誰にでも出来るお手軽な速読法
速読という言葉を初めて聞いたのは高校1年の時だった。どこで目にしたのか今となっては憶えていないが、ものは試しと怪しげなセミナーに行くと、一冊の本を数秒で読む人もいるというから驚いた。眼球運動を速くするトレーニングを行い、一度に読み取る視野を広げる練習をし、呼吸法で精神を集中させて、文字を読まずに映像として見る。今で言うフォトリーディングに似た手法だった。フォトリーディングという言葉が出来る前なのだから画期的であったことには違いない。
結果的には誇大広告に騙されて高い教材を買わされた詐欺被害とも言えるが、訓練を通じて得るものもあり、実際に本を読む速度はそれなりに上がったから悪い経験では無かったと思いたい。こんな風に思うということは、まだ騙され続けているということなのかも知れないが。
このセミナーで初めて聞いたのは速読という言葉だけではなかった。呼吸法もそうだし、呼吸法の時にイメージする丹田(臍の下の辺り)、集中した時に表れるα波と呼ばれる脳波。こうしたある種の専門用語を多用するのも騙しのテクニックの一つなのだろうけれど、呼吸法によってリラックスした状態で集中出来るようになることは受験にも役立ったし、読むスピードの向上もそうだ。
東洋医学というものの存在を知り、ヨガや禅の思想に触れ哲学に興味を持った。脳にも興味を持ったし、精神や心に関心が向いた。
読むのではなく見る、というのは誰でも実践可能だと思っている。普段の習慣が邪魔するだけで、それさえ取っ払えれば出来るようになる。
読む時に、文字を目で追いながら心の中で架空の音を発しているのをやめるだけだ。心の中に音など無いのだが大抵の人は心で音読をしてしまっているはずだ。これをやめればいい。
例えば、次の文を見て欲しい。
ただ見るのでなく口には出さないまでも心の中で音読してしまった人は、一度目を閉じて心を落ち着け、心の中で音読しないことを念じてから、見ることだけを意識してもう一回、見てみて欲しい。
どうだろうか。1回目よりは読まずにいられたのではないか。私たちは文字だと思うと読む癖がついてしまっているので、画像だと思って見ることに慣れる必要がある。
それでは、少し慣れたところでもう一例。次の文を読まずに見てみよう。
今度は見れただろうか。映画の字幕を問題なく追えているという人には簡単だったのではないか。映画の字幕は音読していると追いつけないはずだからだ。
もしどうしても読んでしまうという人は、文を細切れに捉えてみよう。
これであれはやりやすいはずだ。
なぜなら、単語単位で見て捉えることは多くの人が普段からやっていることだからだ。
文字が目に入る時は単なる画像で、読んでいるのは脳。
文字⇒画像⇒音⇒意味という経路から音の部分を省いて、文字⇒画像⇒意味とするのが速読の第一歩だ。
もちろん、これが出来なかった人も諦める必要は無い。そんな人は伸び代が大きいはずだ。
一番良い身近な練習素材は紙の新聞だと思っている。新聞は一行の文字数が少ないからちょうど良い。一行ずつ(読まずに)見ながら目を左に流して行けばいい。
この時、何が書いてあるのか意味を読み取ろうという意識を強く持ちつつ、音読しないことも意識する。ただ眺めているだけではいつまで経っても文の意味は読み取れない。画像としての文字を漠然と眺めながらも、それと同時にしっかり意味を掴もうという意識が大切だ。
新聞がなければ雑誌や本でも、ネット記事でも良い。試してみて続けることが近道だ。
音で読まないこと、しっかり意味を把握しようという意識を持つこと。
この2つを実践するだけで、あなたの読むスピードは格段に早くなる。
普段からあまり本を読まないって?
そういう人こそチャレンジしてみて欲しい。そして、今からでも遅くないから沢山読んでみて欲しい。
おわり