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街中のランウェイ

にゃお

黒猫が目の前をゆったりと通る。
その足取りは一歩一歩がとても優雅で、まるでランウェイを歩くモデルの如く、色艶やかなその毛並を見せびらかせている。昇ったばかりの朝日がスポットライト役を買って出ており、一層モデル感を引き上げている。
優雅さを忘れずに目の前を通り、斜向かいの駐車場に止まっている車のボンネットに飛び乗り、モデルは次に”毛繕い”というポージングを始めた。
まずは前足、顔をなで、しなやかな体躯を艶めかしくくねらせ、横腹を丁寧に毛繕いしていく。
噂に聞くと、猫の舌はザラザラしており、人肌を舐められると、まるでヤスリをかけられているかのような痛みを味わえるのだという。しかし、このような自信を毛繕いしている光景を見ていると、にわかに信じがたい事実である。

しばしそのまま、ポージングを眺め続けていると、「金を取るぞ」。と言わんばかりの鋭い眼差しをキッと向けてくる。猫にとって金とは、やはり猫缶だろうか。それとも魚、カリカリフード、はたまたチュールとか?
さすがにどれも持ち合わせがないわたしは、睨みを効かせているモデルに平謝りしながらそっと視線を逸らし歩き出す。数歩進み、チラリと目線だけ後ろを見やれば、「ふんっ、全く失礼するわ」。とでも言いたげなオーラを滲ませながら、毛並が整い艶やかさが増した素敵なからだに、極限までにライトを浴びせカメラマンが来るのを待ちわびていた。

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