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[書評]ヒルビリー・エレジー

中盤までは人によっては読みにくいかもしれない。
人物の数が多くて最初のうちは誰が誰だか把握しにくいのと、恐らくはまともな環境で育った人には聞くに堪えない著者の少年時代の話をオブラートに包んで聞きやすくするために、少し捻った間接表現が多いからだ。
だが終盤は意味が取りやすく、挫折しそうな人は後ろの方から読んだ方がいいかもしれない。

著者のユーモアセンスは私と合ったし、また掃き溜めと上流階層の間で揺れ動くアイデンティティーの迷いも、著者のような暴力や怒号が飛び交う家庭でもなかったが、田舎者だからか我が身のように感じられた。

この本はトランプ現象とセットで語られることが多いようだが、その文脈を離れても十分に読みごたえがあるように思う。
とにかく筆致の明るさに救われる。

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