非常に多いです。
私が勤務するスポーツ整形外科クリニックでは、上司から口酸っぱく「患者の反応を確認する重要性」について指導されます。
そのため患者に治療したり、運動を指導したりするときは
「この動きで肩の痛みはひどくなりませんか?」
「あまり無理せず、痛みを感じたら教えてくださいね。」
「仰向けに寝たときの痛みはありますか?」
などの声かけを徹底します。
もし痛みや違和感を覚えたら、マッサージの力加減を調節したり、運動の種目を変えたり、痛みを感じにくい体位に変更したりして、決して無理をさせません。
セラピストやアスレティックトレーナーが行う治療や運動指導は、患部の回復を促したり、体の機能性をできるだけ高めるために行うものであり、患部の治癒過程を阻害してはなりません。
患者や選手からフィードバックをもらい、治療や運動が適切かどうかを見極めることが重要です。
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治療後や運動後の体の状態や反応を確認する
治療中や運動中は大丈夫だったけど、翌日や翌々日に痛みが出てしまった、と話す患者や選手がいます。
体の生体反応として出現する関節の腫れや熱感、痛み、筋肉痛などが患部の組織状態を教えてくれるため、そういった情報を拾い上げたり、聞き出したりすることがとても重要です。
「治療した翌日はどんな調子だった?」
「ハムストリングスの張り感や疲労感はどうだった?」
「あの後関節が腫れたり、熱を持ったりする感じはあった?」
治療後や運動後の体の状態や反応をよく確認し、患部の組織状況を推測しながら治療計画を練ったり、運動プログラムを立案したりすることが大事です。
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大腿直筋の筋挫傷を起こした大学生アスリート
私が最近、経験した症例を紹介します。
6週間ほど前にサッカーの試合中に大腿直筋という太ももの前にある筋肉を痛めた選手がいました。
チームのトレーナーと一緒にリハビリを行い、競技復帰に向けて段階的に練習の強度を上げていたのですが、ゲーム形式の練習を3日間続けた翌日、患部に強い痛みを感じたそうです。
そのときの体の状態を詳しく確認すると、再受傷の所見は全くなく、体の機能的な問題によって患部にすごく負担がかかっていました。
私は彼に
「ゲーム形式の練習に耐えられるような体の状態にまだなっていないということだよ。再受傷したような所見はないけど、患部の回復を促しつつ全身の機能性を高めることが課題だね。やるべき練習を積み上げていけば大丈夫なんじゃないかな。」
と伝えて、体の機能を上げるために必要なセルフエクササイズを指導しました。
このやり取りを後から振り返ると、
・練習の強度を上げるなかで体の状態がどう変わったか
・これまで行ったリハビリの内容や現在の復帰状況
に関する聞き取りをしっかり行うことができたため、治療やリハビリテーションを円滑に進めるための具体策を提示できました。
選手の反応をよく確かめながら、患部の組織状態を詳細に把握するための理学検査を実施できことも良かったのではないかと感じました。
客観的な評価に加えて、選手自身が持つ体の感覚などをしっかり聴取して、治療やリハビリテーションに活かすことが臨床力につながります。
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終わりに
指導対象者からいかに情報を聞き出して、治療やリハビリテーション、トレーニング指導につなげるかがすごく大事です。
「〇〇理論」「△△メソッド」などの理論や情報がありふれる世の中ですが、実際の臨床では指導対象者から教えてもらう情報をもとに、適切に体を見立てる力が求められます。
既存の理論や知識だけで自身の臨床力を引き上げることはやはり難しく、指導対象者からのフィードバックや情報をうまく取り入れることが必要だと感じます。
反応をよく確かめて、指導対象者と意思疎通を丁寧に図ることがより良い臨床につながります。
それではまた次回。
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