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#7 アクチュアリー試験合格体験談① ~導入~

1.はじめに

今回はいつもののんびりな記事とはテイストを変えて、私が社会人になってから取り組み続けていた資格である、「アクチュアリー」の資格試験合格までの体験談を書きたいと思います.

Xにてつぶやいたところ、意外と需要がありそうなので、試しに書いてみようと思ったからです.

いただいた反応は自分の想像以上でした.

例に漏れず多分(絶対)長くなるので、いくつかの記事に分けて記載していきたいと考えています(というか、今回の記事はほぼ自分語りと当たり前のこと、そして初心者に向けたほんの少しの受験戦略を書くだけで終わっています…笑.そんなの興味ねえよ、と言う方は次回以降の更新をお待ちください.なんとか専門科目まで完走したいと思っていますので、気長にお付き合いいただけると幸いです.).

これから書く内容は、あくまで「私の場合はこれでうまくいきました」、というものなので、必ずしもこれを真似してうまく行くとは限らない点、予めご了承ください.
また、ここに記載する一切の内容は、私個人の考えに基づくものであり、私が所属する会社の考えとは全く関係がないことをお断りしておきます.
なお、一連の記事は、すでにアクチュアリーについてある程度ご存じの方、資格勉強初学者もしくはある程度勉強中の方くらいまでを対象に記載します.そもそも「アクチュアリーって何?」という方は、まずはじめに「公益社団法人日本アクチュアリー会」の公式のHPをご確認ください.

2.私の経歴と受験遍歴

受験の体験談を書く前に、私の経歴や受験遍歴について、簡単に触れておきたいと思います.

(1)私の経歴

  • 東京大学の理学部数学科卒業です(学部内で一番数学ができないことを自負するくらい数学は苦手です.この点もいつか記事にできたらと思うのですが).
    ゼミは代数幾何学と代数的整数論を半年ずつ.解析は大の苦手でした.

  • 2020年4月に、ある損害保険会社に「アクチュアリー採用」として入社し、以後ずっとリスク管理部に所属しています.現在5年目です.

  • 当社のERMに関する実務を担当しています.具体的には内部モデルを用いたリスク量計測、経済価値ベースのソルベンシー規制に関する対応等です.あまりこれらの業務の詳細には立ち入れないのでこの程度で.

(2)私の受験遍歴

記載のとおり、私は学部卒でアクチュアリー採用として入社したわけですが、入社時点での合格科目数は「0」でした(同期の中で私だけだったんですが…).
もっと言うと、学生の時は4年生の冬にお試しで受験しただけで、「入社してからガチればなんとかなるだろう」と思っていた部分もあり、本格的な試験勉強は入社してから始めたわけです.
(この辺りの就活〜内定者あたりのムーブについても、需要があればいつか記事にしたいと考えていますので、コメント等で教えて下さい…!)

とは言いつつ、自分だけ科目を1つも持っていない状況は、控えめに言って結構焦ります.今年から受け始めて、勉強はガチるつもりだけれども1科目も合格できなかったらどうしよう.同期や周りの若手の先輩たちにどんどん差をつけられてしまう…
焦った上で編み出した私の受験上のポリシーは、「受かっていない科目があればとにかく全部受ける」でした.この辺りの戦略上の趣旨は4.をご覧ください.

そんなこんなで、私の受験遍歴は以下のような形になります(ローマ数字は不合格ランク.なお、私の記憶ベースです).

  • 2020年度:数学⚪︎生保数理⚪︎、損保数理Ⅲ、年金数理Ⅲ、会経投Ⅲ

  • 2021年度:損保数理Ⅱ、年金数理⚪︎、会経投Ⅰ

  • 2022年度:損保数理⚪︎会経投⚪︎

  • 2023年度:損保1⚪︎損保2⚪︎

特筆すべきは2023年度の専門科目を一発でダブル合格した部分でしょうか.損保1、損保2の試験対策の詳細は専門科目編に譲りたいと思いますが、まあ受かっていない科目はとりあえず全部受けて、概ね各年度に1〜2科目のペースで合格を勝ち取れています.比較的順調?だったのかもしれません.

