安心してください。パンツは穿いていませんけど
“ノーパンツ（ボトムなし）”スタイルなどのように、『アンダーウェアやショーツをあえて見せたり、マイクロミニ丈のトップで脚長効果を狙ったりするセレブが急増中』だという。
何でも『難易度高めの最先端スタイル』らしい（『』は記事からの引用）。
『「ショーツだけはレベルが高すぎる……」という人には、・・・透け感のあるアイテムとの組み合わせ』がオススメ、というが、いくら脚を長く見せるためとはいえ無理でしょと思う人が多そうだ。
ファッションは、身に着けるもので自分を表現するという側面がある。同時に、ステレオタイプに陥らないために常に変化し続ける事が求められる。だから毎年、毎シーズン新しいスタイルが作られる。それを巷ではトレンドという。
トレンドは商業的な理由で作られているものでもあるので、流行り廃りのサイクルは早い方が良い事になる。ハイファッションはそうした巷のトレンドの切っ掛けになるものではありながら全てがそのままの形で流行するとは限らないので、街がボトムを穿かない女性で溢れることはきっと無いだろう。
下半身がパンツだけのパンツレススタイルを男性がやったら即通報レベルで、これはファッションだという説明は聞き入れ無さそうだ。
女性が普通にやっていることでも男性がやると違和感があったりちょっとくだけて見えてしまうから不思議だ。
男性が穿くスカートは言うまでもなく、七分丈のパンツや女子並みにデコルテを広く見せるシャツを男が着こなすのはかなり難易度が高い。
見た目の違和感は慣れによるもの、変なのは着ている僕ではなくそれを変だと思ってしまう脳の方だと言ったところで、そんな慰めは限りなく無力だ。
ファッションの良し悪しの基準は何だろうかと考えてみると、男子の場合は「カッコイイ」の一択。しかも「カッコイイ」は意味的にかなり限定的で、カッコイイ奴が着れば何でもカッコイイが、格好悪い奴が着れば「カッコイイ」にはならない。いかつい格好良さやクールな格好良さなど一見バリエーションが豊富なようだが、「カッコイイ」は見た目だけではなくて生き方や考え方、バックグラウンドみたいなものが伴うのは同じだ。見た目「カッコイイ」格好をしても精神性が伴わなくてはかえって格好悪い。
その点女子のファッションは多彩だ。ファッション文化の歴史の違いかも知れないが、色彩も形状もアイテム数も自由度が高く、多様な選択肢がある。アクセサリーやメイク、持ち物まで、身の回りの全てがバリエーション豊かなファッションアイテムになっている。男ならチャラく見えてしまう茶髪も全く問題無いどころか、オフィシャルのドレスコード内での自由度が違いすぎる。
そして何より、女子のファッションセンス、その基準の一つは世界に羽ばたいているくらい日本女子のファッションリテラシーは高い。男子の「カッコイイ」と比較するのはおこがましくすらある。
そう、それは「カワイイ」だ。
カワイイの許容度は広く、女子自体が生まれながらにカワイイ存在という前提があるので、精神性とは無縁だ。カワイイものは理屈なくカワイイのだ。だから男子のカッコイイもカワイイに取り込まれてしまうくらいだ。なんか強がっちゃってカワイイ！ と。
脚を長く見せようとパンツを穿かずにショーツを見せて格好良さをアピールしているセレブレティはカワイイの前ではひれ伏すしか無いだろう。
日本の女子高生が制服のスカートを限りなく短くし脚を長く見せ、さらにはルーズソックスによっていわゆる絶対領域と言わしめるカワイさを生み出したのは三十年も前だ。
しかも、全てを見せるのではないところが高度なファッションセンス。美しく鍛えた身体美をありのままに晒す事がファッションなどと言うのだとしたら、それは短絡的なカッコイイの追求でしかなく、カワイイの持つ奥ゆかしさや創造性には到底及ばないだろう。
とか何とか書いてみたが、これは街にパンツを穿かない女性が溢れたらとても安心など出来ないなという不安の裏返しに過ぎない。少なくとも私はそれをファッションだと割り切って見られる自信はないから、見ないように目を背ける事になるだろう。
そしてこっそり自分の下半身を見て、パンツを穿き忘れていない事を確認したくなるだらうから。
おわり