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小説001 特捜部のお仕事

僕は本日ついに参考人を落とし、自白調書を取ることに成功した。
上司に報告すると彼のいつものしかめ面が緩み、僕はこの表情を見るために仕事をしているのだと実感する。

「よくやった」
「ありがとうございます。しかし僕は高梨主任に従って捜査を行っただけです。どうしたら主任のような見立てができるようになるのでしょうか?」

見え透いたおべんちゃらだが、この手の煽てで彼が気分を害することはない。

「いつも言っているが、社会的成功者はどこかで無理しているものだよ。その歪みがどこに生じているかキャリアを積めばピンと来るようになる。君もいずれわかるようになるよ」

案の定満更でもなさそうだ。

誤解して欲しくないのだが、彼は決してバカではない。それどころか現役一二を争う非常に優秀な検察官だ。
特捜がその気になればどんな事件も作り出せる。しかし裁判所や国民に疑念を抱かせない程度には信憑性が必要で、主任はどこをどう突けばその信憑性を作り上げられるか、その嗅覚が抜群なのだ。

つまり主任の見立てとは、三枝典人が自身の経営する会社の金を横領をしたというさっき僕が仕上げた調書のストーリーではなく、三枝の「自白」により与党のある大物政治家を引っ張り出せそうなことを指している。

後記

人生初にしては上手く書けてるのではなかろうか(自画自賛
見てきたかのような嘘調書は、もしかすると私にも作れるかもしれない。
ちなみにこの先はノープラン。展開はこれから考える。

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