3.申し込んだ科目はブッチしない

※以下、このセクションでは半分自己満で当たり前のことを長々と書くので、興味がない人は4.まで飛ばしてください(というか、4.もいらないかもしれません).

ここから徐々に体験談やハウツーの内容に入っていきたいと思います.今回の記事では、どっちかというと心得みたいな部分が多くなり恐縮ですが…

まずはじめの基本的なアドバイスは、
その科目の内容を一回はさらうことができているならば、たとえ合格できないと考えている完成度であったとしても、絶対ブッチせず受験会場にいく
ことです.社会人の方には釈迦に説法ですね、大多数の人は試験の日程と受験結果を会社に報告していると思いますので、ブッチする選択はほとんどないと思いますし(ブッチするとすぐ会社にバレちゃいますよね).というか、ブッチすると受験料が無駄になるので、大多数の人にとっては釈迦に説法ですが、ちょっとお付き合いください.

(1)ラッキーできる可能性がある

まず、「その年に出題される問題の難易度が大きく低下している場合」があります.アクチュアリー試験の問題は、年度による難易度のブレが非常に大きい(本当にめちゃくちゃ大きいです)ため、ラッキーな年であれば本当にめちゃくちゃ簡単やん、という問題が出ます.
そのため、たとえ通常の難易度の問題が出る年であれば不合格Ⅱのレベルであったとしても、ラッキーしちゃえば合格の可能性があるわけです.

アクペディアのHP(https://www.vrp-p.jp/acpedia/4251/)より引用

実際、私は2021年度の年金数理でラッキーしています.2020年度の問題を試験会場で受けたときは、そもそも捨てていた科目であった上に非常に難易度が高い年だったので、問題を一通り眺めて「うん、無理」と1時間で速攻退出しました笑.当時はまだ五反田でみんな集まって試験を受けていたのですが、受験生最速レベルで手をあげて退出しました.まじで1問くらいしか解ける問題がなかったと記憶してます.
次の2021年度は、実は損保数理と会経投が本命で、年金数理は捨て気味だったのです(いや、当時は両方落ちてるやんというツッコミはさておき…).一応年金数理も過去問の基本レベルの問題は一通り解けるようにして、大問もある程度ヤマを張って(ティーレの微分方程式だったように記憶しています)、「まじ簡単になっててくれ」と念じながら受験会場に行きました.

当時、Xにポストまでしていました笑

そうすると、見事ラッキーを引き当てられたんです.2020年度の問題が難しかったからか、2021年度は本当に基本的な問題しか出ませんでした(実際、上表の合格率も2020年度と比較するとめちゃくちゃ高いです).しかも、大問のヤマまで当てるという二重のラッキーをかまし、なんとか1科目だけでも合格することができたのでした.

もちろん、全然ラッキーできない年もあると思いますし、その方が全然多いかもしれません.でも、試験会場に行かなければ、そのラッキーを拾うことは絶対にできません.

(2)結果的に「コスパ良く」合格できる可能性がある.

アクチュアリーとして保険会社や信託銀行に入ると、アクチュアリーの受験科目の中でも親和性の高いものとそうでないものがあると思います.私の場合は損害保険会社にいますので、数学や損保数理は親和性がすごく高いです.当たり前のように業務で統計に関する知識や損保数理、特に個人的には第10章のリスク管理の知識が必要になります.生命保険も、損保では積立保険を販売している関係上、そこそこ親和性があります(考え方自体は損保数理にも6章で出てくるので絶対必要です).
一方で、あくまで個人的な感想なのですが、年金数理は業務中も試験対策上も、まじで年金数理のためにしか使えるところがありませんでした.もちろん業界を変えれば年金数理こそ必須、損保数理なんていらんでしょ、と言うこともあると思うのですが、そこはお互い様です.何が言いたいかというと、「自分にとって重要性が低い科目はコスパ良く合格した方がいい」と言うことです.

