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休みの午後。暑さを避け、公園のベンチで休んでいた時のこと。ふと、自分が子供の頃に憧れた風景を思い出した。

あれは、テレビのワンシーンだったと思う。

自分と同じぐらいの年の子が、お父さんと手をつないで広い公園を歩いていた。すると、そこにアイスクリーム売り場があった。そこはとても華やかで、どれも美味しそうに見える。

子供が食べたいものがわからず迷っていると、お父さんが手をつないでないほうの手で、一つのアイスクリームを指差した。真っ赤なイチゴのアイスクリーム。子供はとても嬉しそうに頷いた。小さな子供の手には少し大きいように見えたが、お父さんもとても嬉しそうにしているのが印象的だった。

2人は手をつないだまま、公園の大きな樹木の下にあるベンチに腰掛けた。

自分がなぜ、今になってこの光景を思い出したのか。おそらく、今日が亡くなった父の誕生日だったからだろう。亡き父は旅行やドライブが好きで、出かけた先では必ずアイスクリームを食べていた。もちろん、家族も一緒に食べた。

恥ずかしがり屋だった自分は、父と手をつなぐことはなかった。でも今なら、天国にいる父と手をつないでアイスクリームを食べる姿が想像できる。

今年のお盆には、父の大好きなアイスクリームを持って、帰省しよう。そう決めた足元で、草が風になびいていた。

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