親和性の低い科目を最後まで残してしまうと、その一科目を取るために泥沼化してしまう恐れがあります.〇〇数理以外は結構順調にきたのに、最後のこれを取るためだけに4年もかかってしまった…と言うことにもなりかねないです().しかも、残った科目に確実に合格しようとすると、普通の受験生には解けない難しい問題や、あまりでない細かい論点の問題まで対策しようと、普通の人であれば考えると思いますので、試験合格のためだけの勉強(しかも実務ではあまり役に立たないかもしれない科目)に大変な時間と労力を使うことになってしまいます.受験にあたってのプレッシャーも相当なものになるでしょう(もちろん、試験問題との巡り合わせが悪くて、結局そうなってしまう、みたいな場合もあるにはあるのですが…).

ブッチしなければ、「自分の予想しなかったレベルの少ない勉強時間で合格できてしまう」可能性がほんの少しあります.「アクチュアリーは、結局資格試験に合格してからが本番」とはよく色んな人に言われるお説教ですが、どんな理解度、勉強方法であったって、早く試験に合格するに越したことはないわけです.そう考えると、3時間の試験時間になんとか耐えて、ラッキーを引くための博打を打つことの期待値は、そう低くはないと思うのは私だけでしょうか(私の周りでは、平成24年か25年の年金数理の“ビックウェーブ”の時に、ほんの数時間しか勉強せず、極限方程式だけ覚えて生保数理の知識と組み合わせて受かってしまった人がいます.いくら生保数理ができるとはいえ、相当な博打に成功しています).
1年以上も勉強時間を節約できる可能性があるので、ブッチはしないことを個人的には強く推奨します.もちろん、一通り基本問題は解けるくらい勉強してることが前提にはなりますけどね.

4.受験科目を多くするのも選択肢の一つ

私は初めてガチで受験勉強したときは、基礎科目の5科目を全て受験し、しかもそこそこ全科目対策をしていました.この辺りの話も詳しい内容は基礎科目編で触れようと思うのですが、普通に働きながらなので、めちゃくちゃしんどいです.でも、根性がある人にとっては結構アリな戦略だと今でも考えています.

(1)博打を打つ

これは3.で記載した内容と通ずる部分ですね.たとえ勉強が間に合っていなくても、試験問題の方から合格を譲ってくれるケースに少しでも期待しつつ、受験料をつっこんでいくという作戦です.

(2)勉強の効率上の観点から

勉強をしているとわかってくるのですが、各科目の間でそこそこ内容が被っているとことがあります(ほぼない科目もあるけれど).例えば、

  • 数学の損保数理の部分、とか、

  • 損保数理の数学の部分、とか、

  • 損保数理の生保数理の部分、とか、

  • 年金数理の生保数理の部分、とか.

要は、科目横断で必要となる考え方がそこそこあるので、まとめて勉強してしまえば結構効率がいい部分がある、と言うことです.
私の感想としては、世間一般では「損保数理は数学に合格するか、ある程度勉強してから」とか、「年金数理は生保数理に合格するか、ある程度勉強してから」と言われている印象ですが、それはもちろんある程度正しいとは思います.でも、それほど勉強の順番に拘泥せず、むしろとりあえずまとめて勉強してしまって先に全体像を掴んでしまえばいい.そのあとで、そのまままとめての勉強を続行するか、優先順位を自分で考えてつけれいいのでは、と考えています.

5.次回予告

一つあたりの記事がとても長くなるのが嫌なので、今回はひとまずここで切りたいと思います.まだ全然個々の科目の具体的な勉強方法にすら触れていないですが(笑)、これらはいずれも次回以降にお話する予定です.
とりあえず、次回は「科目によらずやっていた私の勉強方針」を中心にお話していきたいを思います.私は型にハマったような「コツコツ系」なのですが、例えば以下のようなトピックについてお話したいと思います.

  • 広く浅くを繰り返して徐々に深く

  • ストラテジーには頼りすぎない

  • 三種の神器は「教科書・過去問・できなかった問題ノート」

  • なるべく早い時期からコツコツと

個々の科目で使用していた他の教材や、具体的な勉強方法等については、余裕があれば次の会、そうでなければ次の次の会から、お話しようと思います.

スキやコメント(ご質問・ご希望も含む)等、反応いただけると励みになりますので、たくさんいただけると嬉しいです(あまりにも反応が薄ければ、お蔵にします…).
それでは、ここまでお読みくださり、ありがとうございました.

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